第6話 衝撃発言は後に
「おかえりー」
いつもはこの時間寝ている純恋さんが今日は起きていた。
純恋さんは昼間はずっと寝ている。
「はぁ…俺今から練習だから。じゃあな」
湊は祥と
「あ、湊。今日駅前に新作のチーズケーキのお店出来たらしいからついでに買ってきてよ」
「はあ?無理」
わー、また喧嘩かなー…
「じゃあ私行きましょうか?」
「え?悪いよ…」
「いえ…寄りたいところがあるので」
「そう?じゃあこれ」
純恋さんは、私に千円札を二枚渡してくる。
「え…?」
「これで買ってきて。おつりはあげる」
「い、いいんですか…?」
やっ、優しい…!
「純恋のやつ…いつも俺には自腹で買ってこいって言うくせに…」
湊は舌打ちをしながら純恋さんに向かって言う。
「はぁ!?なんか言った!?」
「何もねーよ」
「ふふっ」
この日常が――好きなんだな。
まるで昔とは大違い。
「じゃあ私行ってきます」
「うん。気をつけてねー。あ、私ももう学校の準備しなきゃな…」
純恋さんは夜間定時制だから、いつもこの時間に学校へ行くんだ。
「純恋さんも、気をつけてくださいね」
「はーい」
私は会話を終わらせると、玄関へ行き、外へ出た。
「あ…待って、そのチーズケーキがあるお店
やば、と思いながら歩いていたけれど、駅前の店と言っていたから駅前行けばいっか。
「私ってば記憶力いい〜♪」
そう自分を自分で褒めながら、そういえばと思った。
「寄りたいところって…何処だっけ」
私は家で純恋さんに「いえ…寄りたいところがあるので」と言っていたが、それが何処なのか忘れた。
(やっぱり記憶力悪いじゃん…)
まあ今日はチーズケーキを買ったら家に帰るか。
「私もチーズケーキ食べたいなーあ」
そんなこんな独り言を言っていると、
「あ、彩葉さん」
「ん?鳳さん?」
「おや?君はさっきの…」
うげ、あの巨人もいるのか…
「こ、こんばんはー」
綺月さんに軽く挨拶をして目を逸らす。
「何処か行くんですか?」
鳳さんに問われたので、
「うん、ちょっと駅前のお店に…」
と返す。
そうしたら、少し黙っていた綺月さんが、
「ねえ、やっぱり
え…?
「だから違いますよ…?」
「どう見ても、一ノ瀬くんとは似ていないし…」
「……あ、あはは、絶対人違いですって!」
とっさに作り笑いをする。
今ここに助けてくれそうな人はいない。
鳳さんだって今の状況が何なのかわかっていないと思う。
「そうだろう?」
皆に迷惑かけてばっかりなんだから…
ここで、私が言わなくちゃ。
「しつこい…です」
言って…しまった。
「「え?」」
今まで黙っていた鳳さんまで驚いている。
「もうやめません?私の苗字が小鳥遊だとか。葵葉の妹だとか。」
「いや…僕は葵葉くんがずっと探している妹を見つけたくて…」
「うん…昔からそんなこと言ってたよね、葵葉」
鳳さんまでそんなこというの…?
ていうか…知ってるんだ。顔が広いなあ…
「やめてほしいです。もう。」
本当に…
「私の気なんて知らずに何なんですか?いつも向こうばっかり気にして、こっちの気は考えてくれないんですか?」
「な、なにこれ、何の状態…」
あ…言いすぎちゃったかもなあ。
鳳さんぎょっとしちゃってるもん。
「あはは。鳳さんには関係ないですよ。」
そうだ、私チーズケーキ買わないとだったな
「じゃあ私これから用事あるんで」
「ちょっとまっておくれよ…!」
待ってという綺月さんのことを見向きもせず私は駅前へ歩いた。
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