第13話 国王、これ災害級です!!

 オークハイキングのレベル800はなぜこうなってしまったのか、リークは逃げながら分析している。スキル同胞愛、つまり同胞が皆殺しにされた事、あと1050体もいた事が原因だと思われる。


 その結果、オークハイキングは何か知らんがレベルアップしてしまった。


「うごおおおおおおおお」


 今オークハイキングと人間では追えないレベルの追いかけっこをしている。

 地面はぼこぼこになり、森は破壊され、オークハイキングの咆哮だけで山が吹き飛ぶ。


 ちなみに咆哮はスキルじゃなく、単純に叫んでるだけです。


「こんなに強いのに僕と同じ背丈ってどういう事おおおお、国王、これ災害級です!!」

 

 その叫びは残念ながら国王の所までは届かないようだ。


「逃げてばっかりじゃダメか」


 リークは後ろを振り返る。


 スキル【危機感】が自動で発動して、右横にジャンプする。高速でパンチが飛来する。


「あっぶねええええ、レベル800のパンチ食らったら死ぬぞ」


 オークハイキングはぎょろりとこちらを睨むとパンチを連続で打ち込む。 

 それを右に左に避けているのだが、きっと他の人から見たら残像にしか見えないだろう。


【スキル:超人】が無かったらとっくの昔に体に風穴が出来ていただろう。


「こわすぎだろおおおおお」


 その時足を躓いた。

 顔面に飛来するパンチ。

 咄嗟に【スキル:パラディンの心】を発動させる。

 いくら無敵状態とはいえ、レベル800のチビオーク本気パンチを食らった。

 体にダメージはないが、地面にバウンドして空高く舞い上がる。

 

 オークハイキングはこちらを見て、咆哮をはっする。


 リークは地面に着地する寸前でパンチが飛来してくるのを危機感で回避。

 

「あの商売人ゴンザレスには感謝しかないよおおおおおお」


 リーク再び後ろに向けて走り出す。それを追いかけるオークハイキング。


「はぁはぁ、さすがに息切れだ。死ぬぞ本当に、考えろ、考えろ。そうだ!」


 リークは取り合えず破壊された森の中に隠れる。 

 息をひそめていると【スキル:超級斥候】が常時発動される。


「ふふふ、これなら、こっちは」


【スキル:超級粘液】も発動させ、あちこちを粘液まみれにさせる。

 

 この後森の大掃除が大変そうです。


「ぐおおおおおおおおお」

 

 見た目に反して叫び声だけは一端のボスモンスターのオークハイキング。


 きっと【破壊衝動】のスキルが常時オークハイキングには発動されてて、かたっぱしから木々を破壊している。


 木々を破壊していくものだから、あちこちに木々がたまっていく、それを粘液がからめとりもはやぐちゃぐちゃの森になっていく。


「ごめんなさい、掃除大変になるねきっと、アンクレイサー、ランクレイサー準備するよ」


 右手にオリハルコンの斧を、左手にオリハルコンの槍を構える。

 

「ぐおおおおおおおお」


 オークハイキングは木々に突っ込んでくる。

 相当な怒りなのだろう。

 だが、超級粘液がオークハイキングの体を絡めとる。


「ぐお? ぐおぐお? ぐおおおおおお」


 戸惑っていたオークハイキング、身動きが取れないようだ。


「いまだああああああ」


 地面を蹴りあげて跳躍して見せると大きな木の枝に乗り、そこからジャンプして2本の武器を振り下ろす。

 地面に向けてまっしぐらだったはずだった。


 そこにはオークハイキングはいなくて、大きな穴が、穴?


「そうか、あいつ体重操作のスキルを!」


 地面から頭から飛び出てくるオークハイキング。

 それは単なる頭突き、咄嗟に右足で防ぐも、右足がぐちゃりと音を立てて粉砕される。


 生まれて初めての激痛に悲鳴をあげるが、それでもぐっと歯を食いしばる。

 唇が切れて血が流れるが、後ろに吹き飛ばされて、大きな木に激突する。

 

 背中に激痛が走り、意識を失いそうになる。

 それでも目をかっと開き、とっさに唇を噛みちぎって冷静になる。


 地面に倒れていると、オークハイキングがゆっくりとこちらにやってくる。

 右手にはアンクレイサー、左手にはランクレイサー。

 少しだけ心配してくれている雰囲気を感じさせる2本の武器。


【スキル:自然治癒】が自動で発動しており【スキル:ミラクルヒール】も発動させる。


【スキル:無詠唱】な為、即座に発動する事が可能。


 足の回復には時間がかかる。最低でも20秒は。

 魔力は枯渇するだろうし、二度目はないだろう。

 オークハイキングはこちらに向けて突っ込んでくる。

 右手と左手で首を握りしめて殺すつもりだろう。

 あいつが握りしめると、リークの首がもげるだろうけど。


「そこらへんに木材が落ちてるな、【スキル:自動盾】」


 無数の木材が浮遊する。

 自動的にオークハイキングの侵攻経路を邪魔する。

 【破壊衝動】がある為、ちゃんと破壊しないと気が済まないオークハイキングは咆哮をあげると、パンチを必死に浮遊する木材の自動盾に攻撃する。


 その間に時間はこくこくと過ぎていき。

 20秒が経過した。


「ふぅ、全力回復てね」


 足は完全に回復しており。しかし二度目に使う魔力は枯渇している。

 魔法系のスキルは魔力を使うから魔力が必用だ。

 他のスキルは気力とかを使う、つまり意志力だ。

 今のリークには意志力はありありと溢れている。


「いくぞ、アンクレイサー、ランクレイサー」


 リークは走り出す。

 浮遊する木材の自動盾と戦っているオークハイキングはこちらに気付いた。

 しかし破壊衝動でこちらより木材を破壊したようだ。


「うらあああああ」


 2本の武器はオークハイキングの胸に突き刺さった。

 赤い血が流れてくるが、どうやら筋肉で止められており。

 いくらぶっ刺そうとしても抜こうとしてもびくともしない。


「ぐおおおおおおおおおおおおお」


 目の前で方向を発される。

 顔面にオークハイキングの唾がかかるが。


「ぐおおおおおおおおおおおおお」


 次はなぜかリークが叫び声あげて、もはや【スキル:力自慢】を発動させていた。


 武器を握りしめて、力を思う存分発揮する。

 敵はこちらの押す力に圧倒されるも、相手も気合を込める。


「こんのやろおおおおおおおおお」


【超人】【破壊武人】【狂戦士の心】【力自慢】


 力という力のスキルを同時に使用しまくる。

 全身から脱力が激しくなる。

 気力を果てしなく使用している。

 心臓がゆっくりと鼓動している。

 感覚が研ぎ澄まされていく。


 この感覚はアンクレイサーとランクレイサーを製作した時感じた感覚。

 

 もう少し向こうに行けばリークは死ぬ。

 だが一歩手前で戻り。


「終わりだ」


 リークはにこりと微笑む。


 オークハイキングはきょとんとした瞬間。

 体が真っ二つになった。


 オークハイキングは動かなくなった。

 リークはその場にぶっ倒れて動けなくなった。


 そこにルーギャシー国王とカナシーがふわふわとやってきて。


「ブラボー、ブラボー過ぎるぞ、少年、わしでも倒せんぞこいつ」


「ならなんで、倒させるんですか」


「もう少年にしか倒せないから頼んだ。今この国の冒険者の質はとてもレベルが低い、レベルの高い人を発掘するのが、テルハレム王国の王様であるわたくしの役目だ。さぁ、立ち上がれ、約束の100万金貨だ。わしの異次元倉庫からお主の異次元倉庫に送っておいた」


「そんな事も出来るんですね」


「うむ、いやーあの戦いはまさに劇場そのもの、違うか、本物だもんなぎゃははははは」


「相変わらず笑えません」


「じゃあ、わたくしは行くとするか」


「ちょっとまて」


「さらばじゃ」


「僕うごけないんですがああああああああ」


「なーんてな、ぎゃはははははっはあ」


「だから笑えんて言ってるでしょ国王!」


「そうじゃ、わしはしばらく幻想ショップの近くで少年をストーキングするからよろしくな」


「それ以前にあんた国王だろうが、仕事しろ」


「わたくしは人材発掘が仕事で、基本は妻に任せてるのさ、さっきも行ったけど、妻はあのオークハイキングより圧倒的に強いからな、ゴリラなんて言ったらあかんぞ」


「今あなたが言ったんでしょ」


【あんたあああああああああああああああ】


「今のは聞かなかった事にしてくれ」


「奥さんどこまで地獄耳なんですか、ここから城まで結構ありますよ?」


「妻は危ない、ほっとこう、さて、幻想ショップに運ぶとしよう」


 ルーギャシー国王は指パッチンすると馬車が出現した。

 リークは馬車に乗せられ、運ばれていく事に。


「安心しろ、お前の治療は私がするから」


 カナシーはにかりと笑い、いえ笑えませんと突っ込んだ。

 運ばれながら、オークハイキングにダメ元でデバフをかけた。

 すると恐ろしい事にスキルを盗む事が出来た。

 いつもながらにリークはにんまりと不気味に笑った。


 

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