第16話 原子力のさらなる可能性と再生可能エネルギー

「…やあ、数日ぶりだねニア」

宿の部屋に帰ったら、なんか白衣をきた男が…確か帝国化学部のベルクだっけ….

…この宿、不ルビを入力…法侵入されすぎでは?変えた方がいいかな?

「…仮にも15の女の部屋に勝手に入るのはどうなんですかね?」

「なに、帝国で15などまだ子供だよ」

「ならなおさら、問題です!」

「まあ、そんな些細なことはどうだってそれより…」

この男…些細な事って…。

「少し原子力発電について聞きたいことがあってね」

「…意外ですね」

「…何がだい?」

「てっきり、そっちより…原子爆弾あっちについて聞きに来たのかと」

「…あれは危険すぎるからね…まだ帝国もその扱いを決めかねているんだよ」

「へぇ」

…まあ、それが普通の判断だろう。

「そんなことよ、聞きたいのが…ウランの資源量についてだ」

「ウランの?」

「ああ、帝国のこれからの電気需要の拡大を考慮して試算すると…ウラン資源が100年ほどで枯渇する可能性があるんだよ」

…そこまで、試算できるの…帝国はこれから起こるであろう様々な産業革命すら把握している可能性がある。

「100年…これじゃあ、原子力を帝国の主電源とするには…少しね」

気の長いことね、100年後なんてどうなっているかすらわからないのに。為政者ってのは不思議な生き物だわ。

「…まあ100年では枯渇しないんじゃないですか」

「なぜだい?」

「…恐らく太陽光発電に風力発電といった再生可能エネルギーが台頭してきますからね」

「…太陽光発電に風力発電…確かに我が国では研究しているが…電力効率はお世辞にも」

「言ったでしょう、数十年後、と、おそらくそのころには実用可能にまで進化しているでしょうね」

技術の進歩は早いからね…特に異世界の情報を入手しているであろう帝国では。

「…なら原子力はそれらの発電方法に淘汰されると?」

「いえ、再生可能エネルギーはその電力供給の不安定さという弱点を抱えています」

「…なるほど、雨の日や無風の時などは発電量が落ち込むと」

「ええ、なのでそれを安定した電源である、原子力が補うということです、これを異世界ではエネルギーミックスと呼びますね」

「…エネルギーミックス…なるほど」

なにやらメモ帳を取り出しメモを取るベルク。

しばらくすると、彼の筆が止まり、問いかけてくる。

「…しかしここまでの話ではウラン資源の問題は解決していないのではないか?」

まあね、単に原子力への依存が減るというだけだものね。

「…例えば」

「例えば?」

「ウラン資源の利用効率を100倍にできる方法があるとしたらどうですか?」

「!?…そんな方法が…だとしたら、単純に1万年は持つと考えられる、一体どんな方法なんだ?」

「…高速増殖炉を要とした核燃料サイクル、ですよ」

「高速増殖炉?核燃料サイクル?」

使用済み核燃料を再処理したMOX燃料を用いて投入した燃料以上の燃料を回収することのできる、高速増殖炉、通常は0.7%程度のエネルギー利用率のウラン資源を60%ほどまで上げることができる、まさに夢の技術だ。

「まあでも、この方法を実用化できるようになるのはしばらく先でしょうね…それより」

「…それより?」

「取り敢えず、ウランを濃縮する方法を考えた方がいいのでは?」

恐らく、帝国科学部は今、そこで詰まっているだろう。

「…それについては目途がある」

「目途がある?」

「錬金術だと」

…それは盲点だった…錬金術のことはよく知らないけれど…なにせ卑金属から金を創り出すことに成功していると聞いたことがある。効率は物凄く悪いらしいけどね。

「臨界させないように注意しといてくださいね?」

もし、かなりの高濃度のウラン235がとりだせてしまったら、その時点で臨界量にたっして核爆発する。危険すぎる。帝都が瓦礫の山になりかねない。

「…まあそこら辺はかなり気を付けているから、心配ないよ」

ホントかなぁ…。

「おっとそろそろ時間だ、では」

そのままベルクは何事もなかったかのように部屋を出ていった。

…うん、取り敢えず宿を変えよう。

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