第11話 闘技場にて

私が立つのは、がれきの山、かつて町があったと思われる。

私はその瓦礫の山と化した街を歩く。

いたるところで煙がくすぶり、黒焦げになった家々と…人。

きっと地獄ではこのような光景が広がっているのだろう。

橋に差し掛かる。下の川を覗くと…たくさんの人が浮いていた。

そのまま橋を通り過ぎ。

「水、水を」

声を掛けられる。振り向くとそこには…瓦礫の下敷きになった…全身にやけどを負った少年。

私は…知っている、この光景は…たった一発の爆弾によって生み出された。

私は知っている、その爆弾がどのような技術を持って作られたかを。

私は…このまま進んでいって…本当にいいのだろうか?


―見ているわ、あなたの行く末を、なぜなら私は…あなたと…―




「…朝、ね」

早朝、私は帝都にある宿の部屋で目を覚ます。…最悪の目覚めだ。

「…さっさと準備してしまいましょう」

気持ちを切り替える。

…なんたって今日は統一武闘大会の初戦があるのだ。ゆえに外はすでに騒がしい。

まさかの参加申請した翌日に開催である。

普通ならどう考えても数日前に参加を締め切っているはずだが…。

もしかして帝国は私が統一武闘大会に参加することを確信していたのかな?

…どうやら帝国は予想以上にやり手だ…これは、慎重に行動しないといけない。

その点では昨日の事はかなり軽率な行動だったかもしれない。

まあ、どっちにしろ原子力の情報は帝国に渡す予定だったのだ。

それに…原子力の根幹、ともいえ、最も難しいウラン濃縮については何も教えていない。

まだ…私は帝国にとって利用価値があるだろう、多分。









「ここが…統一武闘大会の…会場?」

私の目の前には…巨大な闘技場、周りにはさまざまな軽食を出す屋台が立ち並ぶ。

「…鉄筋コンクリート造、ね」

まさかこんなに近代的な物だとは思わなかった。

異世界の知識を持つ私が見ても驚くのだ、他国出身者など…その現在の価値観から逸脱した奇抜ともいえるデザインには度肝を抜かれるだろう。

「と、いけない、いけない、受付をしないと」

驚いてい居る場合ではない、中に入って受付をしなければ。

私は、闘技場へ足を踏み入れ昨日渡された地図に従い、受付へ向かう。

一分ほどあるいて到着したそこには、そこそこの人の列ができていた。

列に並ぶ、人々の出で立ちは様々だが、共通しているのは全員が戦いを生業としている雰囲気を出していることだろう。

あっちにいるのは騎士だろうか?あの大男は冒険者?

あたりを見回しながらその列に並ぶ。

結構長いね…どれくらいかかるだろう?

そんなことを考えながらぼーっとしていたら。

「ねぇ、君」

後ろから声を掛けられた。

振り返るとそこには白い鎧を纏った凛々しい姿の女性がいた。

「…随分と若いけど、ここに並んでいるということは…君も参加者なのか?」

「…ええ、そうです」

「…雰囲気を見る限り、他国出身だろう・」

どうやら私、田舎者感丸出しだったようだ。。

「ちょっと掌を見せてくれないだろうか?」

…はい?何言ってるの、この人。

困惑する私をスルーして私の手を取る女性。

「..ふむ、この掌…かなり剣を振っている人間の掌だ」

…なるほど、そういう…てっきり変な趣味の人かと

「だが…剣術の腕は…そこまで、かな」

…そこまで、見抜く?というかその言葉、割とショックなんですが。

「しかし、この大会の参加資格を得ている…ということは、なにか隠し玉が?」

「…初対面の人にそこまで教えるつもりはありませんよ」

「それはそうだな、ふむ、しっかりした子じゃないか」

そのままなぜか私の頭をなでる女性…完全に子ども扱いね。

「私、一応十五になるのですが」

「他国では知らんが、帝国では十五などまだ子供だよ」

むう、なんかちょっとイラっと来た。

「…子ども扱いしていると、足元救われるかもしれませんよ?」

この女性も出場者ということは…戦う可能性があるということ。

「ほう、言うじゃないか!」

そういって笑う女性。

「…そういえば名前を言っていなかったな、私は栄えある帝国の近衛騎士団二番隊副隊長フーデリだ」

帝国の近衛騎士、しかも、この若さで二番隊副隊長…かなりのエリートで実力者。

…きっと私と違い、才能豊かで順風満帆な人生を送ってきたのだろう。

「私はニアです」

「ほう、ニアかふむ」

と、女性、フーデリはなぜか考え込む様子を見せる、なんだろう?

「…まあ、いいもし戦うこととなったら、正々堂々戦おう、楽しみにしているぞ?」

「望むところです」

「次の方、どうぞ」

丁度、順番が来たのでフーデリとの会話を打ち切り手続きをする。

…さて、これから初戦が始まる。

…ここまで帝国の掌で踊らされている気がするわね。

ここで、度肝を抜いてやるわ…見ていなさい、帝国。

そう決意しながら私は選手控室に向かう。

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