第17話 クリエイマー

 リークは現在頭の中で整理している。

 オークのスキル2100個は2種類で決まっていた。


【解体】×1050 【眼力】×1050だった。


 オークは獣などを解体するので、それは理解出来るのだが、意外にも眼力もよかったらしい。

 オーク=眼力だった説は新しいと思いつつも。

 これは爆売れ間違いなしだ。


 貴族の6個のスキルについてだが、意外と使えるかもしれない。

【会話上手】×2 【プライド】×2 【強気】×2

 これも爆売れ間違いなしだ。ぐへへとリークは笑う。


 ハルマドー貴族とその息子で合計4個のスキル。

【脅迫】×1 【詐欺師】×1 【バカ】×1 【姑息】×1

 これは売り物にならないので保管したいところ、発動さえしなければ俺の考えに影響はないはず、たぶん。


 キングジョンのスキル2個は自分で使用する事にした。

【冷静沈着】×1 【武宝技】×1


 次は素材についてだが。

 1050個のオークの角があり、どれも綺麗な状態。

 1個のオークハイキングの角も新鮮味たっぷり。

 無数のハルマドー貴族の家宝についてはごちゃごちゃして分からないので製作しながら考える。

 無数のティーナのゴミはレア度が高すぎて判定がつかない。

 

 リークは頭の中でどのような武器や防具やアクセサリーを作ろうかとイメージしていき、カエデちゃんを呼ぶ。


「何でしょうか」


「この紙に書いてる奴を鍛冶師リンネーに見せてあげて欲しい」


「分かりました。今すぐ持っていきますね」


 そう言ってカエデちゃんは走り出す。一応異世界人であるが、狼人間の家系に生まれてしまい大変な事に巻き込まれてしまった。

 それだからリークと出会える事にはなったが。


 リークは夢想を繰り返す。 

 ちなみにカナシーは浮遊しながらこちらを見守っている。

 本当に異世界製作所は不思議な場所だと思いつつ。


 鍛冶師リンネーがカエデちゃんと一緒に大量のインゴットを持ってきた。


「まったく、あっちを呼び出すとは成長したなリーク」


 タンクトップを身に着け、下半身が作業着の姿はいつ見ても同じだった。


「すまない、カエデちゃんありがとう」


「はいです」


「で、何作るんだ」


「色々と面白いものをね」


 にんまりと笑うリークに鍛冶師リンネーはうんうんと頷き。


「じゃあ、邪魔しないように立ち去るさ、あのカナシーがダンマリは珍しい事だからな」


 じゃあと言って鍛冶師リンエーとカエデちゃんが立ち去る。


「よーしやるとするか」

 

 リークの全神経が鍛冶の炉に向かう。 

 インゴットは白熱する炎に溶かして、ゆっくりとゆっくりと形を刻む。

 ひたすらイメージしたものを造る。

 ただそれだけだった。

 

 リークはクリエイトのスキルを使う事を忘れないように発動し続ける。

 手の感覚が武器屋防具屋道具屋装身具アイテムなどの作り方を理解している。

 それはこの異世界製作所の力そのものなのだと理解している。


 この部屋がリークに力を与える。

 知識や製作方法についてはカナシーが教えてくれる。


 何度もこの部屋に備え付けられた道具を使って、叩いて破壊して練り直して作り上げる。

 武器が出来上がれば防具が出来上がる、道具も出来上がれば装身具も出来上がる。

 アイテムすら出来上がる。


 ひたすら自分との闘いの中、リークは何かを見つけ出そうとしていた。

 輝かしい何かをそれを見つける事が出来る。

 それは何なのだろうか、達成感なのだろうか、出来上がった先に何があるのだろうか、いつしかリークは1つの目標を見つけていた。


「世界最高の物を作りたい!」


 その声に反応したのは意外にもカナシーだった。

 

「ふふ、懐かしい言葉を聞いたものだ。果たしてそれを造れる者がいただろうか? はたしてそれに到達するべき者がいただろうか」


 カナシーの呟きは全神経の集中によりかき消されてしまい。

 リークはひたすら製作を続ける事になった。


 1日が経ち、1週間が経った。

 食事はほぼ摂っていない。憑りつかれたようにひたすら作り続ける。

 オークの素材の多さ、インゴットの質の良さ。

 それがあったからこそ、これだけの時間を要する。

 2週間が経つ頃には、幻想ショップに並べるべき最高の商品が出来上がっていた。


 リークはへなへなとそこにぶっ倒れると、カエデちゃんが部屋に乱入してきて、リークの顔面を叩く。

 一応狼人間の一族だから、拳のパワーは半端ではなくて。


「あが、ごあはおがおああ」


 リークの悲鳴が上がるのであった。


「起きてください、お兄ちゃん、リークさんんんん」


 意識が朦朧とする中、最初の頃はお兄ちゃんと呼んでくれていたカエデちゃん。

 最近はリークさんで統一されていたけど。

 なんだか心が温かくなってきて、お腹からぐるぐると渦を巻く音が聞こえてきた。


【ぐるぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお】


 それはモンスターの叫び声そのものであった。


「ご飯ですね、用意しますうううううう」


 カエデちゃんが走り出したのであった。


「まったく見ていて凄いなお前の集中力とやらは」


「まぁな、死にそう」


「死ねばよかろう」


「よくねーよ」


 異世界製作所まで運んでくれたカエデちゃんの料理をむさぼるようにリークは口の中に入れていった。

 もはやそこには大食漢がいた。 

 次から次へと料理をむさぼるリーク。

 カエデちゃんの料理は無限かと思える程次から次へと作られていく。

 それを次から次へと消費していくリーク。

 

 しばらくして満腹になるとリークは立ち上がり、出来上がった品々を見渡す。


「うんうん、絶景絶景」


 そこに広がる武器防具道具装身具アイテム。

 輝かしいほどに見える自分自身が作った最高傑作達。


「ふふふ、売るぞ」


 腰をぴくぴくさせながら、老人のように動くリークを見て。


 カエデちゃんとカナシーは突っ込んだ。


「休憩所にいけバカ野郎」

「お兄ちゃん休憩所ですよ!」


「そうじゃった」


 老人のふりをして、リークは2つ目の扉の休憩所に向かったのであった。



 

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