第31話 龍の子と人の子

 みーちゃんの体がビクッと飛び上がる。男の視線を遮るようにりょーちゃんが、みーちゃんの体から離れ、前に出た。


「君こそ、ボクの大切な人に何をしようとしたのかな?」


男は馬鹿にしたように鼻で笑う。


「ただの蛇に答える筋合いはねーよ。せいぜい主人を守れなくて泣き叫べばいいさ!」


男が駆け出し拳をりょーちゃんに振り下ろす。だが突如、石が現れた。それを殴った男は殴った手を抱えて悶絶している。

 りょーちゃんが振り返り、みーちゃんの体のあちこちを触って確かめる。


「みーちゃん大丈夫? どこか怪我してない?」


 男が立ち直り、りょーちゃんを蹴る。りょーちゃんの体から力が抜け地面に落ちた。

 みーちゃんが慌てて、りょーちゃんに声をかける。


「りょーちゃん、大丈夫!?」


だが、りょーちゃんは、うんともすんとも言わない。

 男はニヤリと歪んだ笑みを浮かべた。


「とんだ邪魔が入ったな。だが、これでお前を守る者はいない。思う存分、好きにできるぜ!」


みーちゃんが睨み付けるが男は気にする素振りを見せない。男が、りょーちゃんを踏ん付け、みーちゃんに近寄ってくる。

 後一歩で、みーちゃんに届く距離になった瞬間に、それは起きた。急に男が動かなくなったのだ。


「おい、どうなってやがる!」

「君に教える筋合いはないかな。それに、あの程度の攻撃でボクを倒したって? そんな事はないよ!」


りょーちゃんが起き上がり、みーちゃんを囲うようにトグロを巻く。みーちゃんは目を輝かせた後、叱るように言う。


「りょーちゃん!」

「ごめんね。面白そうだったから、つい」

「もー! 心配したの!」

「心配してくれて、ありがとう」


りょーちゃんは目を細めて、みーちゃんの体に巻き付く。チラリと男の方を見て言い放つ。


「さてと君は埋まっていれば良いんじゃないかな」


男の姿が消えるように地面に埋まったが、顔だけは出ているようだ。


「おい! ここから出せ!」

「うるさいな。この程度で済ませた事に感謝してほしいよ」

「ボクの大切なものに手を出したんだから、生きて返すつもりはなかった。だけど、みーちゃんが面倒事を抱えるのは嫌だからね」


みーちゃんが下げている鱗が光りりょーちゃんの姿が消える。


(じゃあ帰ろうか、みーちゃん)

「うん」


みーちゃんは紙袋の中身を確認して持ち直し路地を出ていくのだった。

 いつの間にか空は晴れていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

龍の子、人の子 むーが @mu-ga

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ