第2章
第13話 戻ったもの
あれ…?寒く、ない?
確か私は意識を失うまで公園に居た、はずだよ?
だけど何故か暖かさというか。ぬくもりを感じる。
私の体の上にふわふわとしている肌触りの何かが掛けられている。
そして、誰かの膝の上に私の頭が乗っているような感覚、
これを実感した瞬間申し訳なくて起き上がろうとしたけど
まだ眠いせいか、全身が重くて目が開かない。
でも、なにかうっすら聞こえる。
「どうする?返す?」
「返しても…、この子たちだって、僕達だって苦しくなるんだ。」
「そう…」
「ああ、元会長から電話だ、行ってくる。」
「…くれぐれも本当は吐かないように、ね?」
「嗚呼」
何?誰?
私…誰かに連れ去られでもしたの?
その声の主を見ようとなんとか重たい瞼を開ける。
一気に光が入ってきて眩しい。
でも
「あれ…?見える、なんで…」
いつも見えないはずのぼやけた視界は
本当に鮮明というわけではないけれど
いつもより遥かに見える
おかしい
絶対、何かがおかしい。
「あれ、起きた?」
…?
なに、この空間…
すごい、ふわふわしてて…
夢?走馬灯?
あ、もしかして死んじゃったパターン?
「急にびっくりしたわよね、ごめんなさい」
私は謝る女性の人…に膝枕されていることに改めて気づく。
「えっ?あっ、えっと…すみません、」
とっさに起き上がる。
そして見えた視界の先には一面真っ白な空間。
「こ、
天国かなあ…
「ああ、此処はね…、」
「『
な、何そこ聞いたこと無いんですけど…?
「ふふっ、聞いたことないと思ったでしょ?」
「図星です…」
何もわからなさそうな顔をしている私に詳しく説明してくれる。
「この世界は精神的に辛い人や人間関係で困っている人たちを保護する場所なの。
この場所は現実世界には存在しないけれど、ある電話番号に電話を掛ければいつでも此処へ来られるわ。
目的がなくてもいい。
現実で辛くなったとき此処へ来ればいい。
そういった世界よ。」
「すごい…」
なんて素敵な世界なんだろう…
「最近取ったばかりで、スタッフは2人だし、来た人は3人。それだけちっぽけってことよ。」
「なる、ほど…?
…あ、此処に来られる条件って、何かあったりするんですか?」
何故此処に来たのかも少し気になる。
「条件ね…
一般はこちらから電話が掛かってくるの。
けれど今回はあなたの命の危機が迫ってたから、此方から迎えに来たのよ。」
「え、有難う御座います…」
迷惑掛かっただろうなあ…
「取り敢えず此処は何してもいいから、ゆっくりしていってちょうだい。」
「はい。えっと…」
名前…
「自己紹介が遅れたわね、私の名前は、アカネ…、人間ではないから、苗字などないわよ。」
人間じゃ、ない、?
そっか、ここは別世界なんだっけ。
「アカネ、さん。有難う御座います。ええと、私は…」
自分も自己紹介をしようとする。
「ふふっ、知っているわよ。
小鳥遊彩葉ちゃん、でしょう?」
名前を呼ばれた瞬間、ドクン、と心臓が跳ね上がる。
なんで私の名前を知っているのかにも疑問があるけれど、
なにより
「小鳥遊」という苗字で呼ばれたからだ。
聞くだけでもフラフラしてくる…、
「ごめんなさい、この苗字は駄目だったわよね…」
「い、いえ…」
一旦落ち着く。
「あの…取り敢えず泣いてもいいですか?」
「駄目と言う訳が無いじゃない…、それだけ苦しいなら、存分に泣いて大丈夫よ。」
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