第45話 阿久聖は見た! 裏で関わっていたのは貴様か!
「フォグブルーかッ!」
俺はようやく
セルリアンたちは俺の膨大過ぎる
魔人化すれば、状況が不利に傾くことは明らかなはずだ。
何故、戦況がひっくり返ったにもかかわらずセルリアンが退却しなかったか?
それは背後に強大な存在――
それだけ絶対的な存在なのだろう。
目の前に佇むフォグブルーが人懐っこそうな笑みを浮かべて話し掛けてきた。
「やぁ、阿久聖君。結局は魔人になってしまったのか。残念だよ」
「そうしなきゃ生き延びられなかったからな」
「魔人は
「よく言うぜ。魔人にならなくても
前に会った時よりフレンドリーな感じじゃねーか。
つってもその裏に透けて見える悪意が半端ないけどな。
これがこいつの
フォグブルーは俺と話しながらセルリアンを縛めている十字架に近づくと、そっと手を添える。一瞬、
その十字架はガラスが割れるような音を残して、一瞬にして砕け散ってしまった。
そのために必要な力は一体どれ程の物なのだろうか?
自由を取り戻したセルリアンは
「これまでか……阿久聖、一時撤退だ……」
ダメージを受けたスカーレットが俺に向かって撤退を告げてくる。
その声には無念と絶望の色が
改めて相対してみて分かったが、フォグブルーから感じる霊的エネルギーの底が見えない。
俺はこんな相手に勝てるのか?
俺の
しかし。
果たしてそれが
とは言え魔人に成り立てである俺には、戦闘経験が圧倒的に不足しているであろうことは想像に
問題は勝てるかどうか。
いや、それも大事だが、何よりも大切なことがある。
セピアを護ることだ。
俺が魔人になった理由の大部分がセピアの身の安全を考えてのことだ。
ここで
「スカーレット、悪いが
俺の言葉をただの大言壮語だと思ったのだろう。セルリアンがそれを笑い飛ばす。
「せいぜい
身体機能が
瞬く間にフォグブルーの元へ到達したのだ。
俺は黒刀を大きく振りかぶると、大上段から斬りつけた。
フォグブルーは全く動く素振りを見せない。
余裕の笑みを浮かべたまま、ただ立っているだけだ。
黒刀がフォグブルーに届かんとしたその時、澄んだ甲高い音が響き渡る。
俺は構わず続けざまに右からそして左から斬撃を飛ばすが、どの攻撃も同じように阻まれてしまった。
やはりかなり強力な防御フィールドが展開されているようだ。
「チッ……阿久聖!
俺が
それでも助言してくれる辺り頼りになる
スカーレットが言ったことは過去にセピアやルージュにも言われたことだ。
俺は一旦、フォグブルーから離れると思考の海に
やはり
後は俺の
俺は力の使い方に慣れていないだけだ。
俺に関わってくれた天使や
それに魔人化により、俺の精神が
何より
スカーレットの言葉の通り、俺は全神経を集中させ、
「セルリアン。そこで
「
手負いのスカーレットから滅ぼすつもりか?
俺は
思い出せ。
俺は力を使った戦い方を今までも見てきたはずだ。
流れ込んだ知識を貪れ。
銀河を覆い尽くす程の力を操る
体内に
空へと舞いあがり、スカーレットの方へ向かうセルリアン。
行かせるものかよッ!
俺は対峙していたフォグブルーを無視してセルリアンへ向かって飛び掛かった。
「何ッ!?」
完全に油断していたのか、セルリアンから驚愕の声が漏れる。
それを見たフォグブルーも慌てて俺に向かい来る。
あっけなく片足を両断されたセルリアンから、どこか混乱する雰囲気が伝わってくる。まさか自分が攻撃されるとは思っていなかったのだろう。動揺を隠し切れないその動きがやけに
俺の背後からはフォグブルーが光の奔流を放ちながら、どんどん距離を詰めてきている。しかしセルリアンを巻き込むのを恐れてか、その攻撃にそれ程の威力は感じられない。
空中を蹴って駆け上がり、セルリアンの目の前へ立ちはだかる。
俺は高速で動いているはずのセルリアンの動きを捕捉すると、黒刀を叩きつけるように振り下ろす。斜め右上から斬り下ろし、返す刀で右手を両断する。
「ぐがあああ! くそッ! くそッ!」
セルリアンは何とか一方的にやられる状況を打破しようとしたのか、
狙いは俺の顔面かッ!
えげつねぇ!
だが、そんな大振り当たるものかよッ!
半身になってかわすと、すかさず体勢を立て直して刀を振りかぶる。
俺から逃げようとしたのか、スカーレットのところへ行こうとしたのかはわからないが、背後を見せたところをばっさりと斬って捨てる。
セルリアンの背中に輝く白い翼が何枚も無残に舞い散った。
更に追撃をかけたいところだったのだが、そうは
黒刀を振り抜いた俺の左脇腹に
放ったのは――いつの間にか接近していたフォグブルー。
「グガッ……」
あまりの衝撃に息ができない。
体が崩壊しそうなほどの激痛に俺の体がくの字に曲がる。
歯を食いしばって痛みに耐える俺の目の前に更なる一撃が迫る。
【
俺は軽々と弾き飛ばされ、大地へ叩きつけられる。
あまりの衝撃でクレーターと化す地表。
拳を喰らった俺の胸部が黒い塵に変わっていく。
攻撃を止める気などさらさらないらしい。
フォグブルーの手の平からは次々と
降り注ぐ光弾は全てが高密度で大質量の霊的エネルギーの塊。
それは最早、
しばしの間、轟音と圧倒的な光量のみが辺りを支配した。
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