第7話 弥生の空
佐祐さんへ
弥生の空は澄んでいるようで、心の穴に正直な節目を感じさせられます。
とうとう、五十二歳になりました。
今日だけ二歳差の日ですが、明日には貴方の方が年上のような気さえします。
ずっと貴方は頼もしかった。
いつも詰まらないことから大切なことまで、煩わせてごめんなさい。
いつでも鮮明に思い出せます。
貴方と出会った二十二歳の四月十二日、三時間目の長椅子は、私をそわそわさせていました。
それから、恋愛、結婚と草を分け入るように進み、今では真白の頃より夷隅の方が長いのです。
二人の間には短いながらも各々の暮らしぶりや家族のあり方があり、価値観が崖崩れになりましたが、貴方を正しいと信じ、そうした意味ではついて来た感じがいたします。
贅沢もさせていただきました。
辛い想い出が呪縛していましたが、今は貴方の愛が詰まっています。
手帳もカメラも要らない想い出は、いつも瑞々しくありたいとジュークボックスが頻回に出すようにしています。
私は今、言わずと知れた同じことで王手を掛けられていますが、もう少し優しいひとになれたら、時折の気まぐれめいたものではなく、落ち着きたいと内心思っています。
世話のかかるところに目を奪われがちですが、樹にもひなにも勿論貴方に対しても一緒に暮らしているのだから、普通に接したいと思っているのですよ。
お祝いとか、欲をいいませんが、本当に皆覚えてくれているのかな。
まあ、敢えて訊きませんが。
今日もお仕事をしてくれて、調停もしてくれて、ありがとうございます。
ビールとお風呂とテレビで休んでね。
静江より
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