第6話 製作ジャンキー誕生

 冒険者ギルドのその空間そのものが停止してしまったかのようになった。

 そう、皆はフリーズしていたのだ。受付嬢もしかり冒険者達もしかり、ただ1人だけきょとんとしている人物がいる。


 それがリークだ。


 何か問題がありましたか? という顔をしながら辺りを見回す。

 現在冒険者ギルドは素材の山に埋まっています。


「うそでしょおおおおおおお、どんだけ、この数時間で倒して来たのおおおお、リーク君何者おおおおおお」


「はぁはぁ、どういう事だ、これはずるをして出来るレベルじゃねーぞ」

「嘘でしょおおお、私達はリークを認めなきゃいけないようだ」


「認めたくない、あんな13歳くらいのガキををおおお」

「仕方ないだろおお、逆に殺されるぞ最近リークを狙った犯罪者がぼこぼこにされてる、ほぼ再起不能で人生を終えるレベルだ。彼等が一様に言うのはリークにやられただ。しかし皆嘘だというからその発言は通らないのだよな」


「やっぱリークがとっちめたのか」

「そ、それなら認めよう」


 受付嬢が慌てた顔をしながら、こちらを指さす。


「と、とりあえず、分かりましたから、その台に乗せてください少しずつですよ、その台で調べますから、鑑定機能がある台みたいなものです」


「は、はい」


 ぱちぱちぱちという音が聞こえた。

 リークはそちらを見ると、大勢の冒険者達が顔を引きつらせながら拍手喝采していた。

 少し不気味な光景だと思いつつも、リークはてへへと微笑んで見せた。

 

 なぜか冒険者達はにこにこと笑ってくれていたが、なんでだろうと思っていた。

 とりあえずこれから冒険者達にドスの効いた顔で睨まれる事はないのだろうと思った。


 リークは50個ずつ台に乗せては異次元倉庫にしまっていく。

 ざっと全ての素材を調べるのに1時間を要した。

 受付嬢はこちらをじーと見ていた。


「その異次元倉庫ってアーティファクトよね、古代クラスの売れば凄い額になるわよ」


「それが死ぬまで外せない呪いの装備でして」


「ひええええ、それは逆にマイナス額になるわよ」


 きっとカナシーが聞いたら絶叫するだろう。


「おめでとう、今回の収益は200金貨となります。素材はリーク君が持って帰るでいいですね、お店開くんですよね、今度行ってみますよ」


「ぜひ来てください」


「どうやってモンスターを倒したかはあまり聞きませんが、あまり調子に乗らないように頑張ってください」


「それはもちろんです」


 受付嬢から解放されたリークはその足で幻想ショップに向かったのであった。

 その背中を眩しい者でも見るかのように大勢の冒険者達が見ていた。


====幻想ショップ====


 幻想ショップの中の異世界製作所に入ったリークとカナシー。


「何よあの女、呪いのせいで異次元倉庫がマイナス額になるですって?」


「そりゃ呪いですからね、それ以前にどこから見てたのさ、屋根にいたんでしょ」


「そりゃ天井裏に隠れて見ていたのよ」


「忍者ですか」


「忍者ねー忍者よりたちが悪いわ、ふふ」


「さて、カナシーさん素材が異常に集まりました。武具や道具やアイテムを作りましょうか」


「そうね、クッキングタイムね」


「いえ、料理ではありません」


「あなた真面目ちゃんね、真面目ちゃんはもてないわよ」


「導きの板を見て見よっと」


「人の話をきいてえええええ」


 なんか立場逆転した感じを感じつつもリークは導きの板を見た。

 そこにはこう書かれてあった。


【輝きのブローチ:素材=トレントの枝2本、ゴブリンの角2個】

【輝きの腕輪:素材=リザードマンの鱗2個、オーガの角2個】

【輝きのサドンブレスレット:素材=ウルフの毛皮2枚、スライムの核2個】


「どうやらこれを造れという事らしいです」

「ふむ、輝きシリーズはこの世界では強すぎるアクセサリーね」


「そうなんですか?」

「輝きだけでステータスが半分以上も上がる効果よ、さらにあなたのスキルを付与するんだから凄い事に、しかも低コストだしね」


「どれだけ作れるだろうか、全部200個くらいあるから、100個ずつ作れますね」

「これからが大変よ、どうやって作るかじゃなく楽しんで作るかなのよ、アクセサリーは【アクセサリー工房】で製作出来るから、こっちきなさい」


 リークはカナシーに従って、色々な道具が置かれてあるアクセサリー工房に到着した。


「火であぶったり、凍らせたり、固めたり、色々出来るから、まずは体で手取り足取り教えてあげるわ」


「あの感覚気持ち悪いんですけど」


「うるさいわね、ちゃんと教えてあげるのだから、ありがたく思いなさい」


「あれは教えているのではなくて、体に覚えさえているのでは?」


「文句は言わないことよ」


 そう言いながら、リークは体をカナシーに憑依させられた。

 後は体が思うがまま、3種類のアクセサリーをひたすら製作し続けた。

 その結果、出来上がったのは50個ずつのアクセサリーだった。

 

 体がだるく、ぴくぴくと手が痙攣している。

 窓からは太陽の光が覗いており、徹夜明けで製作していたようだ。


「うううう、朝飯を求めているぞおおお」


 そう言いながら、リークは近くの喫茶店に行きがぶがぶ食事にありつき、異世界製作所に戻って来る。


「あなたもタフね、寝ないで仕事をしても平気なんて」


「いや、色々な事が新しくて楽しのさ、残りの50個ずつは自分で製作してみるよ」


「その調子よ」


 リークは体が覚えているという事もあり、アクセサリー製作にはそんなに困らなかった。

  

 自分の力で初めて製作しているという気持ちは不思議と楽しいという気持ちにさせてくれた。


 モンスターの素材でもこうやって製作すれば、色々な形になるのだと勉強になった。

 

「はぁー出来たー」


 現在お昼の時間になっていた。

 リークは思う、どっちかと言うとモンスターを倒すより製作する時間の方がかかるのではないだろうかと。

 

 現在リークは昼食を近くの喫茶店で食べて、すぐに異世界製作所に戻ってきた。

  

【輝きのブローチ】×100個

【輝きの腕輪】×100個

【輝きのサドンブレスレット】×100個。

 

 正々堂々と棚に飾られている。

 凄く良い眺めだと思いつつも。


「ここから先はリークの力次第よ、スキルを付与してみるのよ」


「ああ、凄く楽しみ」


 リークの腹の中はドキドキとハラハラに埋め尽くされている。

 これが成功しないと転売作業の利益は下がってしまう。

 さぁ、リークはスキル付与を発動させた。


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