第12話 異世界研修⑥

 バスタイムを満喫した少女達は、湯気に包まれた裸身で脱衣所へ戻って来た。いつもならパジャマを着る場面だが、今日は晩餐会に備えて普段着へ袖を通す。後は濡れた髪を乾かせば準備完了だ。


「ふんふんふーん♪」


 メルは備え付けの魔導小型送風機マジック・ドライヤーを片手に持ち、鼻歌交じりに桃色の長髪をフワリと吹き上げる。花エキスたっぷりのシャンプーが使われているため、フローラルな香りが脱衣所に広がった。魔道具の順番待ちとなったココノアは近くにあった椅子へ腰を下ろす。


「それ、地球のドライヤーと見た目そっくりよね。使われてる技術は全然違うのに」


「使い勝手の良い形を追求していくと、同じものに行き着くのかもしれません。異世界と言っても、地球との共通点が多いですし」


 握り手部分から魔力を流し込む事で、温風を得られる小さな送風機――それはココノアが言及した通り、日本の家電量販店に並ぶヘアドライヤーとよく似ていた。

 電熱線を使う代わりに火と風の精を利用する仕組みとなっており、さほど複雑な構造ではない。そのため異世界においても広く流通済みだ。もしこれが存在しなければ、毛の多い獣人族は乾燥だけで数時間を費やす羽目になったかもしれない。


「よし、これでバッチリです! ココノアちゃん、次どうぞ♪」


「ほいほい」


 ココノアは送風機を受け取り、髪を乾かし始めた。ベージュに染まった毛先が軽やかに宙を舞う様子を眺めていたメルは、笑顔と拍手でココノアの新しいヘアスタイルを褒め称える。


「襟足のところがふわっとしてて、いつもより断然可愛いですよ!」


「惚れ直したでしょ? そうだ、せっかくの異世界なんだし、メルも普段と違う髪型にしてみたらいいんじゃない。もう会社だって関係ないんだからさ」


「えへへ、実はリアルじゃ恥ずかしくて出来なかった髪型にチェレンジしてみようと思ってます。明日にでもお披露目しますね♪」


「へぇ、それじゃ楽しみにしとくわ」


 そんな会話を交わした後、2人は仲良く脱衣所を後にした。向かう先は晩餐会が行われる、2階の大広間だ。扉自体は階段を上がってすぐの所にあるものの、普段使われている様子はなかった。まさに開かずの扉である。


――ガチャリ――


 荘厳な雰囲気が漂う大扉を恐る恐る開けた2人は、思っていた以上に広々とした空間に息を呑んだ。壁紙には草花を象った美しい模様が描かれており、床に敷かれたワインレッドの絨毯も品があった。

 天井から吊り下げられた銀色のシャンデリアは巨大で、圧倒的な存在感を放つ。しかも、細部にまで緻密な装飾が施されている。一流の職人技を感じさせた。


「この部屋だけグレードおかしくない……? 迂闊うかつに触るのも怖いんだけど」


「絨毯も信じられないほどフカフカで、新感覚な踏み心地ですもんね……」


 ゆっくりと室内へ進んだ2人は、部屋の中央に鎮座する角張った巨大テーブル近くまでやってきた。少女達が間借りしている個室も高級ホテル並の内装だったが、晩餐会用の部屋はさらに豪華である。どんな用途で使われているのか想像もつかない。


「こんなに広い別室があるなら、書斎じゃなくてこっちで講義をしてくれても良かったのに。でも広すぎて逆に落ち着かないわね」


「ククッ、聞こえているぞココノア。ここは特別な催しでしか使わない部屋でな。俺が入るのも、数年前に現エリクシル国王をもてなした時以来だ」


 いつの間にかココノア達の背後には館の主が立っていた。どうやら魔法で転移して来たようだ。手慣れた様子でセロがシャンデリアへ魔力を注ぎ込むと、部屋中に煌びやかな輝きが迸った。


「これでいいだろう。リエーレ、料理を運び込んでくれ」


「かしこまりました」


 セロの言葉に応じるが如く、廊下から姿を現すメイド服姿のダークエルフ。彼女の隣には前菜と思しき料理を乗せた車輪付きの配膳台が置かれていた。食欲をそそる良い匂いに、メルの鼻がピクピクと反応する。


「それではお食事を並べて参ります。椅子に掛けてお待ちください」


 リエーレの優しい声が、晩餐会の始まりを告げた。



§



 窓から見える夕日と闇夜のコントラストを背景に、少女達はリエーレの手作り料理を次々に口へ運ぶ。いつもとは趣向が異なるフルコース式であったが、館で過ごした日々のおかげで、ナイフとフォークを使った食事にも随分と慣れたものだ。

 晩餐会がスタートしてしばらくの間、セロと少女達による歓談が続いた。特にメルはNeCOでのチャットを彷彿とさせる勢いで喋るため、話題が尽きない。栄養補給という単語が似合うセロの淡白な食事スタイルとは大違いである。だが騒がしいと感じているような表情ではなかった。むしろ若い世代との交流を楽しむ年長者のような、穏やかな笑みを浮かべている。

 賑やかな晩餐会が終わりに差し掛かかった頃、セロは冒険者ギルド――旅人にとって生きていくのに欠かせない施設の話題を切り出した。2人が館を出ても不自由しないようにと気遣ったのだろう。


「世界を巡りたいなら、まずは冒険者組合ギルドを訪ねると良い。冒険者登録を済ませれば生活に困る事もないはずだ」


「確かに路銀の確保は最重要課題かも。メルの食費だって馬鹿にならないし」


「てへへ」


 はにかんで笑う猫耳少女の口元にはサラダのドレッシングが付着していた。身長140センチメートルに満たないメルだが、1回に食べる量ではセロやココノアを遥かに上回る。人間族の成人男性換算では5人分にも及ぶ計算だ。パーティーのエンゲル係数が跳ね上がるのは想像に難くない。


「今までリエーレのおかげで何とかなってたけど、これからはお金稼ぎもしっかり考えないと。特にメルはいっぱい食べるんだから、しっかり働いてよね?」


「はい、善処します……」


「それにしても、あれだけ食べてて全然太らないのは不思議だわ。どういう体の構造してるのよ、獣人族って」


 ココノアはジト目でメルの腹部を見つめる。草原で再会した頃から彼女の体型は全く変わっていない。獣人族は発達した筋肉を有する代わりに、それを維持するためのエネルギー消費も激しいと講義で教わったが、とてもそれだけで説明できるものではないとココノアは感じていた。

 しっかり者の友人が食費の心配をする傍ら、メルは冒険者ギルドという単語に強い関心を抱く。NeCOにおいてプレイヤーキャラクター達も冒険者と呼ばれる存在だったからだ。どんな仕事があるのか興味が出てきた彼女は、身近な経験者に尋ねてみる事にした。


「リエーレさんは元冒険者さんでしたよね。少しお話を聞かせて貰ってもいいですか?」


「ええ、構いません。ただ、私が冒険者だったのは今よりずっと昔の事です。現状と違う点に関してはご容赦ください」


 頷いて返事するリエーレ。彼女は空になった皿を回収する作業の途中だったが、メルの要望に応えてセロの隣にあった椅子へ腰かけた。


「主からもお聞きになられたかと思いますが、ギルドへ寄せられた依頼を請け負って解決し、その対価で生活する者を総じて冒険者と呼びます。ただ、依頼と言っても毎回決まった内容があるわけではなく、雑務から危険な任務まで種類は様々でした」


「セロからもその辺の説明は受けた覚えがあるわ。難易度が高いと稼ぎが良くなるんだっけ?」


「そうですね。例えば薬草の採取依頼や農作物の収穫手伝いなどは危険が少ない反面、報酬も低めに設定されます。危険な魔物の討伐や指名手配犯の捜索は達成報酬が魅力ではありましたが、それなりに危険を伴いました」


「話を聞く限りだと何でも屋って感じね。一応、公的な組織だって教えて貰ったから、公務員みたいなのを想像してたけど」


 ココノアは学んだ内容を振り返った。古い書物によると、冒険者組合は人類の脅威に対抗するべく有志が設立した互助組織が発展した団体のようだ。単にギルドと呼称しても意味が通じる程度には浸透しており、今では欠かせない生活インフラの1つとして機能している。

 『冒険者』とはこのギルドから仕事を斡旋して貰い、生計を立てる者達を指した。ただし、誰でも冒険者になれるわけではない。困難に立ち向かう気概を有する事は勿論、自力で凶暴な獣や魔物を倒せる実力も必要とされる。そこでギルドは冒険者たる資質を持つ者に免許証――冒険者登録証を発行し、その能力を公的に証明した。登録証があれば国に関係なく、冒険者としての活動が可能となる。


「冒険者の登録をすれば身分証明書にもなるって聞いたし、まずは冒険者ギルドを目的地にしようかな。一番近い支部ってどこにあるの?」


「この森を北に抜け、さらに街道を北上した先に城塞都市トルンデインがある。あの街なら、そこそこ大きなギルド支部があったはずだ」


「北にあるトルンデインって街ね、分かったわ。メルもそれでいい?」


「はいっ!」


 少女達はタイニーキャットに異世界を救って欲しいと言われた日の記憶を忘れていなかった。しかし何をどうすれば救う事ができるのか、いや、そもそも何からこの世界を救うのか、皆目見当もつかない。だからこそ、まずはこの世界を知るところから始める必要がある。冒険者になるという選択は、その足掛かりにもなるはずだ。

 一方、セロの顔色はあまりかんばしくない。領主である彼には王国内の情報が絶え間なく入ってくるため、近隣諸国の動向も隈なく把握済みだった。教え子の旅立ちを祝う気持ちはありつつも、懸念事項について注意を促す。


「……お前たちの旅路に水を差すつもりはないが、2点だけ伝えておく。隣国のデクシア帝国と近いトルンデイン領では、最近キナ臭い動きがあるようだ。国家間のいさかいに巻き込まれないよう、慎重に動いた方がいいぞ」


「まさか、戦争が起こるってこと?」


「いや、そこまで断言できるほどの決定的な根拠は何もない。だが、帝国が見境なく領地拡大政策を進めているのも事実だ。警戒するに越したことはないだろう。そしてもう1つはメル、お前の治癒魔法についてだ」


「えっ、私ですか!?」


 唐突に名前を出されたメルは驚いて、桃色の猫耳と尻尾を真上にピンと伸ばした。魔法の研究がライフワークであるセロはNeCOの回復魔法にも心を惹かれ、少女達の協力を得て様々な検証実験を行っている。その結果、術式を解明するには至らなかったものの、治癒魔法としての性質はある程度把握できたようだ。検証結果を踏まえた彼のコメントは、メルにとって予想外の内容だった。


「あれは無暗むやみに使わない方が良い。アイリス聖教から異端者と見做みなされる可能性がある」


「異端者……?」


 聞き慣れない言葉を耳にして、メルは頭上に疑問符を浮かべる。アイリス聖教とは"創世の女神アイリス"を信仰する教団だ。北方の海を越えた先にある島嶼国とうしょこくには、本拠地の教皇庁を有するアイリス聖教国がある。

 ケガや病気の際、癒しの術による治癒を施して貰える聖教の教会は、人々の生活になくてはならない存在だった。エリクシル王国内にも教会が点在しており、旅に出れば必ず目にする事になる。治療施設という性質上、冒険者との関わりも深い。

 だがセロが講義で教えたこれらの知識は、あくまで一般教養に留まる内容だ。アイリス聖教には知られざる危険な側面がある。それを語るべく、セロはさらに言葉を続けた。


「アイリス聖教が扱う"癒しの術"は女神アイリスの加護を得た者、つまり信徒にしか使えない制約があるという話は前にしたな? それが関係しているらしく、奴らは信徒以外が治癒魔法を使う事を女神への冒涜として硬く禁じているのだ。お前の魔法を目の当たりにすれば、すかさず異端者として糾弾するだろう」


「えぇ……それはなんというか、困りますね……」


 メルは眉を八の字にして顔をしかめる。お盆とハロウィンとクリスマスが混在する宗教文化の坩堝るつぼ――日本で育ってきた彼女にとって、アイリス聖教の考えは理解しがたいものだった。他者を救うための回復魔法が神の名のもとに異端扱いされるとは、思いもしなかったはずである。

 そもそもNeCOにおける魔法の成り立ちはかなり大雑把だ。炎・水・風・土・聖・闇の6属性を司る精霊のいずれかに会い、課された試練を乗り越えれば対応する属性魔法をスキルとして習得できる程度の扱いしかない。メルが操る回復魔法は聖属性の精霊から授けられたものだが、この設定を考慮しても異世界の女神をおとしめる意図が無いのは明らかだろう。

 なお、ココノアが使う魔法スキルは少し特殊で、属性という概念を持たない故に精霊とは無関係であった。そのためゲーム中においては"新生魔法"と呼ばれており、この異世界でも原理が一切説明できない不可思議な術式となっている。それでも特に問題視されず、回復魔法だけが槍玉に挙げられるのは、アイリス聖教の偏った思想が原因だ。


「……お気を付けください。聖教はとても危険な組織です。彼らは仲間であった者でも規則を破れば異端者として蔑む上、罪を認めるまで酷い拷問に掛ける事も珍しくありません」


 おもむろに口を開くリエーレ。その表情はどこか悲しげで、辛い記憶を思い出しているかのようだった。何か思い至る内容があったのか、セロは黙したまま瞼を閉じて、会話の続きを彼女に任せる。


「少しだけ、聖教に関するお話をしたく存じます。かつて私は魔物討伐で大怪我を負った事がありました。回復薬ポーションでも治せない深い傷です。ですがその時、近くを通り掛かったアイリス聖教の聖職者に助けられ、一命を取り留めることができました」


「彼ってことは、男の人だったんですか?」


「ええ、命の恩人でもある彼……ヒースは人間族の青年でした。誰かのために力を尽くすのは当たり前だと、必死に癒しの術を施してくれた彼の顔は今でもよく覚えています」


 元筆頭冒険者の口から語られたのは、彼女の命を救った1人の聖職者にまつわる過去だった。最初の段階では心温まるエピソードに思えたものの、話が進むにつれ聖教の異常性が浮き彫りとなっていく。


 「しかし……私を救うためとはいえ、戒律に背いて教会外で癒やしの術を使った事で、ヒースは聖教上層部から目を付けられました。そして異端者を罰するための裁判に掛けられたのです」


「何よそれ……!? 人助けしたのに罪に問われるなんて、理不尽にも程があるでしょ!」


「私も同じ意見です。しかし、女神アイリスの加護を受けた教会以外で癒やしの術を扱ってはならないという規則は、聖教において絶対の掟……彼は弁明を聞き入れて貰えなかったどころか、酷い拷問を受けました」


 リエーレの口から裁判の詳細までは語られなかった。しかし彼女の暗い表情を見れば、その凄惨な顛末は察する事ができる。少女達は固唾を呑んで続きに耳を傾けた。


「苦痛の日々によって体も心も衰弱したヒースは、廃人同然の状態になってしまいました。それを知った私は聖教国へ乗り込み、辛うじて彼を救出したのですが……聖教国の最大戦力、聖アイリス騎士団から追われる身になり、逃避行の日々を余儀なくされたのです」


「たった1人を処罰するために、そこまでするなんて……常軌を逸してるとしか言い様がないわね」


「はい、私も騎士団が派遣されるとは思ってもいませんでした。恐らく、ヒースの死をもって癒しの術を秘匿するのが目的だったのでしょう。追手から逃亡する日々にも限界が訪れ、私達は逃げ場のない断崖まで追い詰められました。ここで死ぬのなら、せめて彼が受けた仕打ちの分だけでも報いを受けさせる……そう覚悟を決めた矢先、さる高貴な魔術師の方に助けていただき、奇跡的に生き延びる事が出来たのです」


「「それって、まさか……!」」


 ココノアとメルが揃って館の主へ視線を向ける。少女達の予想通り、リエーレを救った魔術師はセロ本人だったらしく、彼は気恥ずかしそうに顔を背けた。


「……別に英雄を気取りたかったわけではないぞ? ただ、封印が解け始めた火竜を倒すのに優秀な前衛が必要だったものでな」


「ふふっ、あの日の事は今でも感謝しております。ヒースの最期を穏やかに看取れる日が来るなんて、思ってもいませんでしたから」


「看取ったって……ヒースさんはもう亡くなられたんですか……?」


「人間族と亜人ではが大きく違います。でも、彼と過ごした日々は、とても幸せでしたよ。後悔なんてありません」


 儚げな微笑と共に、リエーレは胸元へ両手を添える。そしてセロに向き直るなり、深く一礼した。一挙一動が感謝の気持ちを示すかのような美しい姿勢だ。


「私達に時間を与えていただいた事、改めてお礼申し上げます。御恩をお返しできるように、これからも誠心誠意お仕え致します」


「まったく、律儀な娘だ。火竜討伐を果たした後は、自由に生きていいと言ったはずなのだが……いや、話が随分と逸れたな。この件はここで終わりにするぞ」


 セロは自分達の過去に関する話題を強引に切り上げると、再びメルへ視線を移した。


「ともかく、アイリス聖教とは関わらない方が身のためだ。余計な嫌疑を持たれないためにも、奴らの前で治癒魔法を見せびらかすような真似だけは止めておけ」


「そうね。面倒ごとに巻き込まれたくはないし、一応気を付けておくわ。メル、前に良くやってた辻ヒールの連射は禁止よ?」


「えぇっ!? 辻ヒールはヒーラーの醍醐味なのに……!!」


 心底残念そうに嘆くメル。彼女が口にした"辻ヒール"とは、『辻斬り』と『ヒール』を組み合わせたオンラインゲーム用語だ。ダメージを受けて回復中の人や戦闘に苦戦している人を見かけた時に、回復魔法をかけて応援する行為を指す。支援して貰った方はもちろん、やった方も気分が良くなるヒーラージョブ特有のコミュニケーション手段である。

 NeCOを嗜んでいたメルも例に漏れず、辻ヒールで人助けするのを趣味とする1人だった。親切心に加え、誰かに必要とされたい気持ちが一際ひときわ強い彼女にとって、辻ヒール禁止は中々に辛い。果たして我慢できるだろうかと、腕を組んで唸り始めた。


「……さて、そろそろ頃合いですね。甘味を用意しておりますので、どうぞご賞味ください」


「あら、このお皿は!!」


 思わぬご褒美の登場に、猫耳少女の表情は一変する。リエーレが食後のデザートを用意してくれたのだ。彩り豊かな果物付きのパンケーキを見れば、些細な悩みなど一気に吹き飛ぶ。


「ココノアちゃん、見てくださいこれ! すごく美味しそうなパンケーキですよ! ハチミツもたっぷりで、軽く3枚はいけちゃいそうです♪」


「えっ、まだそんなに入るの? うちは限界が近いってのに……どんな胃袋してるのよ」


「甘いものは別腹っていうじゃないですか! でもお腹いっぱいなら、無理は禁物ですね! ココノアちゃんの分が余ると勿体ないので、私が貰っちゃいます!」


「ま、待ちなさいってば! 無理なんて言ってないでしょうが! ちょっとくらいは食べるし!!」


 微笑ましいやり取りが繰り広げられる壮行そうこうの宴。その主役である愛らしい少女達を眺めながら、館の主は「こういう食事も、たまには悪くは無いものだな」と独りごちた。

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