第17話 帝国最強の冒険者
『会場にお集まりの皆さん!…統一武闘大会もフィナーレとなる決勝戦―ただ一戦となりました!』
―ウオオオッ!
そんなアナウンスと歓声を舞台の上で聞く私。
…とうとう決勝かぁ、苦戦らしい苦戦はしてないから、あまり実感ないわね。
『決勝は正体不明の帝国最強の冒険者「アンノウン」と大勇者の娘である少女、ニアが激突します!!』
私の正面に立つ帝国最強の冒険者「アンノウン」とやら。
全身黒ずくめで仮面を被っており、骨格から多分、男性と推測できるぐらいしかわからない。
…でもなんか…この人の雰囲気というかなんといか…どこかで会ったような…。
『この統一武闘大会でも初となるユニークスキル持ち同士の戦い…果たして…どのようなものになるのか…想像がつきません!』
この「アンノウン」なる人物、色々調べたけどまるで情報が出てこない。
ユニークスキルを持っているってことかな、唯一解ることは…。
でもやっぱりなんか覚えがあるんだよね、この人。
うーむ、まあ…いいや、今は目の前のことに集中しよう
「両者、準備は!」
審判が言う。
「…問題ない」
「大丈夫です」
彼?の声はなにかそういう機械でも使っているのか、機械音のような不思議なものだった。
異世界の知識で言う合成音声…みたいな?
「では…始め!!!」
あ、やばい考え事していたら始まった。
しかし…アンノウンは動かない。
…何故に?
まあいいや、ならこちらから行かせてもらおうかな。
原子炉…臨界、出力100%、定格出力、発電開始。
「てい!」
相手はユニークスキル持ち、なら手加減も様子見もしない。
最初から最大出力で行く!
私はアンノウンに一気に肉薄し…蹴りを放つ。
原子炉が生み出す圧倒的な出力で身体強化された私の蹴りが…音速を優に超える速度をたたき出す。
それに対しアンノウンは私の蹴りに、最小限の動きで防御態勢をとる。
いや、超音速の蹴りに対応できるって、どんないかれた反射神経しているの!?
…え、じゃあそれを視認できるお前は何なのかって?
その答えは簡単、ユニークスキル「原子力発電」は私の体の構造の一部を原子力プラントと同等にしているのだ。
通常の人間は電気信号によって情報伝達している。
しかし私の神経系は今、光ファイバーと同様の物に置き換えられている。
通常の人間の情報伝達速度は秒速120メートルほど…それに対して私の体の情報伝達速度は秒速30万キロメートル…つまり私は常人の三百万倍の反射神経を誇る。
…まあこれを使うのは戦闘時のみでいつもはかなりセーブしているのだけどね。
しかし、この異常な反射神経、いくら私の身体能力が100万キロワットの出力があるにしてもぶっちゃけ過剰である…要するに体が追いつかないのだ。
とまあ、私の能力についてはこれくらいでいいだろう。
私の蹴りはアンノウンのガードのために構えた腕に直撃した。
周囲に強烈な打撃音が響き渡る。
アンノウンは少し体勢を崩したが…それだけだった。
…さすがユニークスキル持ち、私の全力の蹴りに耐えるとはね。
この男?少なく見積もっても大剣聖並みの実力がありそうだ。
と、アンノウンがこちらに同じく蹴りを放ってきた。それを私は拳で迎撃する。
その結果は…アンノウンの蹴りをはじき返し、奴を少し後退させることに成功する。
…うん、この人の実力は大体わかった。
私と同じパワーで押し切るタイプ、しかし…私の方がパワーに分がある。
つまり…押し切れる!
そのまま私はアンノウンに肉薄し打撃を繰り返す。剣しか振ってこなかった私だが、格闘の基本的な動きはできる。
アンノウンはどうにか私の連撃をさばこうとするが、どんどん体勢は崩れていく。
「放電」
そこで不意打ち気味に放電を浴びせる。
「…!?」
アンノウンの体に膨大な電流が流れ、奴の動きが止まる。
「えいや!」
その隙に奴の顔面に右ストレートを叩き込む。
アンノウンは吹き飛ぶ…感触的に仮面にひびが入ったかな。
吹き飛んだアンノウンは空中で姿勢をととのえ着地する。
…よし、このまま押し切れば。
私がそう考えた時。
「…この僕が…まさかここまでパワー負けするとはね」
なんか…喋りだした…一人称「僕」だったのあなた。
「そんな君に敬意を表して…僕はこの仮面をとろう」
そうして仮面に手を添えるアンノウン。
『!?…な、なんと…ここでアンノウンの素顔が明かされるというのでしょうか!』
そして一気に仮面を取り払うアンノウン。
『アンノウン!仮面をとりました、その素顔は…あ、え』
え。
仮面の下に会った素顔は…黒髪碧眼のどこか私と似た顔をした少年。
「…あなたは…自称親戚のたこ焼き少年」
「いや、僕としては色々と不本意なんだけど…その言い方」
とそこでアナウンスが言う。
『そ、その素顔…いやご尊顔…まさか…プライム・アイアン殿下!?』
そのアナウンスでにわかに騒がしくなる闘技場。
…んんん!?
プライム・アイアン殿下って…
「魔皇子!?」
「…その呼び名も不本意かな」
えええっ!帝国最強の冒険者の正体が自称親戚のたこ焼き少年で帝国の皇族!?
わ、訳が分からないわ…
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