第37話 神戸について
*これって神戸だけ?の話
仲山第一小学校にも日本の小学校にあるような設備があって、薪を背負った少年が本を読みながら歩いており仕事をしながらも勉強しているのが偉い『二宮金次郎』の像や、小さな箱の中に温度計が入っていて常に気温が観測できる『百葉箱』や、半分が普通の人間で残りの半分が体内が露出している構造になっておりグロテスクで夜中に見たらギョッとしそうな『人体模型』など、いろいろ定番のものがあった。
また、神戸の小学校に通っている生徒は『のびのびパスポート』というものを支給してもらうことができ、それを使っていろいろな所に行くことができた。神戸市葺合の辺りにある『王子動物園』やポートアイランドにある『科学技術館』などが無料で利用でき(親は有料)、土日や夏休みに貴重な経験をさせてもらえていた。
大人になってから大阪出身の友達にその話をしたところ、「ええなあ、俺らそんなんなかったで」と言われ、神戸で暮らしていることのメリットだったんだと知ることができた。
他には「体操の隊形に開け」という号令を受けると「ヤーー!!」という掛け声で応じたり、前述の土足で学校に入る件など神戸には独特の風習があったりもした。
また余談だが、宝塚市の手塚治虫記念館に行った時、ブラックジャックがグロすぎて気分が悪くなって帰って来るなど小学生の時にはまだいろいろとつたない出来事が多くあった。
*ぼくらの珍100景
神戸に移り住んでから少し経って、隣にある芦屋市の北側に両親が連れて行ってくれた際に、凄く珍しい光景を見たことがある。そこには大きな池があって、辺り一面見渡す限りオタマジャクシがいて、手ですくってみると掌いっぱいに黒い塊が広がるほどの数であった。
当時からアホだったぼくはすぐに「持って帰りたい!」と言って水槽に入れようと試みたのだが、母から「さすがにこんな量もって帰ってカエルになられても困る」と言われて断念した。だが、それからは妹と二人でその池が気に入ってしまい、土日の度に両親にせがんでは連れて行ってもらうのであった。
*学級崩壊の話
ぼくらが小学生の時には、日本全体に不良やヤンキーと呼ばれるようなタイプの子がまだ多くいて、『学級崩壊』というものが社会問題になっていたりもした。ぼくの4組はわりと先生の言うことを聞くような子が多かったが、1組は問題児と呼ばれる子が多くいて、授業中に教室を抜け出して4組のクラスの外まで歩いて来たりしていた。
その度に担任のザッキー(岡﨑先生、50m6秒台で年齢は60代の定年間際の先生)が猛ダッシュで追いかけて捕まえにかかるのだった。中でも、みやも(宮本)、三村、大垣はよく脱走しており、先生はかなり手を焼いているようだった。この時はこの3人と話したことはなく、最初に廊下の外で見かけた時にはかなり驚いたが、数回見ると慣れてしまった。
*ぼくの原点の話
今にして思えば、4年生の時に起きたこの出来事が、ぼくの人生を大きく変えたのかもしれない。事の発端はおおした先生に声をかけられたことだった。
「学年全体に配られる文集のクラスの代表としておかもとくんの作品を載せたいんやけどいい?」
この一言を言われるまで、ぼくは自分が『文章を書くのが得意だ』と思ったことはただの一度もなかった。内容としては音楽の授業の時に高い声が出ないので、どうにかしたいといった内容なのだが、『声が出たらいい』というタイトルのその作文が文集に載った日はなんだかとても誇らしい気持ちになった。
作家になろうかもの凄く悩んだ日や、もうダメかと思った日にも、どこか心の中でこの体験が支えになっていたことは確かである。よく失敗を糧になどと言うが、ぼくは人生にいい影響を与え、豊かにしてくれるのは『成功体験だけだ』と考えており、怒られて伸びるなんてのは支配する側の頭の悪い言い分だと心得ている。
なので、何かを始めたいが己の道が分からなかったり、踏み出す勇気が持てない時には好きなことより『得意なこと』をやるのをお勧めする。好きなことは嫌いにもなるが、得意なことはそうそう苦手にはならない。
ただ、その中で『人から評価されるかどうか』ということを特に気にしておくべきであり、『自分的に』や『こんなに頑張ったのに』といったことは『自己満足』としてあしらわれてしまうことになるだろう。見極め方としては、みんなとやっていて『褒められたことがある』ことが、やっていくべきことと捉えていいと思われる。
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