第9話 冒険者協会
うん、格好つけてその場から立ち去ったけど…そういえば私、迷子だったね…。
さっきの人影すらない噴水広場から歩くこと数分、現在地は石造りのビルが並ぶ交差点。
…うん、もうさっさと人に聞いた方が早いね。
「…お?あれは」
通行人に道を聞こうとした時、案内板を発見する。
「…えーと、ギルドは…いや、あの噴水の広場の反対側の方向じゃない」
どうやら、全く見当違いの場所に向かっていたみたいだ。
「…まあいいか、取り敢えず向かいましょう」
そのまま、歩くこと十数分。
先ほどの噴水広場を抜け…というかこの広場、さっきは人がいなかったのに、今はたくさんの人がいる…さっきは人払いがされていた?
…まあ、あんな機密をべらべら喋っていたわけだしね。そりゃそうよね。
そんなこんなで冒険者協会本部に到着。
冒険者協会の建物は5階だてのビルだ。
…別に小さくはないけど…大陸をまたにかける、冒険者協会の本部としては…少し…地味ね。
ドアの前に立つと、ドアは横に勝手に開く。
自動ドア…感圧式、ね。
そのまま中に入る。
建物の中は以外にも古くからある冒険者協会の内装といった光景。
…酒場が併設されており、そこでは魔物の素材を使った鎧やローブを纏った人々が剣や槍を立てかけて、飲食をしていた。
なんか…この建物の外となかで、時代が数百年ずれているような…奇妙な感覚に襲われる。
周りを見渡しながら受付へ向かう。
「…おい、あれ見ろよ」
「…あれは、どこかの学園の制服か?」
「おお、美少女だな、それにあの黒髪、皇族の方々の色味とそっくりだな」
「…しかし、かなりわけぇな」
「どこぞのご令嬢が、暇つぶしに冒険者登録にでもきたのかね?」
「…まあ、そんなところだろ、最近多いよな」
…ふむ、冒険者たちの会話によると、最近私みたいなのは多いらしいわね。悪目立ちはしなくて済みそうだ。
あとは、私の髪色が皇族と似ている…か、私の黒髪はお父様譲りだけど…たまたまね、きっと。
「どのようなご用件でしょうか?」
受付で、こちらが話かける前に受付嬢と思われる女性に話しかけられた。
「あの、冒険者登録をしたくて…」
「なろほど、身分証はお持ちですか?」
「はい」
そのまま受付嬢に、入国手続きの際に使った身分証明書を提示する。
「…ニア様ですか…すみません、少々お待ちください。」
私の身分証を見た受付嬢はなぜか席を立ち、後ろにいた上司と思われる男性になにやら確認を取っている。
…なんだろう?身分証になにか問題があったのだろうか?
しばらくすると、受付嬢が受付へ戻ってくる。
「…お待たせしました、本来、冒険者となるにはそれ何なりの手続きが必要なのですが、ニア様は審査なしで冒険者となることができます」
「…なぜ?」
「詳しくは分かりませんが、上層部からの通達とのことで」
うん、どうやら帝国は私の動向を完全に把握しているようだ。
…この対応を見る限り、私を完全に囲い込む気かな。
まあ、丁度いいだろう、さっきも言ったけど帝国で活動する予定だし。
「では私から、冒険者の概略について説明します、詳しくは後で渡す規約書をお読みください、まず….」
受付嬢の説明を要約するとこうだ。
冒険者には実力と実績によってランク分けされる。
ランクは上からSランク、A~Dランク。
冒険者は税金の面で優遇されるが、その危険性故保険の類はあまり付けられない。
冒険者には所属都市の魔物襲撃からの防衛に参加する義務がある
魔物の素材や薬草などは常に冒険者ギルドの窓口で買い取りをしている。
依頼失敗にはペナルティーがある。
とまあ、こんな感じの内容だった。
もっと細かい規約も無数にあるので、詳しくは規約書を読めということらしい。
そし渡された規約書とやらは
「『サルでもわかる冒険者規約』って…」
…これ、馬鹿になされる?
「…あ、あのそのそれを書いた職員が少々、あれな感性を持っていまして」
受付嬢が苦笑いでそう言う。
…よかったどうやら馬鹿にされているわけではないようね…多分。
あ、そんなことより聞かなきゃいけないことがあった。
「…すいません、統一武闘大会に出場したいのですが」
「…なるほど、はい、問題ありません、今ここで出場の手続きを行うことができますがいいかがなさいますか?」
「…統一武闘大会ってそんなに簡単に出場できるものなのですか?」
「いえ、あまり大きな声では言えませんが…ニア様はさきほどと同じように、特別待遇です」
….つまり、帝国は私にそこで実力を見せろ、ということかな?
「…では、出場手続きをお願いします」
「はい、了解いたしました!」
そのまま統一武闘大会出場の手続きをしてもらう。手続きは案外早く終わった。
「.ニア様、御武運を祈ります」
「はい、ありがとうございます」
さて、今日やることは終わった。あとは宿を探すだけ。
幸いこの帝都には世界中から人が集まる都合、宿はたくさんある。
そのまま私は冒険者本部を後にした。
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