第20話 テルハレム王国首都

====テルハレム王国首都====


 テルハレム王国首都に着くまで街道を歩いた為、モンスターとは運よく遭遇しなかった。到着するまでには数週間の時間を要した。


 野営地を造ったり、カナシーとカエデちゃんと雑談したり、とても楽しいひと時だった。


 そうしてテルハレム王国首都が見えてきた。

 なぜか城が2つ合体しており、巨大な塔が何本も建てられていた。

 城下町では大勢の人々が買い物をしたりお店を経営したりしていた。


 とてつもなく賑わっていた。

 リーク達は解放された門から入り、特に身辺調査や何か尋ねられる事はなかった。

 

 彼等は宿屋で1日休憩する事となった。


 1人のおっさんが愚痴りながら歩いているのを目撃した。

 宿屋の中でずっと愚痴っていたのだ。


「ったく、なんでスキルが手加減パンチと手加減キックなんだよ、こんなのいらねーよ、ぶつぶつ」


「そうか」

 

 リークはにんまりと笑い、スキルデバフを発動した。


「うお、体がだるい、あれ、スキルがねええ、ま、いっかー」


 リークは特に必要はないが、いらないなら貰っておこうと思い、おっさんから【手加減パンチ】と【手加減キック】を盗んだのであった。


 夕食を食べて、部屋で寝て、次の日になると早速とばかりにテルハレム王国首都の冒険者ギルドに向かった。


 中では大勢の冒険者達が入ってきたリーク達を睨みつけた。


 リーク達は受付嬢の所にやってきた。

 カナシーは冒険者ギルドの屋上で待機している。 

 彼等が地下に向かったら移動する手はずだ。


「え、S級ランクのリークさんとA級ランクのカエデさん、2名をワールドダンジョンへご招待します」


 その言葉を聞いた冒険者の大勢が度肝を抜かれて、次の瞬間には。


「ぎゃははあっはあは」

「ありえねーよ、あんなガキが?」

「わ~るどだんじょんだってええええ」

「お母さんの所に帰りな」


 1人のおっさんが立ち上がる。


「おいお前、腕相撲しよう、俺が勝ったら、さっさとママの所に帰りな」


「いいよーたのしそー」

 

 リークは頷き、冒険者ギルドの中で腕相撲が始まった。

 おっさんは体がムキムキで、リークの手を包み込むように覆ってしまった。

 下手したらリークの腕がへし折られるかに見えたが。


「はじめ」


 1人の女性冒険者が叫ぶと。

 おっさんの腕がみるみるうちにぷるぷると言ってきた。


「おっさん、僕、まだ本気出してないんだけどー」


「嘘だろ」


「じゃあ、本気だすね」


 次の瞬間、テーブルがドシャンと粉砕された。

 おっさんの腕は反対方向を向いて折れていた。

 おっさんは苦悶の声で悲鳴をあげる。

 受付嬢がヒールを与えて回復させているが、結構しんどそうだ。


「しょうがないなー」


 リークはミラクルヒールを発動させる。

 一瞬でおっさんの腕は治療された。


「う、そだろ」


 周りの冒険者達は唖然と口を開いている。


「力も異常、さらに最上級の回復魔法も使用、お、お前は勇者か!」


「僕は勇者じゃありあません、幻想ショップの店長です」


 その場がフリーズした。


「あ、え、ああああ、あのお店の店長!」


「こんな少年だったとは」


「信じられないわ」


「確かに噂では子供だと」


 大勢の冒険者達がうんうんと頷き、先ほどのおっさんが立ち上がり。


「すまないな少年、見くびっていた。反省するよ、俺の名前はガルチャだ。この国が初めてなら、この俺に聞け、色々と教えてやる」


「ガルチャさんありがとうございます。頼りにさせてもらいますね」


 ガルチャさんは胸を張って、おほんと頷いた。

 その後リーク達は冒険者ギルドの地下深くに向かう階段をひたすら下り続けて、巨大な広間に辿り着いた。

 薄暗くほんのりと松明の光が灯る空間。

 そこは不思議と生暖かい雰囲気だった。

 20名くらいの冒険者がいて、彼等は渦をまく穴に入っていった。


 受付嬢の方がこちらを見て頷き。


「後はギルドマスターが説明します」

 

 変わるようにギルドマスターがやってきた。

 男性の方で眉間に皺を寄せている。よーく見ると背丈は小さくドワーフだった。


「ふむ、お主がリークか、幻想ショップの店長でオークハイキングを倒したと、国王から聞いておる、にわかには信じられない事だが、あの国王が言うには本当なのだろう、さて、説明しようワールドダンジョンについて」


 ドワーフのギルドマスターは頷き、説明してくれる。


 内容は草原村の受付嬢から聞いた事とカナシーからも聞いた事と同じだ。


1ワールドダンジョンはあちこちの冒険者ギルドまたは未確定の転送ポイントから入れる。

2ワールドダンジョンは1つの世界であり、そこには無数のモンスターがいる。

3まれに魔族が暴れる時があり討伐指令が下される事がある。

4素材やアイテムや道具や武具は持ち帰り自分の物とする。

5冒険者同士の争いは許可され、殺し合いも許可されている。


「最後の冒険者同士の争いとは?」


 リークの問いかけに、ドワーフのギルドマスターは頷き。


「そうじゃのう、人間だけがワールドダンジョンを利用している訳ではない、ドワーフもエルフもノームもコボルトも、はたまた魔族も、まぁ魔族が暴走すると討伐指令が出るが。基本はない。そういう種族間や戦争している国同士の冒険者が鉢合わせすると、決まって殺し合いになる、それをいちいち罰則にしていたら法律がおかしくなる。これは全国共通で、ワールドダンジョンでは敵も味方もいるという事じゃ」


 ドワーフのギルドマスターが一通り説明してくれると。

 リークは頷いた。


「さぁ、ゆけ、冒険者達よ、それと幽霊よ」


 見えないように隠れていたカナシーの存在はばれていたが。

 カナシーはにんまりと笑い。


「久しいなギルドマスター」


「まぁ、カナシーさんなら仕方ないですから」


 ドワーフは敬語になって呟き。


 そうしてリーク達は渦を巻く空間へと入り、ワールドダンジョンへと入る事となった。


 渦から出た外の光景に、リーク達は唖然とした。


 空には沢山の島が浮いている。

 遥か空、つまり宇宙には見た事もない巨大な惑星が浮いている。

 ここは崖のような真上の場所だ。

 なので崖の下の光景が見える。


 巨大すぎる森、木々の太さはあのテルハレム王国を超えている。

 草原地帯、見た事も無いモンスターが広がる。

 海は果てしなく伸び、巨大すぎる海のモンスターが泳ぐ。

 山は大きい物から小さい物まで。

 果てしなく伸び、雲の上まで到達している。

 山と同じくらいのモンスター、いやゴーレムみたいなものが闊歩し、地響きを立てている。

 どうやらリーク達の知っている世界とは桁外れに違っていた。


「凄すぎる」

「死ぬわあああああ」


 リークが感嘆すると、カエデちゃんが絶望の声をあげ。


「ふふ、なつかしいな、我が故郷」


 カナシーがとんでもない事を呟いた。


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