――こんなことなら僕もついていけばよかったかな。


 はじめてのおつかいをさせる親の気分だ。岡本は胃を押さえながら電話を切った。

 それにしても、と岡本は長い指をあごにあてた。


 ――小泉くん。百瀬くんに合鍵を渡していなかったんだ。


 そんなことを考えながらきびすを返そうとして。ふと窓に映った笑みを浮かべる自分自身の顔に、岡本は慌てて口元を手で覆った。

 なぜ、笑っているのだろう――。


「合鍵を……渡していなかったから?」


 自分の問いに、自分で答えて。


 岡本は再び、慌てて口元を手で隠した。

 窓に映る自分の顔が、またもや笑みを形作ろうとしていたからだ。


 と、――。


「……相談、乗りましょうか?」


「~~~っ!」


 いつからそこにいたのやら。

 柱の影から、ちらりと顔をのぞかせている恋脳こいのー先輩に、岡本は思いっきり飛び退いた。


 心臓がバクバク言っていてるのは、急に声をかけられたからか。

 それとも――。

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