第18話 幻想ショップ再び開店

 煌びやかにお店に並べられた無数の品々。

 個数はばらばらで、造るのに夢中だったため把握していない。

 だがどのような物を製作したかは覚えている。

 後オークハイキングの角で作った奴だけは覚えている。

 あれは尋常じゃなく硬かった。


 リークは棚に並べられている品々を1つずつ把握してく。


【解体の腕輪】=20金貨【眼力の腕輪】=10金貨

【会話達人のミサンガ】=100金貨【プライドのサークレット】=100金貨

【強気になれる剣】=100金貨

【オークハイキングの盾】=1000金貨

【鋭いオークの防具】=2金貨【オークの粉末】=1金貨

【回復のカーペット】=10金貨【素早さの靴】=10金貨


 等々を販売する事に。

 オークハイキングの盾や鋭いオークの防具はスキル付与がない。

 ただの武具だが、それだけで結構な強さとなっている。

 

 回復のカーペットと素早さの靴はティーナが持ってきた道具に付与されていたスキルだ。なのでそのまま作り替えて利用する事に。


 現在幻想ショップの扉は開いていない。

 だがそこには長蛇の列が並んでいる。

 数時間前にストーキングしてきた国王が村中に、いや国中に流したのだ情報を。

 ありがたいのだが、長蛇の列は村の外まで続いており、国王命令で兵士達が村の外の人達をモンスターから守っている。


「なんか凄い事になってきましたねー」


 カエデちゃんが窓から見える絶景に驚きの声を漏らす。


「それは仕方のない事じゃて、幽霊の私が魅力的なのだろう」


 リークは軽く首を振って拒絶の意を示すが。


「面白いよね、今まで幽霊が出るって噂で人々は全然来なかったのに」


 カナシーはそれを聞いてきょとんとして頷いていた。

 リークは少し言い過ぎたなと思いつつも。幻想ショップを開店した。

 一応中に入れるのは10名までとされ、交代で入っていく。 

 一番最初に並んだ人が購入する権利があるが、同じ物の大量購入は禁止とした。


 すると1人のお客さんがリークに尋ねる。


「この解体の腕輪なんだが」


「これを見てください」

 

 リークは解体の腕輪を装備すると、あらかじめ用意してあったネズミの死体を掴み、発動を試みる。するとネズミの毛皮と骨だけになった。

 

「これは持ち主にとって欲しいものを残してくれます。僕はネズミの骨と毛皮が欲しいと思いました。例えば肉が欲しいと思えば、肉だけになります」


「おおお、素晴らしい、購入するぞ」


「すまない、これは」


 次に指さされたのは眼力の腕輪だった。


「それは視力がよくなります。お客さんは眼鏡をつけていますね」


「はい」


「それを腕に装着して発動してみてください」


「うぉおおおおおお」


 お客さんは眼鏡をはずしても景色が見える事に喜びの意を示した。


「信じられない、買うぞ買うぞ」


「これはなんだね」


「それは会話達人のミサンガで、会話の達人になれます」


「これはあああ」


「プライドのサークレットです。それを頭に嵌めると王様のようにプライドが高くなります。そちらは強気になれる剣で、装備するだけで勇者のように強気になれます」


「かうぞおお」

「こっちもかうぞおおおおおおおおお」


 君達はモンスターかと思える程、次から次へと購入されていく品々。


「この無骨な盾はなんだね?」


「それはオークハイキングの盾です。とんでもないボスモンスターから作られました」


 だがこれはすぐには買い手がつかない。

 

「こちらは鋭いオークの防具です。オークの素材を大量に使っていまして。スキル付与はありませんが、普通の防具より遥かに硬いです」


「それはかうぞおおお」


「こちらはオークの粉末で色々と元気になれます」


「それも買うぞおお」


「回復のカーペットはそこに座ってるだけで回復します。素早さの靴は走るスピードが2倍になります」


「かうぞおかうぞおおお」

 

 大勢のお客さんが代わる代わるに幻想ショップに入ってくる。

 彼等は夢中で品々を購入していく。

 きっと皆お金持ちなんだろうなと思う。

 解体の腕輪と眼力の腕輪でこの世界は恐らく変わるだろう。

 きっとモンスターを討伐したら、ナイフ等で解体してきた冒険者達は。

 このスキル付与された腕輪で一瞬ののちに解体してしまうのだ。


 今まで目が見えなくて困っていた人も、眼力の腕輪をつければ、見えるようになる。

 失明した人も目が悪い人も最高な腕輪だ。


 商売が終わりに差し掛かり、太陽がゆっくりと地平線の向こうに沈んでいく。

 オレンジ色の夕日が草原村を照らし出し。


 大勢いたお客さん達はそれぞれの村や街に返っていった。


 最後の一品だけを残して。


「オークハイキングの盾が残ったな」

 

 値段は1000金貨、普通の盾だが、防御力は桁外れのはず。

 製作過程で粉砕するのに3日くらいはかかった記憶がある。


「お前は忘れさられたんだろうな」


 そう呟くと、幻想ショップの扉が開いた。


「すみません、閉店です」


「すまない、オークハイキングの盾を買いたい。勇者をやってるものだ」


「はいいいいいいい」


 リークは目玉が飛び出る程驚き、眼の前には伝説の勇者がいた。

 あれか魔王でも討伐しに来たのか、いや魔王はここにはいないはずだけど。


「そうかしこまるな、オークハイキングの盾が欲しい、リークとやらが討伐したそうだな、あんな化け物を良く倒せたものだ。1000金貨と言わず1000万金貨で買おう」


「……」


 リークの目玉は飛び出た。

 心を落ち着かせ冷静沈着に自分自身に呪文を呟き。

 心の中で何度も何度も冷静になれと呟いた所で。


スキル【冷静沈着】を発動させた。心の中でキングジョンありがとうと呟きつつも。


「なんでそんなにくれるんですか?」


「君にはもっともっと凄いものを造って欲しい、国王から色々と聞いた。君なら何かとんでもない事をしてくれそうだ。俺は勇者として魔王を倒しにいく旅だ。いつ死ぬか分からない、君のようなものが世界を便利にしてくれたらいい、戦い意外に何が必用か、今後文明が発達する為に何が必用か、考えた結果、それは道具だ。便利な道具を作る事だ。長話が過ぎた。1000万金貨で売ってくれるか? 俺の最高の盾にしたい」


「は、はいいいいい」

 

 勇者の風貌はぼろぼろのマントを身に着けていた。

 腰に差した金色の剣は禍々しい魔力を秘めていた。

 盾はぼろぼろで今にも壊れそうだった。

 体に身に着けた鎧はピカピカで至る所が傷ついていた。

 どうやらミスリル製で、凄いレアだと思った。


 リークは恐る恐る勇者の前にオークハイキングの盾を持ってきた。

 勇者はゆっくりとそれを持ち上げると、確かめるように装備した。

 こきこきと手を動かして頷き。


「リーク君の異次元倉庫に送らせてもらったよ1000万金貨、今後ともよろしくね」


 リークは異次元倉庫指輪を発動させて、今送られて来たものが確かに1000万金貨だという事が分かった。


 ふと前を見たら、勇者の姿はなかった。

 扉がゆっくりと風に吹かれてしまっていった。


 リークはもっと話がしたいなと思った。

 だけど勇者には魔王を倒す役割があり、それは果てしない旅なのだと感じた。

 風のように消える人だと思いながら、リークは拳を突き上げた。


 世界最高な物を造る。

 新しい目標の為、突き進むのみだと。


「あれが勇者か」


 カナシーが空中に浮遊しながらそう呟いたのが聞こえた。



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