**02-03 週明け、秒で砕けました。**

 二十階建てだか、三十階建てだかのQBシステムズの持ちビル。その六階北側のフロアに席のある千秋は、


「ヒナのせいで……遅刻ギリギリ!」


 ぎゅうぎゅう詰めのエレベーターから転がり出ると同時に、盛大なため息をついた。


「間に合ったからセーフでしょ!」


 遅刻ギリギリの出社になった原因。五度寝をかました陽太は、今はすっきりいい笑顔を浮かべている。

 朝の通勤を終えた時点でぐったり、ボロボロになっている千秋とは真逆だ。


「セーフじゃない! 始業時間より十五分は前に席について、パソコンの電源をつけとかないと、始業のチャイムと同時に作業が始められないだろう!」


「え、始業のチャイムと同時にパソコンの電源入れるもんじゃないの?」


「……電車の遅延や不慮の事故が起こる可能性だってあるんだから。そういうときのために、常に少し早めに行動しないと!」


「遅刻しますって電話すれば、良くない? 真面目だなぁ、千秋は~」


 へらへらと笑う陽太をじっと見つめて、千秋は額を押さえた。

 確かに、真面目過ぎると会社の先輩たちにも言われた。でも、陽太にへらへらと笑いながら言われるのはしゃくだ。

 結局、金曜の夜から月曜の朝までヒトの部屋に泊まり込み。今朝も今朝で五度寝をかました陽太に言われるのだけは、気にくわない――!


 じろりと陽太をにらみつけてから、千秋はフロアのドアを開けた。

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