第2話 得たもの

 結局…来てしまった。


 目が悪いおかげで湊のお姉さん、純恋さんに学校に持っていくものを探すのに色々手伝ってもらっちゃったけど。


「…」


 なるべく周りの人には私だとバレないように、下を向いて登校する。

 だけど、あの元家の兄妹達は地毛が金髪で、私は染めてはないから、少々目立ってしまう。


 純恋さんに手伝ってもらったけど、もう一限目が始まっているようだ。


「遅刻…かな」


 一応湊に「先に行っておいて」って言ってて良かった。

 そんなこんな考えていると、私の教室のドアの前についていた。


「行くか。」


 すっと息を吸って、吐いて…。


「ふぅ…」


 ガラガラとドアを開ける。


「彩葉!?」


 数学の時間だったようで、数学担当兼担任が此方を向いて驚いている。

 此方を見る生徒もいれば、見向きもしないで黒板に書かれた問題を解く真面目もいる。


 先生は私の過去や目が悪いことを知っていて、あえて「小鳥遊たかなし」という私の苗字で呼ばず下の名前で呼んでくれている。


「えっと…席はあそこだ。」


 先生は空席を指指す。

 席替えをしたのだろう、前来たときとはガラリと席が変わっている。


 私はゆっくりとその空席に向かった。


 席に座ったら、数学のノートと教科書をカバンから出した。


(数学だるいけど…頑張るか。)


 長らく学校に来ていなくて、頭の中は真っ白。


 すると隣の席の女の子が話しかけてきた。


「ぇと…鳳紬おおとりつむぎ…です。彩葉…さん?ずっと学校来てなかったんですよね。わからないことあったら何でも聞いて下さい。」


 にこ、と微笑む鳳さんはとても可愛かった。


「ありがとうございます。早速なんですけど、ここの部分聞いてもいいですか?」


 私はノートを鳳さんに見せて、わからない部分を指した。


「ああ、はい。…えっと、ここはこうして…」


 人見知りなのかな。喋るのが苦手みたいで、説明は丁寧だったけど、何処かぎこちない喋り方だった。


「有難う。あ、そうだ。鳳さん、よかったら次の移動教室、一緒に行かない?」


「あ、はい。いいですよ」


 おっと、初っ端からお友達ゲット!


 ふふ、良い高校生活にな…

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