第36話 リザードンの行方

*リザードンの行方の話

4年生の時に同じクラスになった柱間はちょっとナヨナヨしていて、おとなしめな感じの子だった。友達何人かと柱間の家に行ったことがあったのだが、当時ぼくはまだ持っていなかったポケモンカードを見せてもらったことがある。その時に、柱間はポケモンカードを皆に見せながら、ちょっと恨めしそうに


「あさぎがポケモンカードのスターターボックスを1000円で買うって言うから売ってんけど、その中にリザードンが入っとってん」と言っていた。

それを聞いた皆は口々に


「それは勿体ないなかったな」と話していた。

当時ポケモンカードのスターターボックスは1200円ほどで売られていて、中古だからそれ自体は別にいいのだが、問題はリザードンだ。リザードンは当時の一番人気のカードで、だいたいはミューツーが入っているスターターパックで、それを引き当てるのはかなりラッキーなのだが、はしらまはよく確認せずにそれを手放してしまったらしい。


あさぎに取り合ってみても、

「でも、もう買ってもたし返すん嫌や」と言われて取り戻せなかったらしい。

いい加減なことをすると、大体は痛い目に遭うものなので、何かする時には『しっかりと確認する』ということが大切だと言える。



*テレビに出て凄い!話

 4年生の中頃、休み時間にくつろいでいると、なんだかクラスの一部で大きく盛り上がっているではないか。何事かと気になって近づいてみると、なんとクラスメイトの尾田くんがテレビに出るというのだ。


年号が令和となった今でもそうなのだが、この頃のテレビの影響力というものは凄まじく、たとえ1場面だけでも出演するということはたいへん名誉なことであった。さらに聞いてみると夕方にやっているドラマにエキストラで出て、1つセリフを言って立ち去るというものであった。


 なんでも親がテレビ関係の人と親しいらしく、そのコネで出演できることになったようだ。

この頃には天才てれびくんや、さわやかやか三組、ズッコケ三人組など子供が出演している番組が多数あり、オーディションにさえ受かればテレビに出ることは不可能なわけではなかった。


だが悲しいかな、ジュニアタレントというのはその人気を維持し続けることが難しく、ほとんどが大人になると消えてしまうのだが、ウエンツ瑛士さんのように輝きを発し続け、成人してからも生き残る例がマレにだがある。

 おだがテレビに映った次の日にはクラスでだいぶ話題になったのだが、3日もするともう誰もその話はしなくなり、人の興味というのは移ろい行くものなんだなと感じた。



*ハムスターを連れ帰った話

 4年生のクラスでは、みんなで飼っていたハムスターを当番ではなく手を上げた子が土日の間に預かって世話をするという試みがあった。当時はこういった自主性を重んじていたため、みんなで仲良く手を繋いでゴールしたり、順位をつけないといったことは考えられなかった。


 賛否あるとは思うのだが、僕は個人的に順位や優劣をつけるということは必要だと考えていて、それは後で困ると考えるからだ。子供の頃に甘やかしていても、結局は大人になれば厳しい社会の中で戦うことになる。ならば多少の失敗が許される子供のうちに経験を積んでおいた方がいいと思われる。


 クラスの中で一回も連れて帰らないような子もいたのだろうが、ぼくはこういうのは率先して参加するようなタイプの人なので、わりと早い段階で連れて帰っていた。

 連れ帰ったジャンガリアンだかゴールデンだかのハムスターをゲージごと家の玄関に置き、妹ときゅうりやにんじんなどのエサをやると、小動物を愛でることでしか得られないような幸福感を感じることができた。


 中でもひまわりの種は、とっとこハム太郎の歌にもあるようにハムスターたちの大好物であるようで、大切そうにほお袋にしまい込んで少しずつ食べていた。かんらん車みたいな運動セットで遊んだり、口をつけると少しずつ水が出る給水機でちびちび水を飲んでいたりするのを大いに興味を持ってながめていた。


 昔はこんな風にして命の大切さというものを知ることができており、ある意味笑えない笑い話としては、飼っているカブトムシが死んだ際に母親に「電池入れて」とせがんだ子供の話というのがあったりもする。


 この世界は不完全なリアルであり、完全なアイディアルに逃げ込んでしまっては、現実の成功など得られようはずもない。完璧な人生などは不可能であり、魂を成熟させるためには日々の成長が不可欠なのである。仮想現実である電子パネルとにらめっこしてるようでは、こういった充足感とは縁遠いままなのではないだろうか。



*コナンのテーマでなわとびの話

 4年生の運動会の時に、当時から流行っていたアニメ『名探偵コナン』の主題歌で、小松未歩さんが歌う『謎』という曲に合わせてなわとびをするという演目があった。そのことでこの謎という曲はおそらく何百回も聞いているため、大人になった今でも容易に歌詞を思い出すことができる。


 当時からクソ真面目だったぼくは、夏休みに出された課題をサボることなく全てこなし、万全の状態で2学期を迎えていた。この頃になると生徒たちの間ではなわとびの能力にもかなり差がついており、『交差飛び』という一回ごとに順手とクロスで跳ぶ跳び方や、『ハヤブサ』という二重跳びのうち一回を交差跳びで跳ぶ跳び方、『三重跳び』という三回連続で跳ぶ跳び方ができる子などが居た。


 中でも一際凄いと思われていたのが、100回連続で二重跳びが出来る子たちだった。

 クラスでも3人ほどしかおらず、交差飛び、ハヤブサ、三重飛びができていたぼくはどうしてもできるようになりたかった。だが、ぼくはこの頃はあまり体力がなかったので、結局60回くらいまでしかできず、運動会と直接関係はないものの、かなり悔しい思いをしていた。


また、夏休み中にこの練習をしている時に、家の周りに『虹色に輝く謎の虫』がいることに気が付いた。

 そして迎えた運動会の実演の時、田舎に謎を録音したカセットテープを持って帰って練習したことや、みんなとペースが合わない所があり、家で黙々と練習したことなどが思い出され、少し泣きそうになった。


 結局全体で誰も泣くことはなかったが、みんなも真剣にやった分このなわとびの演目に思い入れがあったのではないかと思う。それからは休み時間も放課後もボール遊びに戻りはしたものの、授業でなわとびをやることがあると、必ずこの運動会のことを思い出すのであった。


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