第44話 奪還
ドルティオ遺跡の中心部、
「いざ開かん――異界の『扉』よ」
自らの命を代償に魔物を召喚する
虚空が揺らぎ、
ところが、それからしばらく経っても、一向に変化は訪れなかった。
「やはり……わたしの命では足りないか」
「どういうこと?」と、澪。
「そのままの意味だ。
皆が言葉に詰まる中、厳しい顔つきで百慶に詰め寄ったのはカミーユだった。
「アンタ今『やはり』って言ったよね? 本当は最初からこうなるって勘づいてたんじゃないの?」
「……否定はせん。だから用意はしてある――唯一の打開策をな!」
俄然、
「いい気勢だ。だが慌てるなよ。わたしは今から呪法を暴走させ、己を
「あなた……一体、何者なの……?」
「お前と同じだ、
荒々しい気迫とともに
「間もなくわたしは自我を失い、憎悪と
見る見るうちに百慶の四肢は
もはや選択の余地はなかった。それでも、
「あなたはそれでいいの!?」
「今さら何を悲しむ? お前はその身に巣食う悪魔を『扉』の向こうへと帰しに来たではないのか? この、わたし、の……命を、むざむざと犠牲にしてなぁッ!」
獣面の怪物は、身の毛もよだつ
(迷っては……駄目――)
迎え撃つ太刀筋が、気持ちとは裏腹に乱れる。振り下ろされる獅子の爪を刀で
不意に一陣の突風が吹き荒れた。横合いからの奇襲に、
「どうしたんだよ、ミオ姉!? 随分ヌルいこと言うようになったじゃんか!」
カミーユは精霊の翼で宙へ舞い上がり、風撃で敵に追い撃ちをかける。
「ううん。違うよ、カミーユちゃん。覚悟ができてないのは、澪ちゃんの方じゃなくて……」
ラリッサも二丁斧を手に前方へ躍り出る。その後ろにはジャンルカが続いた。
「あの野郎、この期に及んでリーダーを惑わすようなこと言うんじゃねっつーの」
「みんな……」
胸に熱い感覚が込み上げる。吐く息に合わせて震える肩に、温かい手の平が触れた。
「澪姉だけに重荷を背負わせたりしないよ」
「……
「忘れないで。いつだって俺がついてるってこと」
勇ましく微笑む献慈の髪は銀色に輝き出し、瞳は黄金色へと変わる。
いつもそうだった。彼が自分から力を振るうのは、私を守ろうとするときだけ。
「うん。行こう……一緒に」
ふたりで踏み出す足取りは力強くも軽やかに、仲間たちのもとを目指した。
そこに立つのは、負の感情に支配された、恐ろしくも憐れな獣であった。
「忌々しい偽善者どもめ……
喉も裂けんばかりの怒号が部屋中に響き渡る。
しかし、ここには目を逸らす者も、後ずさる者も誰一人としていない。
「望むところ! あなたの怒りも悲しみも、全部私たちが受け止めてあげる!」
玉水の霊刀、獅子の獣爪――刃を向けあった瞬間、
* * *
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