第148話 先鋒①
(あの機体は……)
全高は
それは可変戦闘機──空戦用のメカである 〔
(機種は……〔ガニメデ〕ね)
ひと目で判別できなかったのは本来のガニメデから姿が変わっているからだった。
本来のガニメデは両腕の前腕部がそっくり機関砲になっており、両肩に担ぐように2門の大砲を背負った砲戦特化の機体。
だがこの決闘の
そして全身、水色の塗装。
アニメでは
エメロードが
それが今、出典では乗ることのなかった空中騎乗物、平べったい魚のエイのような形状の機械の上に乗った。1機 乗りの大きさのそれは、コスモスではなく
『両者、用意はよろしいか⁉』
「ええ!」『いつでもどうぞ』
『それでは先鋒戦!』
オトヒメのそばに
『開始じゃ‼』
ジャーン‼
瞬間、オトヒメの姿が消失した。いや、彼女だけではない。
そこは海の上空だった。
天に輝く太陽が、淡い青の空と、濃い青の海を照らしている。そこにエメロード機アドニスとアクアマリン機ガニメデだけが放りだされていた。
この広い空が決闘場。
そもそも、あの野球場と大差ない
そしてこの場での闘いは試合場に現れた立体映像の巨大スクリーンに映されて
『ゆくぞ、エメロード‼』
「……えっ、呼び捨て⁉」
飛行板に乗って真っすぐこちらへ向かってきたアクアマリン機に対し、エメロードは自力飛行する
「初対面で失礼じゃない?」
『敬称つきでは戦意がにぶるゆえ、試合中は許されよ‼』
「あ~、まぁ、そういうことなら」
『貴殿のことは以前より知っていた! 凄腕と聞き、手合わせ願いたいと思っていたのだ! その貴殿が怨敵・空中格闘研究会に属してくれたことはまさに僥倖‼ いちプレイヤー同士としてただ
「涼しげな名前の割に暑っ苦しいわね
なお。
この会話は
ロボット作品においてロボット同士が戦いながら、そのパイロット同士が言葉を交わすのはお約束であり、この会場で行われる試合ではそれが再現される仕様だからだ。
もっとも戦いながら小粋なトークをするにも技術を要する。こんなことは初めてのエメロードは全く自信がなかったが、セイネの 〔計画〕 のためにはまず観客を熱くさせる必要があるため、取りあえず喜ばれそうな台詞を言っておくことにした。
「でも、そういうノリ嫌いじゃないわ‼」
『結構! それでは雌雄を決しようか‼』
話しているあいだにもエメロード機は相手の側面に回りこもうとし、アクアマリン機はそうさせまいと正面をこちらに向けるよう旋回しながら追ってくる。
そうしながら両機の距離はじりじりと縮まっていく。
その距離が0になった時、初めの攻防が交わされる。
(そろそろね)
空中騎馬戦同好会では代表のミーシャ、幹部のサラリィとクライム、この3名が優劣つけがたい同点1位の最強だという。
他の会員は、この3名より弱い。
そしてエメロードたち空中格闘研究会の 〔計画〕 メンバーはこの3名の誰と当たっても互角に闘えるようにと、その1人の
そしてエメロードは、サラと互角に闘えるようになった。
なら、選手になっている以上サラたちに次ぐ実力はあろうがサラほどではないアクアマリンと、〔計画〕 どおり互角の闘いを演じるには、エメロードのほうが手加減せなばならない。
(これくらいかな~?)
距離がそこそこ詰まったところで、エメロードはそれまで中くらいに留めておいた自機のスラスター推力を一気に最大──ではなく、その少し手前に調整しつつ急加速。
敵機の左側面へと突進、その勢いを乗せて自機の右拳を突きだしながら、音声入力でその拳に搭載されている機能を解放した。
「ピンポイントバリアパーンチ‼」
エメロード機アドニスの右拳が、
それはバリアの名のとおり防御のために使える一方で、本来は脆弱な拳を強固な鉄拳へと変える作用もあった。
その拳でブン殴るのが 〔ピンポイントバリアパンチ〕──出典のコスモスでも使われた必殺技であり、これを突進に乗せて放つのがエメロードの
まずは、これで相手の力量を見極め──
『甘い‼』
「えっ⁉」
ギャリリリリッ‼
エメロード機の右拳はアクアマリン機の左腕ドリルの側面に受けとめられた。しかも高速回転するドリルに接触したことでエメロード機は流され体勢を崩し──
「もらった‼」
そこへ、アクアマリン機の右腕のドリルが突きだされた。
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