傍若無人な幼馴染みと再会したら才色兼美な美少女になっていた件〜きっと俺のことなんか忘れてるだろうし、振り回されたくないので距離を置きたいのになぜかめちゃくちゃ絡まれるんですけど!?〜
第2話 才色兼美な幼馴染みの好感度が高い!!
第2話 才色兼美な幼馴染みの好感度が高い!!
新条茜。
幼馴染みであり今、俺の関わりたくない人物No.1の女。
傍若無人で猪突猛進。面倒事を引き起こし、巻き込み、振り回す。
こいつに関わると碌な目に遭わないことは身をもって知ってる。
しかし、この学園のみんなはそう思っていないようだった。
話を聞くに、絵に描いたような優等生……らしい。
万人が認める美形であり、成績は学年次席。身体能力もずば抜けて高く、体育の授業ではエース並の活躍を見せ、どの運動部からもいまだに勧誘されている。
碧嶺学園の副生徒会長も務めており、誰もが認める才色兼美。
碧嶺学園5大美女の一人でトップクラスの人気を誇るとのこと。
その天真爛漫な性格は親しみやすく、学園内の男子は一度は振り回されたいそうだ。
それを聞いた時は『て、て、天真爛漫!? こいつら意味わかって言ってるのか!?』と本気で思った。
まぁ、容姿は認めたくないが……認めたくないが! 可愛いと思う。幼稚園の頃もめちゃくちゃモテてたしな。身体能力も高かったし、頭もよかったのは意外だったが。
それでもこんなに人気者だったとは思わなかった。
「いつき!!」
放課後、帰ろうとしたところを茜に呼び止められてしまう。
「……なんだ?」
「えっと、その……」
そっちから話しかけたくせに何故か急にあたふたし始める。
「あ、アンタは転校生でこの学校に来てばかりだし? 右も左も分からないだろうし? 私が直々に案内ー」
「あっ、結構です」
「なんでよ!?」
バッサリ断られたのがショックだったのかやけに食い気味で叫ばれた。
だってめんどくさいし……お前と居るのが。
「わ、私結構忙しいからこんな機会滅多にないわよ!?」
茜の襟につけている生徒会の証である金色の菊の花を模したバッチがキラリと光る。
「いや、忙しいのに案内して貰うのは悪いし……それに今日は疲れたから学校を回るのは明日にしようかと思ってたところなんだ」
このあと家で手紙を書くとか色々やらなきゃならないことがたくさんあるんだ。
だからさっさと帰らせてください……
「じゃあ明日の放課後は!? 無理なら明後日、明明後日の放課後も時間あるけど!?」
いや、お前忙しいんじゃなかったんかい。
「実は明日あたりに宮田さんに学校を案内を頼もうと思ってたんだ」
宮田さんとは休み時間中に学校の案内を申し出てくれた女の子だ。明るくて話しかけやすい子だったので案内してもらおうかなと思っていた。
こう言えば流石にこいつも引き下がるだろう。
「という訳だから、じゃあな」
「ちょ、ちょっと!」
茜はあいさつをして帰ろうとする俺の右手を慌てながら掴んだ。
「……わ、私が……」
「?」
「私がいるじゃない!!」
「え? いや–」
「私が! いるじゃない!!」
「えぇ……」
怖い怖い。なんでこんな食いぎみなんだよこの人。
「わ、私……ちゃんと案内するから……ちゃんと分かるように頑張るからッ……! だから私でいいじゃない!!」
何? なんなの? なんでそんなに必死なんだよ。
俺の手を離そうとしない茜が涙目になって大きな声で叫ぶためか、周りの生徒達がこちらを見ている。
く、こいつ……見てくれだけはいいから目立ってしょうがない。
まずいな、このままだと間違いなくあらぬ誤解を受けてしまう。
「……つまりだ。お前の提案を断ると言う選択肢は」
「ない」
「後日、他の人に案内してもらうという選択肢も」
「ない!!」
こんなんもう一択やんけ。
「それじゃあ、今からお願いします……」
さっさと終わらせて帰えることにした。
「ほ、ほんと!? しょ、しょうがないわねぇ〜ほんと。忙しいんだけど? お願いされたら? 断るわけにはいかないしぃ? えへへ……」
う、うわぁ。うぜぇ〜
涙は引っ込んだのか、ニヤニヤしながら俺を見てくる。
……やっぱ断るべきだったな。
その後、学食、図書室、体育館、園庭、テラスなど一通り茜に説明してもらいながら学校内を周った。
「今日はありがとう。おかげでこの学校のことよく知れた」
素直に礼を言ったが、何故か茜は渋い顔をした。
「……思ったんだけどさ、あんた私の名前呼んでなくない?」
「え? そうだっけ?」
「そうよ!! 『なぁ』とか『おい』とかから始まって主語がないのよ! 主語が!」
「わかった。わかった…… 新条今日はありがとう。おかげでこの学校のことよく知れた」
「……そこは茜って呼びなさいよ!?」
「いや、名前呼びはちょっと……」
「なんでよ!?」
はは。だって、名前で呼び合ったら仲がいいみたいだろ? と思ったけど俺は必死に口を閉じた。
なんだか、面倒なことになりそうだったから。
それにしても、茜への好感度が高い気がする……だとしたら何で?
いや、そんなことはいいか。それより今日はここでお開きにさせてくれ。
そう思いながら俺は「じゃあ」と言って手を振り茜から離れようとした。
「え! 待ってよ! も、もうちょっと話そうよ! えと、そうだ! よかったら近くでお茶しない? 私が奢るから!! ね? いいでしょ!?」
いや、ナンパか何かですか。
茜は俺の制服の袖を掴み、ぐいぐいと引っ張ってくる。
「あとあとロインも交換しようよ!!」
だから、なんでこんなに好感度が高いんだ!?
「……交換しないし、このまま家に直行だ」
「え? あ、アンタの家? ま、まぁ……ゆっくりできるしいいけど」
そんな爆弾発言を満更でもない様子で言いやがった。
「ちょっと待て、なんでついて来る前提なんだ!? ここでお開きって意味で言ったんだよ! ていうか、男の家に上がるって危機感というか、警戒心はどうなってんだ!?」
まじで好感度バグってないか!?
「わ、私だって、なんとも思ってない奴の家になんか上がらないわよ! それに–」
茜は言葉を続けようとしてはっと我に帰ったのかしばし黙り込んだ。
「い、いいから鞄とってくる間ここで待っといて! 私を置いて帰ったらチョップよ! チョップ!」
そう言いながら鞄を取りに行った。
「……何がチョップだよ」
走って行く茜の姿を見てため息をついた。
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