第3話 呼び名
学校が終わった途端走り出す生徒がいた。みーちゃんである。龍に会うために真っ先に森へ向かっているようだ。
先ほどから謝ろうと、そわそわしているこう君とゆうちゃんはみーちゃんの目に入らなかったみたいだ。
謝る機会を逃した二人は残念そうにしている。
「行っちまったな」
「もー! ウチがあやまろうとしているのに、どうして先に行っちゃうのよ!」
「もたもたしているからだよ。ゆうちゃんとこう君が」
なーちゃんの正論にぐうの音も出ない二人だった。
「あ、明日あやまればいいんだよ、明日! 今日はもう公園に行こうぜ」
「それもそうだわ! 公園に行きましょ」
「えー? いいの?」
「いいのよ!」
謝ることから逃げるように公園に向かう二人。
なーちゃんは釈然としなかったが、二人について行くことにした。
みーちゃんの方はどうかというと、まだ森に向かっている最中だ。学校の近く辺りは走っていたが、体力が持たず今は歩いている。
しばらくして森の入り口に着いた。ここまで来れば後もう少しなのでみーちゃんは再び走り始める。
程なくして森の広場に着いた。龍と会った場所である。みーちゃんは辺りを見回して龍がいないか探した。
「龍? どこー?」
「呼んだ?」
後ろから声をかけられてみーちゃんはびっくりする。
でもすぐに龍の声だと分かったので振り返った。そこには昨日見た茶色の龍がいる。
「龍だー! そこにいたの!」
みーちゃんは龍に会えたのが嬉しくてギュッと抱きしめた。
「えへへ。驚かしてみたかったんだ」
「うん。びっくりした!」
龍の体は暖かく柔らかいようでいつまでも抱きしめていたくなるとみーちゃんは思う。
でもずっとそうするのは駄目だと抱きしめるのを止めた。
「それでね。昨日、龍の漢字を教えてもらったの! こう書くんだって」
ランドセルを開けて、学校で書いてきた龍の文字を見せる。龍はまじまじと見て頷いた。
「へー、そう書くんだ」
「龍は文字もカッコいいから好き!」
「そっかー。照れちゃう」
手で顔を隠そうとするが全然隠れていない龍。それを見たみーちゃんはニコニコだ。
「それにね。龍はりょーって読むんだって!」
その言葉に反応した龍は顔を隠すのを止め、みーちゃんと目を合わせる。
「じゃあ、ボクはりょーちゃんだ!」
「りょーちゃんだー!」
一人と一頭は笑顔になり、お互いに名前を呼び合った。
「りょーちゃん!」
「なーにー?」
「なんでもないの!」
「みーちゃん!」
「なぁに?」
「なんでもないよ」
「えへへ」「あはは」
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