第42話 黄昏
「よおっし!」
「行くわよ!」
アキラと
「ギャギャッ!」
「わっ──と!」
先頭の1匹がアキラに向かって跳躍してきた。こちらより高所から飛びおりる形で、こちらの顔面にぶつかるように──だが、その短い腕と剣より、こちらの腕と剣のほうが長い!
グサッ!
アキラが突きだして待ちかまえた剣の切先に自ら飛びこみ、そのゴブリンは串刺しに。瞬時にHPが全損して、無数のポリゴンへと砕けて散った。それはいいが──
「斜面だと戦いにくいね⁉」
「丘の上まで登りましょ‼」
そこまで急でもない斜面。ただ歩くだけなら問題ないが、剣を振るとなると想像以上に平地でのようにいかないと分かった。レティが提案したおり、丘を登りきることにする。
襲ってくるゴブリンたちのことは相手をするより、回避してやりすごすことを優先。自分たちの横を通りすぎたゴブリンたちは丘を滑りおち、すぐには登ってこれない。今の内に頂上に──
「「ついた!」」
そこに広がる
5メートル弱の自分たちの
「よし来い!」
「来なさい!」
列石に囲まれた円形広場の中央で、アキラはレティと背中あわせになって剣を構えた。すぐにゴブリンたちに囲まれて、その内の何体かが襲ってくる。
「「やっ!」」
アキラは自分に向かってきた1匹の脳天に剣を叩きおとした。剣はゴブリンの頭蓋を割り、眉間まで斬りこんだところでとまり──パリン! そのゴブリンの姿が消滅した。
(よし……いいぞ!)
アキラは手応えを感じた。今の一撃、昨日の練習が生きていて、以前よりも速く振れた。この調子で次々と──
「うわっと⁉」
「きゃあっ‼」
次々と襲ってくるゴブリンの剣を受けそこない、アキラは体を斬られた。痛くないしアバターの動きにも支障ないが、HPが削れた。
「このッ!」
お返しとばかりにゴブリンの首に剣を叩きこみ──
倒すには倒したが、今の一撃はよくなかった。ダメージを受けて慌てたことで
「こいつら!」
「強いわね!」
身体能力は 〔始まりの町〕 の近くにいたゴブリンたちと変わらないように感じるが、向こうが対初心者用のAIで戦いかたが雑で消極的だったのに対し、こちらにそんな様子はない。
一昨日、魔龍退治の
ドッ
「えっ──レティ⁉」
「きゃーっ! ごめーん‼」
レティが背中にぶつかってきて、アキラは彼女ともつれあって転んだ。レティはゴブリンの攻撃をかわすためにバックステップしたらしい。後ろに
敵に回りこまれないよう味方同士で背中を預けあって戦う。そうすると互いに後ろは見えないのだから、こうなる危険はある。
アキラは前に遊んでいた3Dロボットアクションゲームの経験でそれは分かっていたので、時々レティのほうを見るようにしていたが、ゴブリンの相手でその余裕がなくなっていた。
グギャーッギャギャ‼
「「ぎゃああああーッ‼」」
すぐには起きあがれない2人にゴブリンたちが殺到してきた。狭い輪を作って閉じこめ、次々に剣で斬ったり刺したりしてくる。2人のHPバーが急速に減って、もうじきゼロに──
「
「
グギャーッ⁉
2人の体から発せられた見えない力がゴブリンたちを吹きとばした。2人の手から神剣が光になって舞いあがり、巨大カワセミとなって戻ってくるが、それにぶつかったわけではない。
このゲームの
青いカワセミが
赤いカワセミは
それぞれ変じた互いの愛機に、アキラとレティは搭乗。
『『死ねーっ‼』』
その全高が5メートル弱ある機体の足を使って、身長1メートルほどのゴブリンたちを、ことごとく踏みつぶした。
¶
『これで終わり?』
『そうっぽいわね』
体格差の暴力でゴブリンどもを一掃したあと、その場には
始まりの町の付近の洞窟ではゴブリンと戦ったあと、機神と同サイズのボスであるオーガとの戦闘があったが、ここではないようだ。
『これだとMPがもったいないね』
『なら、アタシたちで戦わない?』
『いいね、
『ううん。死ぬ度に仕切りなおすの面倒だもの』
『それもそうだね。なら──』
『行くわよ‼』
ガキーン‼
アキラの青い
果たしあいとは程遠い。
どつきあいが始まった。
2人ともアルの教えで攻撃は上達したが、まだ教わっていない防御は上達していない。そのため互いの攻撃がよく当たる。当たっても決闘ではないのでPC同士でダメージは発生しない。
いつまでも終わらない。
神秘的な環状列石の中、動く神像のような機神同士が剣を合わせる。幻想的な光景だが、やっていることはチャンバラごっこ。
やがて世界は茜色に染まって……
2人は戦いをやめて機神を降りた。
「じゃあレティ、また
「うん──じゃない! あのね、アタシ
「そうなんだ。じゃ、
「うん、またね!」
そう言いかわし、アキラはレティと別れた。
そして
だがレティと遊ぶのが日常になっていて、彼女がいないのが寂しく、アキラは早くSWが終わればいいと思った。
そして、ようやくのSW明け──
レティはログインしてこなかった。
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