第18話 それで済むなら
───彩葉side
涙で目がぼんやりとしてきた。
涙を袖で拭く。
きっと今、私の目はとても赤くなっているだろう。
拭っても拭っても涙が出てくる。
「合歓垣さん、ごめんなさい、」
私は細々とした声で言った。
「だ、大丈夫、?」
答えられない
なんて言えばいいのか
わからない。
どうしよう、どうしようどうしよう
何も出来ない
「……っ、」
出来損ない。
私は崩れ落ちた。
砂の地面にべたっと崩れ落ちて
泣いた。
「大丈夫!?」
合歓垣さんが駆け付けてくる。
「ごめんっ、なさい…っ、」
その時、誰かが全力で走ってくるような足音が聞こえた。
「彩葉!彩葉っ!!」
その足音は段々と此方へ向かってきていた。
「湊…?」
湊だった。
今日は平日だったはず、
しかもこんな朝っぱら。
学校は…?
もしかして、
私を…、
探してたの?
「…っ!!」
私を見つけるなり、
爆速で走ってきて、
「馬鹿野郎!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
と、今までにないくらいの声で叫んだ。
「う、っ…」
朝の静かな街に響く怒鳴り声。
「俺が…、俺らが、どれだけ心配したと思ってんだよ…っ、」
私の肩をガシッ、と掴むなり
泣きそうな声でそう呟く。
「…っ、帰るぞ!」
「ま、まって、今足に力入んないの、」
「…、」
足に力が入らない事を明らかに怒っている湊。
必死に説明していたら
急に足を抱えられて持ち上げられた。
「ちょ、降ろし…」
「うるせえ、歩けねえんだろ。
俺が抱えてくしかねえだろ。」
「う…」
そう言って、湊は合歓垣さんの方に振り向いて、
「…あ、うちの馬鹿が迷惑かけてすみませーした」
「え、あ、い、いえ……」
そうしてにこっと不気味な笑顔を向け、
「じゃ、俺らはこれで失礼しますね」
と言った。
最後まで合歓垣さんを困らせてしまった……、
私も挨拶しなきゃ、
「すみませんでした、」
抱えられたままぺこっと頭だけ下げた。
すると合歓垣さんは私に近づいてきて、
「…ちゃんと言ったほうがいいよ。
私なんかよりも。
もっと伝えないといけない人、沢山いるんでしょ?」
「……そうです、ね、ありがとうございます。合歓垣さん。」
もう一度頭を下げて、「また、」と私は言った。
「またね。」
合歓垣さんはそう言って公園から出ていった。
「走るぞ。」
湊はものすごい速さで私を抱えたまま家の方へ走った。
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