悲劇も喜劇も一歩引いたところから役者を他人事のように眺めているという点で、両者は限りなく近いところに位置しているのでしょう。
そうした当人にとってはある種冷徹ともいえる客観的な視線を、この作者様は悩みの渦中にある当事者でありながら、まっすぐと自分に向けている。
そうした姿勢は私にとり、どこか映画監督や純文学作家のような眼差しを彷彿とさせます。
以前、もう10年以上前になりますが、まだ私がアニメ業界にいた頃にお世話になった演出家さんの一人に、橋本カツヨさんという方がいました。私事で恐縮ですが、少しでも参考になればと思い、今回ばかりはお名前を出させていただきますね。
いすみ様のお母様がそうであるように、彼女のお母様もながらく入院していたのですが、当時はちょうど夏に戦っていそうな映画の制作が佳境にさしかかったところで、納品まえに突然ということがありました。
絶対心中穏やかじゃないだろうに、スタジオに戻ってすぐ机につくや、休みもせずに相変わらず仕事をしていたのですよ。
拝読しながら、なんとなくそんなことをふと思い出したりして、作者さまもここまでなんとか形になさって、さぞ大変だったでしょう、と思う今日この頃です。
ともすれば煽り立てるような悲劇になりかねないところを、なんとか堪え、鑑賞に堪えうる作品としているのは、作者さまの読者への粋な優しさなのではないかなと思います。
読者として、家族への温もりを感じ、心を感じ、偶然の出会いではありますが、拝読出来て良かったと思える瞬間が多々ありました。
執筆、本当にお疲れ様でした◎