第32話 デバフ:レベル下げ

 リークの眼の前には数万の兵士が広がっている。

 レベル9999になると、体が驚異的に動かせる。

 スキル:超人を発動させると、体はさらに軽くなる。

 

 風が吹くようにふわりと体が浮かび上がると、地面を蹴り上げていた。

 地面は後ろに吹き飛び、爆散する。

 

 村人達は突然消えたリークに驚き、その足元から飛んできた瓦礫にびっくりする。

 運よく誰にもあたる事はなかった。


「デバフ:レベル下げっと、これは触れたほうが効果抜群だなー」


 遠距離からでもいいのだが、下げるのに少し時間がかかる。

 なので兵士に触れる事にする。


 リークは片端から兵士に触れる。

 それだけでレベルが1になる。

 そして彼等はこれからレベル1から成長させていかなくてはならない。

 とてつもなく大変なレベル上げが待っている。


「おい、まじかよ、レベル1だぞお前」


「嘘かよ、お前鑑定あるよな」


「俺もみろよ頼むよ」


「ふざけんなよ」


「あ、レベル1だお前も、俺もだ」


 兵士達は次から次へとパニックに陥る。

 風のように吹くだけなのだから、リークの存在も気付かれない。


「さっきのガキがいないぞ」


「あのいっちょ前のガキが」


「ふぅ、全部終了」


 リークが村人の前に再び戻る頃には。

 数万の兵士のレベルは1となり。

 数万のレベル1大軍となっている。


 1人の男性が白馬に乗ってやってきた。

 そいつは将校クラスのようで、一応彼もレベル1となっている。


「こんのたわけげああああ、相手は雑魚だ、レベル1だろうと倒せる!」


 将校クラスの叫び声で、兵士達の士気は高まった。

 盾に剣を当てて鼓舞している。

 数万の大軍がたかが一人の少年をなぶり殺そうとしてぼこぼこにされました。


「ぐは、なんだこれは」


 将校が叫ぶ。


「いやー直接拳で当てると、あなた達の体が吹き飛ぶので風圧で倒させてもらいます。その為にレベル1にしましたからね」


「ばかなああああ」


 将校が叫ぶのだが。


 リークは右拳と左拳をひたすら眼の前に突き出す。

 彼の足元ではアンクレイサーとランクレイサーの犬と猫が不思議そうに見守っている。


 高速の拳の連撃。

 そのスピードに追い付けるものは誰一人としていない。

 高速の風圧は兵士達を巻き込み。

 将校の馬を巻き込み、竜巻のように回転しながら、遥か空へと舞い上がっていく。


「さぁ、君達はどこかの山奥にでも行っていてくれ、レベル1で生き残る事を僕は通説に願うよ!」


「なんだとおおおおおお」


 将校が叫びながら遥かな山の方角へと飛んで行った。

 その数は数万。

 もはや数える事すら出来ない。

 果てしの無い数のレベル1が山で遭難するだろう。


 後ろでは受付嬢の人がこちらを見ていて、冒険者達がまぶしくこちらを見ていて。

 次にティーナと鍛冶師リンネーが見ていて。

 カエデちゃんとシェイザーが見ていて。

 アンクレイサーとランクレイサーの犬と猫が見ていて。

 カナシーがにこりと笑って。


 その場で全員が雄叫びをあげたのであった。


====騒動の後====


 受付嬢達や冒険者から宴に誘われたが、それを断り。

 リークはカエデちゃんとシェイザーとカナシーを連れて幻想ショップの異世界製作所にやってきていた。


「いくつか商品も作ったんだけど、それ商売どころじゃなくったよね」


「それもそうじゃのう」


 カナシーが呟き。


「カエデちゃん、この星の腕輪を上げるよ」


「ありがとうございます」


「君の体に合わせた力となるからね」


「はい」


「シェイザーには愛の防具を上げるよ」


「すげー恥ずかしい名前だな」


「気にするな、僕のは剣だ。そう自分の心に反応するただの剣だ」


 リークが握りしめているのはどこからどう見てもただの剣だった。

 この剣に込めた力は勇者と魔王から受け継いでいる。 

 自分の心や色々な物に反応する剣。

 それを込めた。


 カエデちゃんに上げた星の腕輪は星のようになってくれと願った。

 どんな力を発揮するかはカエデちゃん次第だった。


 シェイザーに上げた愛の防具は失われた愛を思い出して欲しいと込めた。

 シェイザーの兄に対しての思い。そういったものを思い出して欲しいと込めた。


「はぁー疲れたーさて、次はどうしようかな」


 リークが手をぶらんとさせると、シェイザーとカエデちゃんとカナシーはにんまりと笑って。


「どうせメルム卿って奴はルーギャシー国王にコテンパンにされてるだろう、問題は……」


「勇者がなぜ死んだかでしょ、それはシェイガーに殺されたんだよ」


「なんだと」


 シェイザーが目を吊り上げて叫んだ。


「この3つの物を作るとき、勇者と魔王と会話したよ、シェイザーのお爺さんに会った」


「そうか」


「君の事をよろしくだそうだ」


「ふ」


「シェイガーは秘儀に触れたらしい」


「あのバカが」


「その秘儀とはなんなんだ?」


 リークが尋ねると。


 シェイザーが色々と教えてくれる。


「それは、痛みの秘儀と呼ばれていて、死ギリギリの激痛を浴びる事により、魔族の血が伸びるんだが、寿命が極端に減るし、1つ間違えれば死に至る。恐ろしい秘儀なんだ。その代わり、力が倍増される。たぶんレベル9999は超えるぞ」


「それやばいね」

 

 リークがにんまりと笑うと。


「まず、国王と相談しないといけないのう」


「それは賛成だ」


「ただ問題があるんだ」


 シェイザーが首を振って。


「勇者が殺されたのはちょっと前だ。そしてシェイガーは人間を滅ぼすだろう、その手始めに近隣の村や街を破壊するはずだ。最後に国だ。相談している場合なら攻撃したほうがいい、後、あいつの魔剣は相手を生者を殺す。さらに力を吸収する。どんどん強くなるぞ」


 リークは少し考えながら。


「2人は人力車に乗ってくれていい、カナシーは浮遊してついてきてくれ、高速で移動すれば問題ないだろう」


 リークの提案に、シェイザーとカエデちゃんは大きな口を開けていた。


「時間が無い移動するよ」


 その後、シェイザーとカエデちゃんの悲鳴が轟いたのであった。

 カナシーは浮遊しながらその光景を見ている。


「まさに面妖、1人の少年が人力車を高速で移動させておるわ、さらに隣村まで2分か。首都まであっという間、4分で到着。レベル9999の恐ろしさも伊達ではないが、スキルの応用も凄いのかもしれんのう」


 カナシーはふと気づくと。


「しまった追い付かねば」


 遥かな空で幽霊が浮遊していたのであった。

 リーク達は国王へと相談しに首都に舞い戻ってきた。

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