「おはようございます」


「おはよう、小泉くん。百瀬もおはよ」


 今、来たところなのだろう。

 パチンコ先輩がYシャツの袖をまくり上げながら言った。


「パチンコ先輩、今日は新台出る日じゃなかったんですね!」


「ヒナ……百瀬くん、まずは挨拶……」


「ポテオリ先輩、今朝は何味ですかー!」


 千秋の注意なんてスパッと聞き流して。陽太はパチンコ先輩に続き、ポテオリ先輩にも挨拶そっちのけで話しかけ。ひらひらと手を振った。


 ――て、いうか。本人に向かってパチンコ先輩とか、ポテオリ先輩とか言っちゃうんだ。


 邪気も悪気もない笑顔を浮かべる陽太に、千秋は白い目を向けた。

 と、――。


「小泉、朝から疲れた顔してるな」


 ポテオリ先輩が心配そうな顔で千秋を見つめた。

 ちなみにポテオリ先輩の机に置かれている、たぶん本日一袋目のポテチはにんにくしょうゆ味。もちろんパーティサイズだ。


「朝ご飯は、ちゃんと食べたか? ポテチとオリーブオイル、分けてやろうか?」


 ポテオリ先輩が慈愛に満ちた目で差し出してくれたポテチは、七味マヨネーズ味。通常サイズとはいえ、朝からポテチは……と、思っていると――。


「朝からポテチなんて。千秋の胃じゃあ、耐えられないですよ! 走ってきたばっかりだし!」


「そ、そうか。すまん……」


 なぜか陽太がドヤ顔で言った。申しわけなさそうにしているポテオリ先輩を見下ろして、そうだ、そうだと言わんばかりにうなずいている。

 気にしないでください、と苦笑いでポテオリ先輩に首を横に振ってから。千秋はじろりと陽太を睨みつけた。


 朝から疲れた顔をしているのも。走ってきたばかりなのも。もとを正せば陽太が原因だというのに。当の陽太はきょとんとした笑顔のまま。千秋を見返して首をかしげている。

 なんだかあほらしくなってきて、千秋は盛大にため息をついた。


 と、――。

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