第20話 三年生 クラス替え

*初めてのクラス替えの話

 3年生になると、ぼくは若干1、2年生のクラスに飽きていたこともあり、待ちに待った初めてのクラス替えが行われた。この頃、大葉小のあるあすみが丘には、『人口バブル』が到来しており、どんどん人口が増え続けていた。


 千葉市自体が人口100万人を突破するのではないかと言われており、たびたび景気のいい話が聞こえてくるのであった。その影響もあって、今まで3クラスだったものが、4クラスに増やされることになり、更に来年には大葉小の近くに『第二小学校』が創立されるという。


 ぼくは幸い大葉小の方の校区に入っていたのだが、同級生の3分の1くらいは、そのことで転校することになる予定だった。クラス替えや学校の分化で、友達と離れ離れになってしまうという不安があったもののの、それに伴って新しい友達ができることへの期待もあった。


 教室の廊下に張り出された表の中から自分の名前を見つけ出すと、どうやらぼくは4組になったようだった。だが、2年生まで仲良くしていた、はいの、おおのくん、もっちゃんは同じクラスになっておらず、そのことでかなり心細かったのを覚えている。


 席についてホームルームが始まるのを待っていると、担任の先生がやって来た。この先生は30代半ばくらいの年齢で、たかた先生とは正反対の、なんだかプライドが高そうで怖い雰囲気の先生だった。不安はあったけど新生活に胸を膨らませた一日だった。



*大きな声、出さないでの話

 3年生の時に担任になった先生は、わりと性格がきつく、ものをはっきり言うタイプの人だった。優しいたかた先生に慣れていたぼくは、この先生がどうしても好きになれず、同じように考えている子たちと、よく愚痴を言っていた。


さらに、この先生はかなり『えこひいき』をするタイプの人で、自分の好きな生徒には甘く、気にいられていない生徒には厳しく当たるのであった。その中で特に先生のお気に入りだったのが、ぼくが同級生だが、よねぱい(米山先輩)と呼んでいた米山くんだった。


彼は身長は小さめだったが、ちょっと色黒の猿顔で顔立ちが良く、女の子から人気があるような子だった。そんなある日、ぼくが掃除の時に友達と話していると、

「もう、おかもとくんは、どうしてそんなに大きな声を出すの?もっと小さな声で話しなさい」と言われてしまった。


 ぼくとしては特段大きな声で話していたつもりはなかったので、

「えっ、先生。みんなと同じくらいだよ」と言ったのだが、

「嘘をつくんじゃありません。よねやまくんの声と比べて明らかに大きかったわよ」


 と大きな声で怒鳴られてしまい、そこからは何も言い返せなかった。そして、それからぼくは大きな声を出すのが怖くなってしまって、母に相談して声を小さくする手術が大学病院で受けられることを調べたり、それからは先生の前では口数が減ってしまったりと、変に気を遣うようになってしまった。


これは明確に『トラウマになった』ということであり、まだものの分別がついていないような子供を叱る時は、頭ごなしに言うのではなく、理由や状況などを伝え、絶対にヒステリックに怒鳴るようなことはしないであげてほしい。


このことがあってから、ぼくは先生の前では委縮して話すようになってしまった。ただ、他の男子もよねぱいと比べられて理不尽に怒られることが多く、人は時に『善悪ではなく、好き嫌いでものごとを判断する』ということを身をもって学んだ経験でもあった。




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