第14話 休養している場合じゃねー

 オークハイキング討伐の後、リークは馬車で幻想ショップまで運ばれた。

 その後、慌てふためくカエデちゃんを見ながらリークはある部屋の前に立っていた。

 そこは3つあるドアのうちの2つ目のドアだった。

 休憩室と書かれてあった。


「まさか、お前が大怪我をするとふんでこの部屋がお前の為に医務室を用意してくれたようじゃ」


「その前に、僕は大怪我してないからね」


「気力を全部使い果たし、魔力を使い果たしたお前は大怪我と同じじゃ、さぁ、ぶち込むぞ」


「怪我人に対するセリフじゃないでしょ」


 ちなみに馬車と共に国王は立ち去りました。どうせリークをストーキングしているのだろう。


 部屋を開くと、お風呂があった。


「なんでお風呂? というかこれ、水じゃない、空気みたいなものだ。これは凄い、魔力的な奴だな」


 リークは鑑定を使って調べてしまった。


「ほう」


 カナシーが興味深そうに浸かってみる、服のまま。


「おお、幽霊でも効くぞこれは、いいのー」


「こっち動けないんですけどおおおお」

 

 地面を這いながらリークはなんとか空気のお風呂に到着した。

 見る見るうちに体が回復していく。

 ありえないスピードだ。

 これなら製作で疲れた体をすぐに癒して治療できる。


 ちなみにオークの死体は国王が解体してくれた。

 破壊のハンマーを貸したら狂喜して破壊しまくった。

 オークの素材とオークハイキングの素材。まるまる1050本のオークの牙と1本のオークハイキングの牙を手に入れた。


 全ては異次元倉庫指輪にしまわれている。

 

「ふう、回復したし、休養している場合じゃねーな!」


「よく言うよ、もう100万金貨以上持ってるんだぞ君は!」


「使い方わからないぞ!」


「ならいい素材でも買うしかないだろ!」


「2人とも空気風呂で! 喧嘩しないで、気持ちいいでしょ」


 カエデちゃんが乱入してきた。

 リークとカナシーはきょとんとしてしまったが、2人の間に不思議な信頼感が生まれてきているのを感じた。


「いい素材と言えば、先程不思議な少女を見た、フリフリの白いワンピースを着ていて、日傘をさしてるんだが、彼女が引いていた人力車にはSSS級の素材や道具があった。あれはなんなんだ? たぶん本人気づいてないで、道具屋とかに売ってるぞ、その道具屋も気づいてないぞ」


「その子誰?」


「うち知ってます。この辺りのゴミを漁ってる女の子で名前を確か、ティーナちゃんです。孤児院で暮らしていて、稼いだお金で他の子達に色々と上げてるそうですよ」


「なるほど、それは非常に興味深いのう」


「よし、僕が会ってくる、行ってくるよ」


「頑張ってこい、そうだ。私はこの空気風呂に使ってるからな、ぐへへ」


「そこはババアなんだな」


「おい、殺すぞ」


「幽霊に僕は殺せないぜ」


「ふむ、それは至極当然の結論じゃて」


 難しい事をつづってカナシーは空気風呂の魔力に引き寄せられてしまった。

 幻想ショップの1個目の扉が異世界製作所で2個目の扉が休憩所で、3個目の扉はなんなのだろうかと、リークなりに興味深かった。


 リークはオークハイキング討伐から幻想ショップに帰還して5分でさらに全回復した。


 幻想ショップの外に出て、体の節々を軽く動かし、ちゃんと動く事を確認する。

 右足が潰れた時の激痛は忘れる事が出来ない。

 あれ程の痛みは死ぬほど痛いに合致するのだと思った。


 現在空には太陽が昇っている。

 オークハイキングを討伐してから結構な時間が経過したようだ。

 それも丸一日と言っていいかもしれない。

 それほど激しい戦闘だった。


 商店街を見回す。 

 相変わらず草原村の村は賑わっていた。

 大勢の人々が草原村で生活している。草原村にはゴミ捨て場がある。

 道具屋や武器屋や鍛冶屋や魔法具やあらゆるショップのいらなくなった物が捨てられる。


 リークはそこに辿り着く。

 1人の少女が一生懸命物を漁っている。

 鑑定を発動させると。


【ティーナ:レベル10:《ランク増加》《レア発見》】

 

 ティーナのレベルは平均的なものだった。 

 それはスキルを除いてだ。

 

「ティーナさん、ちょっとお話良いですか」


「怪しい叔父様とは話はしないの」


 先程鑑定で色々見えたが、年齢は10歳でリークより3歳年下であった。


「いえ、僕は叔父様ではありません」


「よーく見たら、まだちっこい叔父様でしたの」


「いえ、叔父様ではありません、少年です」


「そうでしたか、それでは叔父様何のようですの?」


「だから叔父様じゃなくて、もういいや、君のスキルを鑑定で見ました」


「それは覗きですね、衛兵ー衛兵ーこの人はワイセツな事をしております」


「していません」


「それでは何の用ですの?」


「君のレア発見でレアな素材や道具を見つけて、そこにランク増加のスキルを使用していると考えていいね?」


「それは企業秘密なの」


「もうばれてるから、それで道具屋とかはそれらをどのくらいで購入してる」


「今集めたこれらはざっと1金貨ですね、一生懸命あつめたけど、金貨だけ貰えれば十分なの」


「残念だけど鑑定した結果、それらは10金貨します」


「えええええええええええええ」


「そこまで驚いたか、君はたかられてたんだよ、さらに道具屋は別な奴にたかられてたんだね」


「……」


 現在ティーナの顔は凄くしかめっ面をしている。

 結構くにゃくにゃな顔をするものだと思いつつも。


「さてティーナ、交渉に入ろうか」


「胡椒は間に合っているのです」


「いや、交渉ね、君が全力でランク増加とレア発見を使用した場合、1回の回収で20金貨支払おう」


「ええええええええええええええええええええええええええええええ」


「そこまで驚かなくても、君の仕事はちゃんと正当なものだ」


「契約成立なのです」


「今日の回収が終わったら、幻想ショップに来てくれたら助かるよ」


「そうしますですの」


 日傘をさして、白いワンピースを着用したティーナはにかりと微笑みを浮かべた。

 ティーナは右手と左手をわきわきさせながら、一心不乱に素材と道具のゴミ捨て場を漁り始めた。


 リークはそこを立ち去ろうとすると。

 3人のきちっとした正装をした男性がティーナの元に行き怒鳴り声をあげた。


「おい、早く借金返せって言ってんだろうあのババアに説明しろって、お前の1金貨ずつの納品はすくねーんだよ」

「ああ、そうさ、早くガキども売り払って借金返しやがれ」

「それか孤児院を明け渡して、孤児院から出て行け」


「「「って伝えろっていってんぶほおおおおおお」」」


 問答無用にリークのパンチが炸裂した。

 ティーナは怒鳴りつけられている間びくびくと震えていた。

 だが、リークの鉄拳制裁が炸裂したのだ。

 ちなみに今のリークのレベルは99です。


 どうあがいても、デバフを使用しなくてもこの3名の奴にはリークに勝利する方法がなかった。


「おい、いってねええええ、こっちを誰だと思ってる、貴族様だぞおおお」


「そっちこそこっちを誰だと思ってる。幻想ショップの店主だぞおおおお」


 リークは胸を張って怒鳴ったが3人の貴族はきょとんとして。


「「「ぎゃははははは」」」


 3名は爆笑していた。

 ちなみにもう一度言うが、3人の相手はレベル99です。

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