第38話 ポケモンショック

*妹の病気の話

 4年生のある日のこと学校へ来た母から、妹が『盲腸』で手術することになったと言われ、ちょうど6時間目だったので、そのまま早退して病院まで行くことになった。妹には父が付き添っていたのだが、既に手術は始まっており、それから2時間いたのだが、夜ぼくを泊めておくことはできないという理由で家に帰ることになった。


 そこで家で一人で留守番することになったのだが、そこでぼくは貴重なものを見ることになる。毎週見ていたポケモンのアニメをテレビを点けてなにげなく見ていると、サトシたちが巨大化したポケモンに乗って亜空間を移動し、違う世界に行って戻るといった内容の話が放送されていた。


 この時ピカチュウが凄い勢いで電気技を繰り出していて“派手な演出やな”と思っていたのだが、実はこの回は後になってかなり問題視されることになる『ポリゴンショック』の回で、赤緑青の『光の3原色』をふんだんに使って光りまくる映像を見て、気絶してしまう子が多かったようだ。


 この時ぼくまで倒れていては両親はパニックだったかもしれないが、幸いぼくは部屋を明るくして離れて見ていたので事なきを得た。この放送から程なくして、テレビに注意書きが加わるようになり、『こち亀(こちら亀有区公園前派出所)』のアニメでは歌にして注意を促すようになったりした。


 一方、妹の方はと言うと1990年代後半で地方の中型病院であったため少し大きな傷が残ってしまったものの、術後の回復も悪くはなかった。その入院している時にちょうどクリスマス会があり、ぼくもちゃっかり参加して『仮面ライダーV3』のフィギュアをもらって嬉しかったのを覚えている。


中には凄く大きくてたくさんのプレゼントをもらっている子が居たりして羨ましくもあったのだが、後日病室が空になっていたのを見て“自分の考えが浅はかだった”と猛省した。その後妹は退院し、普通に生活できるようになったが、鉄棒の授業だけはお腹に悪いからと休んでいた。



*たっちゃんとの文通の話

神戸に引っ越してからの数ヶ月間、大葉小学校で仲の良かったたっちゃんと『文通』をしていた。メールでないところが時代を感じさせると思うが、『文通』を始めて数回は近況や絵を描いたりしながら月に1通ほどのペースでやりとりしていたのだが、次第にめんどくさくなってしまい。ぼくのほうから出すのを止めてしまった。


今にして思えば申し訳ないことをしたというのと、仮にずっと続けていたらメールアドレスを交換したり、東京か大阪で会うようなこともあったのかな?と考えたりもする。いずれにせよ、彼とはもう会うことはないのかなと考えると、わりと寂しい気がしたりしている。



*2分の1成人式の話

 4年生の3学期頃、ぼくらが10歳になるのを記念して、先生たちが2分の1成人式というのを開いてくれた。これは20歳の半分だからという意味で、一人一人がこれまでの人生を振り返り、将来の夢を語るという行事だった。

 いくつの時までこれを本気にしていたかは今となってはもう定かではないが、この時ぼくが語った将来の夢は『おもちゃ屋』だった。


大人になっても大好きなものに囲まれて暮らせるからという単純な理由からであったが、何の夢も持たないよりは、将来について漠然としてでも考えるキッカケを与えてもらえたことが、貴重な経験だったと言える。


また、友達の夢を聞くことで、人の考えにふれたり、やはり自分と人とは違うのだということを知ることができたりもした。サラリーマンや専業主婦、警察官や保育士、消防士や看護師、野球選手やアイドルなど、人によってはば広い夢があった。中には教師と言い出して先生が大いに喜んだりと、みんな個性を爆発させていた。


この年頃というのは、口だけは達者だが、中身はまだまだ子供という中途半端な時期であり、ローマ字が書けるようになったり、鉄棒でできる技が増えて行ったりすることで日々の成長を実感できていたので、明確に大人になることを意識するような出来事だった。


最後には表彰状のようなものを渡してくれて、また一歩、大人に近づいたことを誇らしく思うことができたのであった。

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