第28話 RP
そして坑道へと突入。
そこは現在ふもとの湖畔に村を築いて避難している、この
当然そこでは再び龍牙兵に襲われた。
狭い坑道を進むあいだ、幾度となく。
だが、もう森で襲われた時のような苦労はなかった。
アキラたちは前衛に超強いエルフ侍の
前から現われた敵は、どれだけいようとアルが1人で蹴散らした。たまに後ろからくる敵はまずオルが対処し、オルだけではすぐには倒せない規模でも、前から駆けつけたアルが一掃。
アキラとレティに出番はなかった。
今の2人では龍牙兵には勝てないし、実力差がありすぎて戦ったところで稽古にもならないのでアルとオルに任せて観戦──〔見取り稽古〕 に徹した。
また天井が低い坑道内ではアキラたちが巨大メカを呼びだせないのと同じく、龍牙兵も合体して巨大化することができないので、森の時のようにそれと戦うこともなかった。
かくして坑道を踏破した4人はついにその最深部、自らの牙から魔法で龍牙兵たちを生みだしていたボス 〔
「「わぁ……!」」
アキラとレティがため息を漏らす。
それほど、この場所は美しかった。
メカで戦えるだけの高さと広さのある空間──その地面から、側面から、天井から、柱のように長大なクリスタルが生えている。
無色透明な
そして、その光の真下では。
伏していてもなお見上げる巨体。
こいつが──
『とうとう、ここまで来たか。愚かなる人間どもよ』
「会うなり愚か者とはご挨拶だな、魔龍シーバン!」
オルが前に出て、シーバンと対峙した。
いつもの砕けた口調と違い、重苦しい。
「ここはドワーフたちの安住の地。返してもらうぞ!」
『それは、この山を荒らしていた
シーバンはオルの言葉に反応した。
その内容を理解して返事している。
それはシーバンが
それ自体は珍しくない。
ただアキラがこれまで戦ってきた 〔敵対的NPC〕 はいずれも言葉が通じないタイプだったため、新鮮に感じた。
これが、ボスキャラ!
「盗みではない! 生活のため石を掘ってなにが悪い!」
『奴らが食うに足るだけの採掘しかしておらぬとでも?』
「……ねぇ」
オルとシーバンのやりとりを他の3人は後ろで黙って聞いていたが、ふとレティが小声でつぶやいた。
「今の内にメカ、召喚しちゃわない?」
「ちょっ」
「レティ殿、どうかお待ちを……! RPGでの戦いには様式美があってでござるな。ここはオルの好きにさせてくだされ」
オルは今、〔
常にしていたが、今は特に役に入りこんでいる。現実世界に生きる
〔ふもとの村のドワーフたちの苦境を救うために立ちあがった同族であるドワーフの傭兵〕 という
ごっこ遊び。
元来 〔
この
別にこちらまでRPを強要されたわけではない。そしてアキラもふもとの村でドワーフたちに会い、助けたいと思った。オルほど本格的なRPはできないが、なるべくこの方針には沿いたい。
だから──
「そうだよレティ。まずオルさんがシーバンと話して、交渉が決裂して戦うしかないってなったら合図してメカ召喚、って段取りでしょ?」
「そうだけど、あの龍がいつ襲ってくるかと思ったら……! あんなのの攻撃を生身で食らったら、アタシたちイチコロよ?」
「そ、その時は拙者が責任を持ってお守りいたすゆえ……!」
「はぁ……じゃ、お願いします」
『知っておるぞ。奴らはこの山から持ちさった宝を売りさばき、大層なカネを得ていたではないか。食い物を買っても使いきれぬほどの』
「食料さえあればいいというものではない! その豊かさで軍備を整え自衛せねば、平穏に食べていくだけの日々を守ることはできん! お前に負けて
『その力を得るために山を掘りくずすことを認めては、この美しい景色は荒れはててしまう。そうまでせねば生きれぬのなら、奴らに生きる資格はないわ!』
「シーバンって、こんなキャラだったっけ」
今度はアキラがつぶやいた。
レティが 〔ん~〕 とうなる。
「どうだったかしら。よく覚えてなくて」
「原作漫画でもアニメでも、シーバンは登場してすぐ主人公アディオスに倒されるチョイ役でござったゆえ。ほとんど情報がなかったでござる」
「「……そうでした」」
「それが、こたびのクロスロード参戦のために原作者様の監修により肉づけされたでござる。よって、アレは本物‼」
「「お~っ」」
「そういうお前はどうなのだ、シーバン! お前は坑道でなくとも生きられるはず! それがここで暮らしていた者たちを追いやってまで住みつく権利がどこにある‼」
『美しきものを愛でるは龍の本能よ。我はこのクリスタルの輝きを守る! これを
「もはや問答無用か──いくぞ、みんな‼」
「「「了解‼」」」
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