またいつか

@kifune0604

またいつか

初めて君を見た時、私の鼓動はいつもとは違った動きになった。

私が中学2年生になった、最初の部活動で一目惚れをした。

彼女の名前は、ゆづき。

それが中学生になって初めての恋だった。


君の姿を横目で見ていたら、いつの間にか春が終わり、夏休みに入っていた。

太陽が照り、青い空に雲が泳ぐ。

一人の後輩が、突然こちらに寄ってくる。

「ゆづき、先輩のこと気になってるらしいですよ。」と。

私はいつもの様に、クールな先輩を装って、「へぇ。」と言った。

心は踊る。家に帰って踊った。したこともないステップもできた。


話したい。話したい。話したい。

夏休みよ早く終われ。


そして夏休みが終わった。

そのまま時間は過ぎてゆき、冬が終わっていた。

自身で言うが、私はモテ男だった。

自分からアプローチをするには、プライドが邪魔だった。


そして春が来た。

そう。春が来たのだ。色んな意味でね。

ゆづきの友人から、連絡先を交換したいと言ってきたのだ。

もちろん。いいとも。ずっと待っていたよ。


「こんばんは」


「こんばんは」


「私のことわかりますか?」


「女バレの子だよね?」


「そうです」


「よろしくね」


「あの、」


「ん?」


「また今度遊べませんか?」


「いいよ」


「来週の木曜日とかどうですか」


「部活終わった後でいいの?」


「その日、女バレも男バレも早く終わる日ですよ」


「そうだっけ?」


「はい」


「じゃあ木曜で大丈夫だよ」


「ありがとうございます」



一言一言が、愛おしかった。

きっと、頬は緩みっぱなしだったと思う。



「また明日ね。おやすみ」


「おやすみなさい」



それから、三日間、夜は眠れなかった。

その三日の間で、ある人に告られた。

私の家に、友人が泊まりにきていた。そのテンションで、付き合った。





当日の天気は、少し怪しかった。

曇りのち雨。


学校が終わり、校門で目があったが、恥ずかしくて目を逸らした。


待ち合わせは決まっていた。

「16:30分 学校のプールの入り口」

短すぎるにも程があるショートパンツに、ブカブカのTシャツ。

今でも同じTシャツを買いたいなと思ってしまう。


「よっ」


(ペコリ)


「何して遊ぶ?」


「決めてないんですよね」


「どっかいきたいところある?」


「ないです」


「えぇ。近くにドンキホーテとか、TUTAYAとか、古本屋とかあるよ?」


「んん。」


「じゃあ、古本屋いこっか。CDとか服とかも見れるし」


「はい」


自転車で10分程の古本屋に行った。

いつもなら何の気なしに乗れる自転車が、全く別の乗り物を乗っているみたいに、うまく乗ることもままならない。


「何見る?服とか見にいく?」


「座って、話したいです。」


そうか。

来る場所間違えたなと思った。


「座れるとこあるよ」


「はい」


椅子に座り、初めてお互いが、お互いを見た。


「好きです。」


「・・・ありがとう。」


「はい。」


近くのクレーンゲーム達で、声は薄れた。


「付き合えませんか?」


「うん。ごめん」


彼女は、笑った。

そしてそのまま、下を向いた。


「好きな人っているんですか。」


「うん」


「そうですか。」


「三日前に、告られた。」


「そうですか。」


「ごめんね」


「◯◯さんですか?」


彼女は、笑ってそう聞いた。


「違うよ」


私も笑って答える。


「じゃあ、〇〇さん?」


「うん」


「そうですか。可愛いですもんね。」


「んー、、」


ごめんね。俺もずっと君が好きだった。

あの時は、本当に彼女のことが好きだった。

だから、乗り換えるなんてできなかった。


「幸せになってくださいね。」


「ありがとう」


「そろそろいきますか」


「そうだね」




外は、雨が降っていた。

私の家が近くだったので、雨が止むまで、家に入ることにした。


「〇〇さんの、どこが好きですか?」


「んー。優しいとこかな」


「そうですか」


「うん」




「もっと早く、好きって言えてたら。付き合えてましたか。」


「どうだろう。わからないけど、多分そうなってたかも。」


「・・・」


やっと君と話せたのに。

初めてちゃんと話せたのに。


「泣かないでよ。」


「付き合いたかったです」


「ごめんね。」



雨は止まなかった。


私が貸した服を着て、彼女は帰って行った。




そして、卒業式が近づいていた。


ある日、友人と公園で遊んでいたら、メッセージが大量にきた。

ゆづきから、大量に鳥のスタンプが送られてきた。


「なんだ?」


「鳥です。ちゅんちゅん」


またある日、写真が送られてきた。


「アンパンマン見てます。」


またある日、

「納豆食べてます。」



それからの記憶はもうない。

いつ、どのように連絡しなくなったのか。

いつからメッセージが来なくなったのか。

思い出せない。



あなたは今、何をしていますか。

もう今年で、20歳ですね。


私は時々、あなたのことを思い出してしまいます。

あの時から、離れることができません。

あの時の、あなたを、忘れることができません。


いつかまた、どこかで会えますか。

どうやって、会いたいと、あなたに伝えれますか。


その方法を、ずっと探している。

歌を作ってみたりもした。

そうすれば、いつか街中で流れるようになって、あなたの耳に届くと思って。

もしテレビなんかに出れたら、私の存在を思い出してくれると思って。


きっと届かないと思う。

それでも、こんな言葉を並べてしまう。

もしかしたら。なんて。



いつか、届くことを信じます。

「幸せになってね」


届け


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