第127話 光明
アキラが
今、自室で
だが日本とギアナ高地では時差がある。
日本の時刻から13時間を引くと、ギアナ高地の時刻となる。そのため、ここはまだ午前2時。いわゆる丑三つ時だった。
日本では幽霊の出る時間帯などと言われるが、それが南米でも有効なのかは分からない。だが土地が変わっても、この時間帯の独特の雰囲気は変わらないとアキラは感じた。
パチ……パチ……
森の中の開けた空間の中心で焚火が燃え、その周りを囲んでいる自分たち──いずれも灰色のマントを着た6つの人影を照らしている。
「なかなか異様な光景でござるな」
「知らねー奴の目には、なんかの儀式を始める怪しい秘密結社に映るだろーな。ま、実際コソコソと悪だくみしてんだから当たらずとも遠からずってトコだが」
灰色マントによって
他の面々は見ただけでは分かりづらいが、それでも声を発せば誰だかすぐ分かる。アキラは全員マントを羽織ったまま特訓すると聞いた時は人物の見分けが大変そうと思ったが、実際は思ったほどではなさそうで安心した。
「じゃ、そろそろ始めよっか!」
そう切りだした声はサラのものだった。
それにアキラの右隣のセイネが答える。
「そうしましょう。サラさん、進行役をお願いできますか?」
「まっかせて!」
〔計画〕 の首謀者でありメンバーのリーダーであるセイネに頼まれ、サラはどんと己の胸を叩いた。そしてみなが座っている中、1人だけ立ちあがる。
「では出欠確認から!」
各自、サラに名前を呼ばれ返事していく。
結果、〔計画〕 メンバー9名の内──
研究会側は、セイネ、アキラ、
同好会側は、サラが出席。ミーシャとクライムが不在。
──と判明。
「うん、カイるん以外は全員いるね、研究会側は。カイるんはまだ中の人がお仕事で、ログインでき次第こっち来るって伝言もらってる。これはしょーがないよね。今回のカイるんに限らず、みんなスケジュール合う時に来るってことで」
この時間、社会人の
むしろ来れているサラ、アル、オルのプレイヤーが現実でなにをしている人なのかアキラは気になった。小学生の自分と
とはいえネットゲームで他人の素性を詮索するのは失礼なこと。アキラは疑問を口にせず、忘れることにした。
「で、同好会側はあたしだけね」
「ミーシャさんとクライムさんも、父さんと同じ理由ですか?」
アキラの質問に、サラは手を振った。
「それが違うんだ。2人は基本この特訓場には顔を出さない」
「あれ、そうなんですか?」
「同好会はいつもみんなで集まって練習するから、いないと不自然に思われる。あたしだけ 〔秘密の特訓する!〕 って抜けてきたけど、それはあたしが 〔そーゆーキャラ〕 で通ってるからでさ。代表のミーちゃんはもちろん、クラっちも抜けらんないよ」
「そっか。変に思われたらマズいですもんね」
「だから2人は同好会の練習に参加して、そこで対研究会用に編みだされた戦術とかの情報をこっちに密告する役ってこと。ここには来れなくても、ちゃんと 〔計画〕 のために動いてるよ」
「なんだか申しわけないですね」
なにも知らない同好会の人たちは、自分たちのトップであるミーシャと仲間であるクライムから敵に有利となる情報を流されてしまうのだ。敵とはいえ気の毒になる。
そんなスパイ行為──身内への裏切りをミーシャとクライム、そしてサラに強いていることも、改めて考えると申しわけない。
サラはしかし、平然としていた。
「しょーがないよ、
「……はい。そこまでしてくださっている、みなさんのためにも。がんばります!」
「その意気だ少年♪ ──んで、一応あたしがコーチ役ってことでこの特訓を仕切らせてもらうけど。ぶっちゃけ空中格闘戦スタイルの相手とやりあうなんて、あたしも経験ないんだよね!」
「えぇ……あ、それはそうですよね」
いきなり頼りないこと言われて不安になったが、考えてみればサラは当たり前のことしか言っていなかった。
これまで空中格闘研究会の会員たちは空中格闘戦スタイル同士で、空中騎馬戦同好会の会員たちは空中騎馬戦スタイル同士で練習してきた。
研究会と同好会の決闘で双方の選手たちは空中格闘戦スタイルvs空中騎馬戦スタイルで闘うことになるが、その組みあわせでの経験を積んでいる者はどちらにもいないのだ。
研究会に光明があるとすれば、そこか。
基礎的な戦闘力で同好会員は研究会員を圧倒しているが、同好会員も空中格闘戦スタイルを相手に闘うのは不慣れなのだ。
そこに付けいる隙がある、かもしれない。
「だから、あたしにできるのは空中騎馬戦スタイルの敵役になって、空中格闘戦スタイルのみんなの相手をすることくらい。その中で空中騎馬戦スタイルが空中格闘戦スタイルにやられると嫌な攻撃とかを探ってく。そして気づいたハシからみんなに伝える」
「「「はい」」」
「お頼みもうす」「任せたぜ」
「あ、でもあたしだけに任せないで。決闘と同じ1対1でやるから一度に1人しか相手できない。そのあいだ他の人たちは2人1組になって稽古してて。片方は空中格闘戦スタイル、もう片方は空亀に乗って空中騎馬戦スタイルの敵役で」
「「「はい!」」」
「うむ!」「おう!」
「敵役をやるのも無駄にはなんないはずだよ。敵の気持ちを知るってことだから。みんなも空中騎馬戦の視点で、されて嫌なことに気づけるかも。それをどんどん共有していこう‼」
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