【証言3】


 次に口を開いたのは、年齢不詳の男性メンバー。


 白のYシャツに黒のスーツ。上着は羽織ってないし、ネクタイもつけてなかったりと、パチンコ先輩と似たような出で立ちだが……圧倒的に違う。圧倒的肉感が違う。

 二の腕の肉があれ過ぎて腕まくりしきれていない。お腹が乗っかって垂れて、ベルトが行方不明になっている。


「高校の入学式で新入生代表に選ばれたけど、緊張しすぎてお腹下して。結局、小泉くんが用意してたあいさつを、百瀬のやつが読んだ……とか」


「拍手喝采、クラウチングスタートだった!」


 スタンディングオベーションだ。


「まぁ、いろいろと大変だったな。今は腹、大丈夫か。ポテチの油には耐えられるか」


 全力で言い間違える陽太を冷ややかに見つめながら、仮称・ポテチ先輩は圧倒的肉感の原因だろうポテチの袋をすっと差し出した。

 一枚じゃなく、一袋くれるらしい。


 仮称・ポテチ先輩の席には、開封済みのパーティサイズポテチが威風堂々、置いてある。

 念のために言っておくが、就業時間中である。


「あ、ありがとうございま……」


「あと、追い油。オリーブオイルは身体にいいから、これでカロリーゼロだ」


 追うな。

 仮称・ポテチ先輩改め、仮称・ポテオリ先輩が差し出したオリーブオイルを、千秋はそっと押し戻した。

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