第44話 テメーは絶対に許さない! 絶対にだ!
俺のすぐ
彼女は俺の姿を認めると、近くへ寄ってくる。
その成りを見ると、いつもの黒スーツが結構ボロボロになっている。
まだ余裕はあるようだが、ダメージも受けているみたいだ。
スカーレットを追ってセルリアンも飛んでくるが、俺の存在に気付いたようで一定の距離を取って止まる。こちらの様子を窺っているようだ。
「
「やっぱり死んでないかな?」
「恐らくな。消滅したとは思えん。残念だが逃げられたと考えるのが妥当だろうさ」
天使にボコられた状態で弱っている内に滅ぼしておきたかった。
「逃げたとすれば
「追えるかな?」
「手負いだから追えるかも知れんが、あそこあそこで厄介なところだ」
「どんな世界なんだ?」
「
ふぅん……。
謎の力か。神々の力が及ばないのか?
いや、一応あいつも鬼たちの神だ。
その世界で正体不明の力を行使できたって不思議じゃない。
「そうか。まぁ行き方も分からないしな……」
今の俺は生まれたばかりの右も左もわからないような状態だ。
ならば、今やれることをするべきだ。
俺はジッとこちらを窺っているセルリアンの方を向いて言い放つ。
「
「ふん。魔人になりたての小僧が……急に力を得て気が大きくなっているようだな」
「言ってろ。俺は慎重な性格なんでな。曲がりなりにも上位天使のお前をナメるような真似はしない」
「そうか……そこらの天使と一緒にせんことだ。安心しろ。速やかに
セルリアンはそう言うや否や両手に光子銃を具現化すると、俺に向かってぶっ放した。
流石にこれを喰らってみる気は起きない。
俺は次々と襲い来る光の弾丸をかわし続ける。
しかしセルリアンは攻撃の手を緩めない。
「気をつけろッ! 天使の光子銃は
スカーレットの忠告が俺の耳に届く。
俺も嫌な予感がしたからかわしてるけどさぁ……。
そう言うことは早めに言ってくれよ。
俺は軽快に迫り来る
ふむ。力押しでいけるもんか?
【誓い護らせ、
スカーレットが魔術の詠唱を開始する。
それに気づいたセルリアンは銃口を俺だけでなくスカーレットにも向けて、
とにかく直接本体に攻撃だッ!
飛んでくる
そう決めると俺は慎重に間合い詰める。
ジグザグに飛んでみたり緩急をつけてみたりしながら弾幕をかわし、時にはぶった斬り、セルリアンの方へと接近を図った。
よしッここで横の変化から縦の変化だ。
セルリアンは俺の動きに対応できていない。
放たれた
そして俺は刀が届く範囲にセルリアンを捉える。
セルリアンの表情は見えない。
下位天使、
本当にメカメカしいな。
俺は袈裟斬りに黒刀を振り下ろした。
【
それと同時にセルリアンの声が響く。
詠唱してたのかよッ!
それとも無詠唱かッ?
目の前に広がる霧状の何か。
俺は刀を空ぶって崩れた体勢を立て直してその霧から脱出を図る。
「つッ! ぐぅ……少し触れた程度でダメージ受けんのか……」
しかもそれが視界を覆い隠し、セルリアンの姿も見えなくなってしまった。
さてと。どうするか……。
その時、俺の背後でスカーレットの詠唱が終わった。
【
凄まじいまでの地響きが
黒い十字架が光の霧が広がる辺りに出現し、大地に突き刺さったかと思うと、十字の4つの頂点から漆黒の鎖が飛び出した。それが光の霧の中に入り込む。
その途端に霧の中にいたセルリアンが飛び出した。
そして後に続く漆黒の鎖。
追尾されて逃げ出したか!
セルリアンは光子銃を消して光の刃を出現させると、迫り来る鎖を薙ぎ払おうと刃を振り回す。しかし鎖は強度はそれ以上のようだ。鎖と光の剣が衝突し、耳障りな音を反響させる。
どうしても斬れないらしい。
逃げるセルリアンにしつこく絡みつこうと、鎖は何度も何度も襲い掛かる。
とうとうその内の1本がセルリアンの足に絡みついた。
上空で足を絡み取られてしまったセルリアンに更なる鎖が迫り、次々と手足を縛られていく。無事に対象を捕えたその鎖は大地に立つ十字架に向かってリールのように巻き戻されていく。
セルリアンは十字架に
さながら古代の聖人と言ったところか。
十字架に囚われて苦痛に
「阿久聖ッ! トドメだッ!」
「おうッ!」
スカーレットの
目標はすぐそこだ。
「滅びろセルリアンッ!」
――刹那
セピア色の世界が明滅した。
凄まじいまでの爆音が轟く。
俺は構わずセルリアンにトドメを刺すべく黒刀を突き刺した。
が。
防御フィールドに阻まれ黒刀が止まる。
刀身とフィールドが干渉し合い、バチバチと嫌な音を立てた。
力は拮抗しているようだ。
セルリアンの防御フィールドか!?
いや……違う!?
ピシリ。
力を込めた黒刀にヒビが入る。
俺の持つ黒刀はアッと言うまに砕け散った。
俺は後方に下がりつつ、轟音のした背後に目をやった。
そこにはズタボロになって落ちていくスカーレットの姿があった。
何が起こった!?
俺が状況を把握できず混乱していると、
「
天を
十字架に囚われていたセルリアンが弾かれたように笑い出す。
「はははははは! これで終りだッ!
上空に現れた存在が放つ光量が大き過ぎてその顔が見えない。
それよりスカーレットだ。
俺は急降下してきりもみ状態で落ちていく彼女を何とか抱き留める。
「ぐぅ……スマン……」
良かった。
ダメージはあるが無事なようだ。
俺は大地に降りるとスカーレットを地面に横たえた。
しかし彼女は何とか体を起こして立ち上がろうと、
「大人しくしてた方がいい」
「そんな場合かッ! お前はッ! アレをッ! 感じないのかッ!」
スカーレットの凄まじいまでの形相に俺は天を見上げた。
白銀に
言うまでもなく天使だ。
正体を掴もうと天を睨む俺を焦らすかのように時間をかけて大地に降り立ったその天使の顔に俺は見覚えがあった。
お前は――
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