第4話 破壊から始まる製作
現在リークとカナシーは異世界製作所にいる。
2人は死亡してしまったパーティーメンバーの装備達を破壊しようとしている。
「さて、これが破壊のハンマーじゃ、クラッシャーハンマーと言ってもいいぞ」
「いえ、破壊のハンマーで」
「なんかノリが悪いわね、さてと、私は握れないからリークが握るのだよ」
「了解しました」
リークは破壊のハンマーを握りしめる。
頑丈な鋼鉄の台の上にそれぞれの装備を乗せる。
「おっと危ない、アイテムは破壊してはならんぞ、まぁ劣化してるがね」
「はいさー」
リークは細い腕で破壊のハンマーを握りしめる。
「心に溜まった怒りをぶつけてみろ、破壊のハンマーは答えてくれるぞ、さぁさぁ、早く久しぶりに素材を見たいのじゃ」
リークは怒りを込めた。
今までリークをバカにしてきた人達。
リークが雑魚だとみじんも疑わない人達。
彼等を破壊する気持ちでひたすらハンマーを振った。
《現在リークは破壊継続中》
《現在リークは破壊継続中》
《現在リークは少し疲れた模様》
《最後の止めとばかりに破壊継続中》
《破壊完了》
「謎の実況の声が部屋にこだましたな」
「これは色々とサポートしてくれる異世界製作所の声だ」
「どんな原理か謎だよ」
「さて」
「人の話をきけええええ」
「素材が集まったところで、素材を確かめようと思う、リークも駆け出しの商人ならどんな素材があるか覚えておいた方がいいじゃろう」
「はい、先生」
「ふふ」
カナシーはとても満足の顔でこちらに微笑みかけた。
彼女は素材に触れる事が出来ないので、リークが1つ1つ並べてあげた。
====素材一覧====
【鉄】×10
【鋼鉄】×5
【玉鋼】×3
【銀】×10
【木材】×30
============
「この素材達を組み合わせて作るのが武具じゃ、まぁ道具も作れるがのう、そうじゃそうじゃ、この異世界製作所にはお主が今製作するべきものを教えてくれる板があるのじゃよ、ほほほ、あそこだわね」
リークは言われた方角に向かった。
壁に板が貼られてある。
そこにはこう書かれてあった。
導きの板【リーク殿が作るべき物は:鉄鋼の剣:素材は鉄10、玉鋼3、木材10】
「カナシー、一応作れるみたいだけど、鉄鋼の剣なんて聞いた事ないよー」
「まぁのー別な世界の武器じゃからのう、この異世界製作所ではこの世界に存在しないものを製作できるのじゃ!」
「な、なんと」
「と言う事で作ってみよう、炉までこい、手取り足取り教えてやろう」
リークはその後本当に手取り足取り教えられた。
つまり、カナシーがリークの体に憑依したのだ。
魂がリークの体に入る感覚はとてつもなく気持ちの悪いものだった。
リークは絶叫を上げたい気持ちをぐっと堪えた。
「ほれ、出来たぞ、次からは自分で作れるじゃろうよ」
リークの体には確かに剣の作り方が入っていた。
「素材達はこのマテリアル倉庫に入れる事をお勧めするよ」
「このばかでかい衣装棚みたいな奴ですよね」
「それは異次元倉庫に繋がっておる、ぶっこめ」
「は、はい」
リークは素材をマテリアル倉庫にぶち込むと。
「さて、道具も破壊した事だし、後はアイテムじゃな、回復ポーションと魔力ポーションしかないのは悲しが、これを超絶凄いものにして店に売り出すぞ」
「数は30個ずつですね、あのパーティーメンバーさん達凄い金持ちだったんですね」
既に元パーティーメンバーの名前を忘れているリークであった。
そもそも最初から覚えていなかった気がするとリークは気付いた。
「そこの錬金術の盤で調合じゃぞ、素材は、あああああああああああああああああ、素材を忘れておったわい」
「カナシーさんお年でしょうか」
「いやまて、×方式を使おう」
「なんですかそれは」
「回復ポーション×回復ポーションを調合する事で出来上がるのが上級回復ポーションじゃ」
「聞いたことありませんよ、上級はありますが、すごい調合しないといけないと聞きました」
「錬金術の盤に乗っている鍋なら可能なのじゃよ、はよせい」
「はいはい」
《リークは現在鍋をぐつぐつ煮込んでいる》
《リークは現在鍋をかき回している》
《リークはぐちゃぐちゃになった回復ポーションを見ている》
《次の瞬間上級回復ポーションになった》
《リークはボトルに詰め込んでいる》
《さぁ、完成だ》
「この実況なんとかなりませんか」
「その方が覚えやすいだろう、後は慣れたら意識でシャットダウンじゃ、わしもこの実況には悩まされたものじゃて」
「そ、そうですか、それは辛かったでしょう」
「その同情はいらんわよ」
「ほれ見て見ろ、上級回復ポーションが入ったボトルに上級マークがついておろう」
「これってアイテムにも効果あるんですね、それ以前にそういう仕組みだったんですね、鑑定士がいないと困ると思ってました」
「いや、それはごもっともじゃ、この文字には魔力がこもっておるが、それで光っておる。鑑定士は出来上がる前、つまり素材状態の時に鑑定が使われるし、戦闘の時だってモンスターの強さや、モンスターが何を落とすか鑑定出来るのじゃよ」
「いつか盗みたいスキルです鑑定スキル」
「まぁ誰かかしらおるじゃろう、かたっぱしから盗むんじゃよ」
リークは頭の中でおさらいする。スキル付与するとその装備や道具にはスキルの名前が表示される。それはアイテムも同じで、作ったものを入れ物や何かに入れると、上級とか超級とかという名前がつくようだ。
名前がつかないのはノーマル、つまり回復ポーションというノーマル物体だ。
他にもノーマルはあるだろうが、その見極めはやはり鑑定スキルが欲しいという結論になった。
「まだまだ異世界製作所ではやれる事はあるが、まずはその鉄鋼の剣を使って狩りをしてモンスターから素材とスキルをがっぽがっぽ作戦じゃ、ちなみに、私はお主に憑依した事によって憑りつく事になった。よろしくな、リーク」
「それって僕、カナシーに憑りつかれたんか、それってそれって喜んでいいの?」
「うむ、普通なら悲鳴をあげて逃げる所よ」
「はは、はははは、ぎゃああああああ」
「逃げるなリーク、今すぐ私を外にエスコートするのじゃあああ」
リークは全力疾走で笑いながら悲鳴をあげて店から飛び出た。
鍵を閉めたが、カナシーは追いかける。
半透明の人間が空を浮遊していたものだから。
近くにいた人々は悲鳴を上げて逃げていった。
たちまち街は幽霊出没かと言う事でパニックになった。
「君って他の人にも見えるんだね」
「そりゃそうだろう、だからあの店は買われなかったのじゃ」
カナシーの難しい事情だった。
現在2人は草原村から【闇草の森】に向かっていた。
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