第12話 統一武闘大会 初戦

『会場にお集まりの皆さん!とうとうこの時がやってきました!4年に一度のこの時、帝国に集まった百戦錬磨の猛者たちが名誉をかけ、戦う統一武闘大会のだぁ!』


―オオオオオオオオオオオォ!


鉄筋で建てられた闘技場が観客達の歓声で揺れる。

「凄い熱気ね…」

いや、いくら世界最大の祭典とはいっても、あんなに気軽に参加申請できたから…初戦からまさかの満員とはね…。

そんな私は今、名前を呼ばれるまで舞台の入り口付近で待機している。

『では、まずは皇帝陛下からのお言葉です!』

そう、アナウンスされると、会場は途端に静かになっていく。

そうしてしばらくすると

『…他国の者も大勢いるだろうから、まずは自己紹介といこうか…余はアイアン帝国33代皇帝エーゴンである』

拡声器越しでもわかる、覇気ある声…。

多分、あの闘技場の上の方にあるガラス張りの部屋、あそこに皇帝がいるのだろう。

『…ふむ、長々と演説をする必要はないだろう、ならば、一言…臣民よ、そして他国の民よ、強者達の死闘、しかと目に焼き付けよ!以上!』


―オオオオオオオオオオオォ!皇帝陛下万歳!帝国万歳!


皇帝の言葉のあと、会場では万歳コールが起こる。

…いや、それだけ?

もしかしなくても、帝国民ってかなりのせっかち?よく考えなくても開会式すらなかったんだけど…。

というか、この統一武闘大会のこと私がなんで知らなかったのか今わかった…この大会、かなりの内輪乗りだ。

『皇帝陛下万歳!帝国万歳!…では、早々に選手紹介となります!』

いや、ホントにせっかちすぎでは?

『まずは、この人物!現役近衛騎士団二番隊副隊長であり、平民から成りあがった本物の天才!遠からず、近衛騎士団長にすら至ると噂される才女!…フーデリ!』

…さっきの…凛々しい女性…。

歓声とともに、私が待機している入り口の反対側からフーデリが姿を現す。

『統一武闘大会は現在!帝国最強の冒険者オレグが二連覇中!そんな中、フーデリはオレグを撃破する可能性のある一人として有力視されています!』

「あれが…フーデリ」

「おお、凛々しいな」

「しかし、あのオレグに勝てるかねぇ?」

「さぁ?でも期待はできそうだ!」

「そうだな!オレグの三連覇…彼女が止めれるか見ものだ」

…観客の人たち声が大きいわね…ここでも普通に会話が聞こえる。これ、試合中もこれなのかな…。

『そして対戦相手は…なんと、シルバー王国からの刺客、今大会、最年少の15歳の少女!ニア!』

…私の番か…。

そうまさかの私、第一回戦からの出場なのだ。

しかも相手はさっき話したフーデリ。どんな偶然なんだかね。

そのまま私は入り口から出て舞台に姿を現す。

『謎多き美少女!噂によると、とある血筋なのだとか…果たして彼女は今大会のダークホースとなりうるのか!』

いや、謎多き美少女って…あの、普通に恥ずかしいからやめてほしいのですが…。

「…まあ、たしかに美人だが」

「ただの貴族令嬢にしか見えんな、ホントに戦えるのか?」

「見た目枠とか?」

「さすがにねぇだろ」

「あの黒髪に碧眼、どこか、皇族の方々に似ているな」

「たまたまだろ」

「シルバー王国って、あの勇者の?」

「ああ、勇者がいる以外、特に見どころのない国だな」

「…とある血筋?」

観客の反応は…まあこんな感じだ。

…まあそういう反応になるのは必然かな…こんな大規模な大会に見知らぬ小娘が出ていればね。

「両者!位置へ!」

舞台の中央に立つ審判にそう促されたので、移動する。

「やあ、さっきぶりだね」

「…どうも」

位置についたらフーデリに話しかけられた。

「まさか、君が初戦の相手とはね、驚いたよ」

「…ええ」

「なに、私は君を侮ったりしない、全力でかかってくるといい」

「…」

その言葉自体侮っているように聞こえるけどね。

フーデリはそれ以上しゃべらない。

そして、審判が言う。

「では…試合、開始!」

案外、あっさり始まったね?やっぱり帝国民はせっかちなのだろうか?

そんなことを考えていたら。

フーデリが、私の目の前にいて剣の腹を私に叩きつけようとしていた。

おお、さすが帝国の近衛騎士、一瞬のうちに距離を詰めてきたよ。

私は迫りくる剣を前に…何もしない。

そして…。


―ガキキイイイイン


フーデリの振り下ろした剣が私の頭上でなにかと衝突し火花を散らす。

「…!?」

驚愕の表情を浮かべるフーデリ。

…攻撃を一度防がれたぐらいで大げさな。

一瞬動きが止まったフーデリの腹めがけて軽いジャブを入れる。


―ドコッ!


「ガハッ!」

フーデリの着ていた鎧に少しひびが入り、彼女は大きく吹き飛ばされる。

フーデリはなんとか態勢をととのえ着地し…。

「…な、なんだ、そのジャブの威力!それにまるで鋼鉄の塊の剣を振り下ろしたような感触…!」

『な、なにが起こったのでしょうか!フーデリ選手が振り下ろした剣が何かに阻まれ!そして吹き飛ばされて…一体!?』

…。

あれね…一つ言えることは…。

帝国の…近衛騎士の有望株が…これ?

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