第22話 こいつもデバフ効きませんがー

 リークはダイヤリザードマンのスキルを確認していた。


【超新星】星のように動く。

【ドラゴン化】ドラゴンに変身する。


 今、リークはとんでもないスキルを見ている。 

 超新星だけでも普通に危険なのに、ドラゴン化というスキルがある。

 それはドラゴンに変身するものだった。


「とりあえずデバフー」


 ダイヤリザードマンはリーク達に向かって落下中。

 リークは後方にジャンプしながらのデバフ発動。


【レベルが足りません】


 あの謎の声でデバフのレベルが足りないそうだ。

 

「やっぱり、こいつもデバフ効きませんがー」


 リークは思わず声に出して突っ込んでいたが。

 デバフの魔法レベルを早く上げたいと心の中で思う、しかしどうやって上げればいいのかが分からないでいた。


 リークはアンクレイサーの斧とランクレイサーの槍を飛来させた。

 13歳の幼い体とは思えない身体能力。 

 地を蹴り、跳躍する様はまさに武の神少年そのもので。

 2本の武器はダイヤの鱗に阻まれ火花を散らして盛大に後ろに弾かれた。


 ダイヤリザードマンは槍を握りしめており。

 こちらに向かって鋭い突きを繰り出した。

 風がぶんと切れる音がしたかと思ったら、リークは後ろに運ばれていた。

 そこにはカエデちゃんがおり、彼女がリークの体を引っ張ってくれた。


 そうしないとリークの心臓には風穴が出来ていて即死していただろう。


「うちの目でも追えるかってレベルですよ」


「超新星の力で星のように動くらしい、スピードも流れ星級なんだろうな」


「そんなとんでもないスキルが」


「あと、気を付けないといけないのは、ドラゴン化だ。ドラゴンになる前に倒すぞ」


「ひえええええええ」


「ふふふ、楽しくなってきたなー」


 空で浮遊しているカナシーはただ眺めていただけだった。


 ダイヤリザードマンはこちらが何度も攻撃を避けるものだから、怒りくるって槍をぶんぶんと振り回した。

 その結果国1つはあるであろう大きさの木々を両断し、ゆっくりと木々が倒れていった。


 倒れた木々はドスンと音を鳴らして、地面を揺るがした。

 リーク達の体は何回かバウンドしたが、ダイヤリザードマンは気がすむと、超新星のスキルを発動させ、地面を抉りながらこちらに猛スピードで飛来してくる。


 リークとカエデちゃんは2つの方角に分かれると、リークは【超人】【破壊武人】のスキルを発動していた。心を落ち着かせる為に、キングジョンから盗んだ【冷静沈着】も発動させる。


 冷静そのものになると、リークはアンクレイサーを構える。ランクレイサーを解除して、黒い猫にする。 

 黒い猫のランクレイサーはリークの肩に乗った。


 右手と左手でアンクレイサーを振り落とす。超人の力が体を素早くさせ、力を増大化させてくれる。破壊武人の力が武器の威力を増し、破壊のごとし力で、ダイヤリザードマンの右肩に炸裂した。


 だが、ガキンと音が鳴るだけで、まったく傷を与える事が出来なかった。

 なぜならダイヤリザードマンはダイヤで出来ているのだから。

 力で倒すには宝石を砕く必要がある。

 そんな事って、あ!


 リークはキングジョンのもう1つのスキルを思い出した。


【武宝技】だ。これは宝石を装備すると強くなるというもの、そしてもう1つ使われない力がある。それこそが。


「宝を破壊する力。そんなの使う訳がない」


 だがここで使うべきだと認識。


「カエデちゃん、陽動を頼む、一撃も喰らっちゃダメだよ、即死だからね」


「分かりました。リークさん、任せてください」


 カエデちゃんは狼人間の敏捷力を生かして、フェイントをかまし、ダイヤリザードマンを翻弄する。

 ダイヤリザードマンはこちらが気になるようだが、狼人間のカエデちゃんがうるさいのかそちらに意識を向けて、超新星を発動させようとしている。


 その時、超新星が発動され、地面をえぐりながら流れ星の如く移動する。 

 そのスピードは超人の力でも追い付けるかぎりぎりのレベル。


 きっと触れるだけで吹き飛ばされてしまう程の威力なのだと思う。

 

「カエデちゃん、こっちに走ってきて、僕の頭の上を飛んで行って」


「分かりました!」


 カエデちゃんが方向を変更すると、こちらに向かって走り出す。

 カエデちゃんのスピードの方が少し遅い。

 ぎりぎりの所でカエデちゃんはリークの頭の上を通過し、ダイヤリザードマンはこちらにまっすぐに突っ込んでくる。


「これで、終わりだああああああ」


 アンクレイサーの斧を右手と左手で構え。

 上段構えにする。真上から真下にまっすぐに落下させながら【武宝技】を発動させる。


 現在リークは宝石を装備していないので強化されるポイントはない。

 しかし宝石を破壊する力は活用される。


 リザードマンは自らの宝石の体に自信があるのか、真っすぐに突っ込んできて、リークのアンクレイサーの斧が下段に高速で飛来した。

 

 ダイヤリザードマンは咄嗟に後ろに下がるも、胸を両断され、血が噴出していた。

 

「ぐごごおおお」


 元気のない悲鳴をあげると、こちらを睨みつけてきた。

 そしてぶるぶると震えて、四足歩行になった所で、リークは気付いた。


「まずい」


 走りだすが、そこにはダイヤモンドのドラゴンが一瞬で君臨しており、体の大きさは1軒屋程もある大きさだった。

 

 このワールドダンジョンに来た時に見た。巨大な山と同じくらいのゴーレム等、それと比べたら小さいほうだけど、リークにとっては脅威そのもので。


 現在、ダイヤリザードマンからダイヤドラゴンになったそいつは。こちらを蛇の目でじろりと眺めると、細い舌をちょろりと出した。

 全身のダイヤはぎらぎらに輝いていた。


 ダイヤドラゴンはこちらに向かって突進してきた。


「カエデちゃん、たぶんあいつの狙いは僕だ、君はダイヤドラゴンの背中に乗って翻弄してくれ」


「はい!」


「無理はしなくていいからな」


「無理しなくちゃ、いけないでしょ」


 カエデちゃんがそう叫び走り出す。


 リークは超人スキルを発動させている。

 だが眼の前のダイヤドラゴンは超新星を発動させ、流れ星の如くこちらに突っ込んできているし、地面を抉る面積がえげつない。

 

 あんな巨大にタックルされたら即死を免れないだろう。

 後、ダイヤリザードマンが装備していた槍はドラゴン化と共に融合して頭の角のような槍になっていた。


 ドスンという音を響かせ、それが何度も続く。

 リークは全力疾走で走り出した。


 スキル超級粘液を発動させて、少しでも遅れさせるように試みたが、まったく超級粘液では効果が無かった。

 それにリザードマンやドラゴンは爬虫類だし、沼でぬめぬめの所で生きていそうだから、効かないのだろうかと思った。


「やばいやばい」


 全力疾走をしながら、巨大な木々の切り株、先程ダイヤドラゴンが両断した木の周りを走り続ける。


 その時、ダイヤドラゴンの悲鳴が聞こえた。

 ダイヤドラゴンの背中にはカエデちゃんが乗って、翻弄していた。

 まるでゴミでもついたかのように暴れるダイヤドラゴン。

 リークはアンクレイサーの斧を構える。

 右肩には黒い猫のランクレイサーが乗っており、スキル居合斬りを発動させる。

 

 このスキルの居合斬りは基本的に剣での装備の時に使えるものだと思われがちだが、居合斬りは斧や槍でも使用が出来る。基本的に素手以外ならなんでも使用出来ると思われる。


 意識を集中させていく。

 体の感覚を研ぎ澄ましていく。

 呼吸を整えていく。ゆっくりと息を吸い込んで吐いていく。


 武宝技を発動させ、その時、発動していた居合斬りが発動。

 ダイヤドラゴンの胸のダイヤの部分が破壊されて、吹き飛ぶ。

 ダイヤドラゴンは仰向けに倒れて気絶していた。

 デバフ魔法を発動させてダイヤドラゴンからスキルを習得した。


【超新星】と【ドラゴン化】を得る事が出来た。


 すると捕縛の腕輪が発動して、ダイヤドラゴンを渦の中に吸い込んだ。


 先程までダイヤドラゴンの背中にいたカエデちゃんは落下して、リークの体に抱き着くような形でぶつかった。


「あわあわあ」


 カエデちゃんは顔を真っ赤にさせて、慌てふためいていた。


 リークは立ち上がり、手を差し伸べた。


「ありがとう、助かったよ」


「こちらこそです」


「ぱちぱちぱち、さすが、リークじゃ」


 カナシーが空から浮遊しながら落ちてきた。


「あのダイヤリザードマンを捕縛しおったわ、凄すぎて涙が出てくる、これで定期的にダイヤを手に入れられるぞ」


「凄いなそれは、ダイヤだけでもどれくらい儲かるんだろう」


「ざっと200万金貨じゃな、炉で製作したらもっとするぞ」


「ふえええええええ」


 カエデちゃんが眼玉を大きくして驚いている。


「それにしてもこんなボスモンスター級がここにいるのか?」


「ああ、ごろごろしてるが、もっと奥地にいるはずだ。ワールドダンジョンで何が起きているんだ? とりあえず、この死体からスキルを盗んでおけ、リーク」


「そうするよ」


 リークは10人の死体からスキルを盗む事にした。

 

【挑発】×1【気合】×4【超級盗む】×1【鉄壁】×4【精霊魔法】×1【死霊魔法】×1【爆発魔法】×1【素材収集家】×1【剣術】×6


 やはりワールドダンジョンに来るだけあってスキルはレアなものばかりだった。

 草原村のごろつき達も見習ってほしいものだと思いつつも。

 彼等はスキルなしで生きているのだがどうやって生きているのか微妙に興味があった。


「さて、捕まえるぞー」


「おー」


「ふふふ」


 1人の少年と1人の少女と1人の幽霊。

 モンスターを捕縛しまくる作戦は続く。



 

 


 

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