幕間 壱

【設定】香夜世レポート・初級編

~ 陰陽師・ぶね香夜世かやせによる報告書 ~



「どうしたのです、瑠仁るじろう? ……トゥーラモンドの文化に不慣れな知り合いですか。なるほど、新月組の。恩を売ろうというわけですね。いいでしょう。軽くまとめておきます」



  *  *  *



◆魔物素材の用途


 烈士たちが魔物の体素材を獲得するには、特殊な技能が必要とされます。特定帯域の精神波を照射することで体組織の分解を防ぐ〈定着化フィクセイション〉という技能です。これは主に野伏レンジャーが習得しています。


・爪や牙、鱗など

 主に防具の材料になります。加工して護符にする場合もあります。


・毛皮

 そのままもしくは繊維に再加工し、魔力耐性を持った外套を作ります。


・その他

 不純物を取り除いて精製し、樹脂素材や燃料にします。




◆獣人への差別


 おうとイムガイでは事情が異なります。



◇大陸:古代の伝染病


 央土での差別意識は、大昔に流行った伝染病に起因しています。角や爪が歪むなどの症状で、見た目にも判りやすかったことから、瞬く間に差別が蔓延しました。


 ただしこれは獣人特有の病であり、他種族には伝染しないことが判明します。

 ですが初期に与えた衝撃は大きく、予防法や治療法が確立した後も差別感情だけが残ってしまいました。



◇フォズ・イムガイ:宗教観と偏見


 イムガイでは、獣人の抜け毛が宗教的に不浄と見なされたことや、夜目が利く性質で夜間の犯罪を疑われたりしたことが差別の原因です。


 現在はほとんどの地域で感情のこじれは解消され、ヒトと鬼人、獣人はそれぞれ良き隣人としての関係を築いています――旧都付近を除いては。


 前提として、中世の貴族文化において主役だったヒトと、宮中の警護役を務めた鬼人族とは特権階級だという意識が、近世までの旧都には根強くありました。



◇旧都:伝統的社会背景


 旧都グ・フォザラは伝統を重んじる反面、全国に先駆け路面鉄道を採用したりと、進歩的な側面も持っています。

 ですが、そうした急速な近代化は保守派の反発を招き、獣人への差別という形で顕在化してしまいます。


 最も差別意識が高まったのは、半世紀前の遷都前後の時期です。現在では表向き収まっては見えるものの、住民の意識下に渦巻く潜在的な不満は、昨今における邪教の台頭とも無関係ではないと思われます。




◆魔物 (序章~第一章)


オーク Orc

 危険度:D

 猪鬼。西洋各地の山野に集落を築き、人類と敵対する亜人。ヒトよりやや大柄で、体毛は薄く、イノシシのような鼻と牙が特徴。人間並みの知能を持ってはいるが、強い凶暴性により阻害され発揮できていない。



ハーピィ Harpy

 危険度:D

 ヒトの女性に似た上半身に猛禽類の翼と脚を持つ妖鳥。知能は動物並み、肉体的な耐久力もさほどではないが、飛行能力や足先の鉤爪には充分な警戒が必要。



ワイラ (蛙弄)

 危険度:D

 剛毛逆立つ大きなガマの体に牛のような頭と尻尾を持ち、四肢は鉤爪になっている。主に山や荒れ地に棲息。



ツチグモ (土蜘蛛)

 危険度:C

 牛馬大の体躯を持つ大型のクモの魔物。頭部はウシに似てツノがある。脚は三対で、前脚は大鎌状になっている。口から蜘蛛糸を吐いて獲物を拘束し、捕食する。



テッソ (鉄鼠)

 危険度:D

 ネズミに似た魔物で、個体によっては大型犬ほどの大きさにまで成長する。全身が鉄のように硬いため、斬撃は通りにくい。雑食性。



  *  *  *



「今回は最小限の説明に留めておきました。足りない部分は以下の資料を参照いただくよう言ってください」



◆【番外編】マレビト来たりし番外地【裏設定】

https://kakuyomu.jp/works/16817330648524007296



「それにしても、その入山いりやまけん氏とはいつ知り合ったのです? 差し支えなければ聞かせてくださいませんか?」



(第12話へ続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る