第6節 東奔&西走
第57話 倉庫
フワッ
恒例の、シーン進行時の自動降機。
【立入禁止区域の外まで移動します】
眼前に開いたウィンドウの文字で、理由が分かった。
今までいた戦場は軌道エレベーター 〔アメノミハシラ〕 のすそに広がる飛行場。平時は飛行機が離着陸する場所で、人がうろついていたら邪魔になる。
この地を襲った
パッ
行先は倉庫だった。戦闘前にいた倉庫と同じ場所かは分からない、同じ形の倉庫が並んでいるから。開きっぱなしの門から中に入ったところで体を包んでいた光が消え、地面に降ろされる。
すると、後を追ってきた光の粒子──
「おかえり」
「「おかえり、アキラ!」」
「おっ、お父さん、お母さん⁉」
物言わぬ
父の機体 〔フーリガン〕 と。
母の機体 〔アドニス〕 の姿。
全高20メートルのフーリガンは直立した姿勢で背中を整備台に固定されており、機体の腰の高さに渡されたキャットウォークで、腹部ハッチから降りた父が手を振っている。
人型だと全高20メートルになるアドニスは今は戦闘機の形態を取っていて、
「お母さん」
「アキラ! 大丈夫だった?」
「うん。戦闘終了まで死なずに済んだよ。2人のおかげ。それと、空の
「
アドニスは
「同じトコに飛ばされてきたんだね」
「そうね。他の人はいない……なんでかしら」
「僕ら3人がパーティーメンバーだからだよ」
整備台から降りた父が答えた。
「この倉庫は傭兵ギルド所有の格納庫。外からは同じものがいっぱい並んで見えて、それでも数は有限だけど、実際は無限にある。他の
「ああ、そのパターン」
アキラはすぐピンと来た。出会った時
時空が歪んでいる。
「で、パーティーを組んでない状態だと1人で使うことになるけど、組んでる状態だとメンバー全員で1つの格納庫を共有することになるってわけ」
「なるほど~。さすがあなた♡」
「なるほど……あ、そうだ。お父さん、お母さん」
「「ん?」」
「2人がメカ乗りこみ時の無敵バリアで
「「どういたしまして」」
「生身で敵にボコられてる時に召喚して~ってのはやったことあるけど、自分から有効活用しようって発想はボクにはなかったや。2人はすごくサマになってたよね」
「ふふっ♪ たまにやってるから」
「ロボットは乗る時とか変形とか合体とかしてる時は攻撃しちゃいけない、ってのがお約束だけど。攻撃されてもバリアで弾くなんて機能は出典元にはないから、ゲームの快適性を優先した仕様だよね。それをああ使うのは原作再現には反するけど──」
「裏技って使いたくなっちゃうのよね~」
「ね」
「わかるよ」
アキラは両親に同意した。自分も不発に終わりはしたが、安全圏の倉庫内から
裏技のような制作者が意図していない遊びかたばかりしていると楽しみを減じる恐れもあるが、あれくらいなら大丈夫だろう。
「さて、これからどうしましょっか」
「観光に行くとこだったろ? メガフロートの内部にある、いろいろな施設をアキラに見せてあげようって」
「そうでした」
「あ、その前に! もう少しここでフーリガンとアドニス見てもいい? 格納庫にいるロボットってVRで見るの初めてだから」
「「もちろん」」
アキラの頼みを両親は快諾してくれた。
格納庫、それはロボットものに欠かせない聖域。戦うメカの帰る家。そこで修理や整備を受け、じっと次の戦いを待ち、パイロットを迎えいれて、出撃する。
アキラももちろん大好きだが、
自分の
「おぉ~っ」
アキラは
アドニス、フーリガン、どちらも全高20メートル。
いつも乗っている
ドラグネットの40メートルと比べれば半分とはいえ、慣れた大きさよりずっと大きいので圧巻だ。
こんな大きいメカを望めば簡単に手に入れて操縦できる。なんていいゲームだと、アキラは改めて思った。
ピコン
「うん?」
夢中になっていたところに通知音がして、アキラはメニューウィンドウを開いた。そこに【新着メッセージが1件あります】と出ていたので、タッチしてメール欄を開く。
差出人は、知らない名前だった。
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