第3話 異世界製作所

 半透明のカナシーさんは椅子にすわってこちらをじっと見ていた。

 それはリークも同じであった。


「しいて言えば、モノづくりが趣味かしらね」


「見た所どこにもモノはないよ?」


 リークが辺りを見回して尋ねる。

 扉が3個あるくらいで何の変哲もない?


「扉が3個? 何の為に?」


「それは私の為の異世界製作所があるからよ」


「そんなすごい部屋がこの世界にあるのか!」


「そうね、条件があるわ」


「なんのだよ」


「あなたがここで私と商売をしてくれるならよ」


「最初からそのつもりだよ」


「大抵の人は私を見たら逃げてしまうもの、でもあなたの突っ込みナイスよ」


「そこ褒められても嬉しくないですよ、そもそも突っ込みじゃなくて疑問ですから」


「さて、条件は飲む?」


「そんなのもちろんさ」


「じゃあ、異世界製作所にご案内させてもらいましょうね」


 そしてリークは踏み出してはいけない所まで踏み出す事になった。

 3つある扉の1つを開いた。

 そこに広がっていたのは、製作所そのものだった。


 武具を造る炉があり、アイテムを造る道具や道具を作る機材がある。

 錬金術なのかポーションを造るようなものまであるし、多種多様で見た事もない製作所へとなっている。


「私はここで日夜、色々な物を作っていたんだけど、今はエアープレイでやってるはこうやってね」


 カナシーは体を動かして剣を造るマネをしていた。

 だがカナシーの両手は武器や道具を掴む事は出来なかった。


「まったく、魂になってしまうと、こんなにも不具合が生じるとはね、とても最悪な気分よ」


「カナシー教えてくれないか、僕に製作所の使い方を、そして、僕は幻想ショップで大金持ちになる!」


「それを待っていたのよ、基本は私の頭の中に詰まってる。あなたの力を教えてくれない、まずはそれからよ、私は何もかも教えたつもりよ、残りの2つの扉はある条件を満たすと開くのよ、私では開けなかったわ」


「ここは一体、なんて凄いお店なんだ!」


「ふふ、私が遥か昔に作っただけよ」


 2人は扉を閉めて、幻想的な製作所の中で話し合った。

 トロールの事や、デバフ魔法の事、スキルを全部盗んでしまう事。

 

「ふむ、まずデバフ魔法はこの世界には存在しない、つまりこの異世界製作所と同じような力、異世界と繋がっていると思われるわね、デバフの効果でスキルを盗むのも、腐らせるのも副次的な効果なのかしらね」


「僕は考えた訳です。この力を使って道具にスキルを付与して売る事が出来ないかと」


「ふむ、それはナイスアイディアね、スキル付与系の装備は名前が表示される。鑑定がなくても問題ないわね」


「それは知りませんでした」


「そんなに落ち込まないでよ、さてと、まずは仕事を始めないと」


「やりますか」


「そうね、やりましょう」


「の前に素材がないわよ」


「あ……」


 リークは大事な事に気付いてしまった。


「死んだパーティーメンバーの装備とか道具とかアイテムとか取ってきます」


「待ってるわ」


 本来だったら家に送られてくる装備、しかしリークは待ちきれず自分から取りに行ってしまったのだ。

 リークは走り出した。もちろん幻想ショップの扉の鍵を閉め忘れないように。


====冒険者ギルド====


 冒険者ギルドの中に入ると、相変わらず大勢の冒険者達がこちらを睨んできた。

 そんな事など無視してリークは受付嬢に挨拶をした。


「いい所に来たわね、そろそろ清掃が終わるわよ装備達のね、取りに行ってくるわね」


 しばらくして受付嬢が戻って来る。そこには人力車があり、その上には沢山の武器と防具と道具とアイテムがあった。


「えーとこれらはあなたの所有物になるから、気を付けて持って帰ってね」


「ありがとうございます」


 そういってリークは人力車を引いて幻想ショップに戻る道、10人のごろつきに襲われたのであった。


「おいてめーその装備よこせ」


「無理です」


「とっちめろおおおお」


 当たり前で、当然的なごろつきの反応に笑いながら、全員にデバフ魔法を発動させる。

 次の瞬間その場にいる10人の動きがゆっくりになってきて。


「ぜいぜい、体がおもてえええ、だるいし、なんか具合が」


「お、おかしい」


「何が起きている」


「す、スキルがねええええ」


「俺ら1つしかスキルに覚醒しなかったのに」


「そ、そんなああ」


 リークはそこらへんに落ちている木の枝を掴み、1人の足をばしっと叩いた。


 バキッと嫌な音を立てて足がおれた。


「う、嘘だあああ、枝で折れるのおおおおおお」


 ごろつきが絶叫を上げていると、他の奴等は逃げようとするが、足が重たいのかあまりにも遅い。


 リークは次から次へと木の枝でバシッ叩き続けた。

 2分後には10人のごろつきの足の骨は粉々に砕けており、ぴくぴくと動けなくなってしまった。


「では失礼しまーす」


 リークは人力車を引いて走り出した。


====スキル一覧====

【威嚇】×5

【恐喝】×5


=============


「あの人達ろくなスキルがないよ、威嚇と恐喝って、どうやら同じスキルだと数字が出るみたいだね、これなら5回付与できるて事かな。あー楽しみだなー」


 リークは幻想ショップに到着すると、大勢の人々の視線など気にせず、扉の鍵を開く。

 こちらを見ている人達はひそひそと。


「あそこの家って幽霊が出る所よね」


「13歳くらいの少年が入っていったぞ」


「信じられないわね」


 こんなひそひそ話はなれっこなリークは人力車に積んである装備をせっせと異世界製作所に運び込んだ。

 なぜ異世界だと言うのかと考えたリーク。

 あれは面積がおかしいという事、扉の向こうには川があるから、そこに製作所がある訳がない。


 だから異世界なのだろう。


「おお、これは凄い装備達だ。少し劣化しておるのう、リークのデバフ魔法のせいじゃな、お前は今後道具にデバフ魔法をかけるなよ、アイテムや道具達がとてつもなく可哀そうじゃぞ」


「そうするよ、カナシーありがとねー」


「ふ、気にするな、さて、制作は破壊から始まる事を知っておるかのう? ふふ」


「なんか話方が変わって、怖いなカナシー」


 カナシーの目はぎらぎらに輝いていた。

 この日よりリークはモンスター(人等)倒してスキルを盗んで装備等に付与して転売するせこすぎる商売を始めて成り上がるのであった。

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