3月9日 鉄道の旅(2/2)
2話にまたがるテーマとなってしまったがあと二つの鉄道の旅についてお話を続けさせていただきたい。
(家族史上最大の旅行/札幌→上野『北斗星』)
ある年の年末、経緯は忘れたが家族として今までにない旅行計画が持ち上がった。
「札幌」→「浦安(千葉/東京ディズニーランド)」→「豊橋(愛知県/子供が生まれる前に夫婦で過ごした)」→「伊勢志摩(三重県/鳥羽水族館)」という、今思い返しても家族史上最大の旅行に出かけた。その旅行は〝とびきり楽しもう〟という方針で、『北斗星』を札幌から東京への移動手段に選択した。
個室に家族四人で就寝するために、二つある寝台の一つに妻と幼い次男、もう一つの寝台に長男が寝て、私は持ち込んだ寝袋で床に寝たのを覚えている。ちょっぴり冒険ぽくて、私自身、ワクワクが止まらなかった。そして特に覚えているのは、就寝までの間も、そして起床してからも、小学生だった長男が冬休みの自由研究としてこの北斗星について書くために、車掌さんやスタッフの方々に精力的に、色々と取材をして回ったのに付き合った。皆さんが本当に丁寧に答えてくれたおかげもあって、出来上がった長男の冬休み自由研究は、親から見てもとてもいい出来だったと記憶している。
(同窓会/札幌→大阪『トワイライトエクスプレス)
私の母校(高校)は大阪の吹田市、阪急千里線沿にある。その母校の同窓会が毎回オリンピックの年に合わせて行われていた。その当時、飛行機ではなく寝台特急を選んだ理由は定かではないが、多分、鉄道少年であった血が騒いだのではないか。
今でも鮮明に覚えているのは、北海道内を走行中、内浦湾(北海道民は〝噴火湾〟と呼ぶのが一般的)に沿って走行している間の車窓の景色だ。とにかく夕日が雄大で美しかったのを覚えている。また展望車が連結されていて、夕日が見やすいように、展望車の座席が全部進行方向左側に向いていた。だから椅子に座ってくつろぐ姿勢で海に正対し、長時間夕日を鑑賞することができた。
その後夜になると部屋に閉じこもっているよりも景色や人を観察するのが面白くて通路だったかデッキだったかの椅子に座って過ごしていた。その時の記憶で今でも忘れられないものがある。
年の頃50歳ぐらいの紳士が、ワゴンで車内販売に回ってくる女性を執拗に口説いていたことだ。そのスタンスが面白かった。部屋番号が書かれているでのであろう、メモを渡しながら「あとで訪ねなさい。」とか「君を待っているよ。」とか、その女性が回ってくる度にその紳士は声を掛けるのだが、いちいちキザというか芝居がかっているのことに呆気に取られた(そもそも私の事が全く目に入っていないのか知らぬ他人のいる面前で女性を口説けることに驚いた!)。ただその紳士は短い髭を蓄えてワイシャツにカフスボタンをしているなど、大しておしゃれな男性で、ワゴン販売の女性も確かに長身で美しい女性だった事から、その後どういう展開になるかが気になり夜半にトイレに行く際にはついつい耳を
翌朝目を覚ますとトワイライトエクスプレスは時々姿を見せる日本海に沿ってひたすら南へと疾走していた。私はずっと窓の外を眺めているわけにもいかず持参した本を読み始めた。とにかくサクサク本が読めたことと同時に、時間がなかなか進まない、言い換えるとなかなか目的地の大阪につかないという感覚に襲われた事を覚えている。そして乗客もどんどん少なくなる中、段々とハイになっていった。車中を歩き回ったり、ウォークマンを大音量で聞いたりした。人間病気でもない限り、閉鎖された空間にいられる期間は限られているのではないか。
大阪駅に到着した際には〝やっと到着した〟という安堵感と、始発駅から終着駅まで乗り切ったという達成感に私は包まれた。
現在、現役で日々業務に追われる私には電車で遠くに行く旅行の予定はない。しかし、定年になって時間ができたら、真っ先に電車での移動を組み込んだ旅行を計画したいと考えている。
電車の旅行はやはりいい。
おわり
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