第16話 なりたかったを抱き締めて

「え…、

 なんで、そこまで仲良くないわたしなんかに…」


「自分の判断です。」


 はは、と笑う。


「も、もっと別の人に言ったほうが良いと思うんだけど…

 純恋とか、純恋の弟とか…」


「いいんです。私が合歓垣さんに話したかっただけだから。」


 下に俯いてそういう。


「ええ…」


 私は俯いていた顔をあげて、戸惑う合歓垣さんを他所よそに登り始めた朝日を眺める。


 ――綺麗だな。


 みんなを明るく照らして

 朝を知らせる

 あの朝日のように


 私はなりたかったんだな。


 そう思って朝日に手を伸ばしてみる。


「…っ、ああ…」


 私は朝日のような人が…


「羨ましいんだ、な」


 一度止まったと思った涙は再び流れ出し

 地面にポタポタと落ちていく。


 次第に涙は大粒になって零れ落ちて。


 合歓垣さんは更に戸惑わせてしまう。


「私は本当に駄目なやつだなあ…」


 ぐずぐずとまた鼻を啜る。


 葵葉のこと

 絃葉のこと

 お母さんのこと

 お父さんのこと

 湊のこと

 純恋さんのこと

 祥のこと

 鳳さんのこと

 綺月さんのこと

 天童さんのこと

 アカネさんのこと

 合歓垣さんのこと


 ――私自身のこと。


 すべて、全て全て


 改めて考え直さなきゃ。


 自分の考えを捻じ曲げて

 人間関係を変えなくちゃ。


「ああ…」


 哀れな自分…

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