第29話 大切なもの

 りょーちゃんは首を振ると尻尾を離し真剣な表情になる。それにみーちゃんは釣られて、りょーちゃんをそっと離し真面目な顔をした。


「みーちゃん、ボクは君をなるべく縛りたくはないんだ。だっだから嫌だったら遠慮なく言って」

「分かった」


りょーちゃんはゆっくり頷く。


「ボクの大切なものを肌身離さず持っていてほしいんだ。それがあればみーちゃんといつでも話せるし、呼びかけてくれれば一瞬でボクがそばに行く事だってできる」

「逆に言えば、常に聞かせたくない事もボクには丸聞こえになる。それでも良いなら持ってほしいな」


みーちゃんは顔を伏せ視線を左右に動かす。グッと手を握り唇を噛んだ後に目をりょーちゃんに合わせ微笑んだ。


「良いよ、持つの。りょーちゃんと一緒にいられるのなら良い。りょーちゃんの大切なもの、私に頂戴」


りょーちゃんは確かめるように言う。


「本当に良いんだね?」


みーちゃんは口角を上げて頷く。


「良いって言ってるの」


りょーちゃんは頷いた後、手を顎の下へ動かしていき何かを取る。


「みーちゃん、手を出して」


みーちゃんが手を差し出すと、りょーちゃんは、その上に五センチ位のひし形の黒色の鱗を置く。

 みーちゃんは鱗を手に取り、まじまじと見る。


「これが大切なものなのね」

「そうだよ。これでいつでも話せるから大事にしてね」

「分かってる」


みーちゃんはコクりと頷いた。

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