やけど
私は妻と幼い息子の3人暮らし。
ある休みの日に、そろってラーメンを食べることにした。
「ちゃんと、フーフーして食べるのよ」
妻の注意を聞かず、熱々のラーメンを食べようとした息子は案の定、
「あつい!」
と舌を指さして伝えてきた。幸いなことに、軽いやけどで済んだ。
「いたくて、ピリピリしてる。きもちわるい」
体全体で苦痛を表現する息子は『やけど』という現象を学んだのか、以後少し待ってからラーメンを食べるようになった。
後日、3人で焼肉を食べに行った。
肉が鉄板の上でジュージュー焼かれるのを見て、おいしそうだとはしゃぐ息子。
そして、焼き終わると皆で食べようとした際、
「ねえ、これはどんなおにく?」
と聞いてきた。
「これは牛タンっていうんだよ」
「ぎゅうたん?」
「牛はうしさん、タンは舌。だから、牛の下を焼いて食べるんだよ」
「……ぼく、たべない」
急に暗い顔をして、食事を嫌がる息子に理由を尋ねると、
「だって、いたそうなんだもん。ぼくもしたをいたくしたから」
我が子の優しさに感心しながら、こう説明した。
「牛さんはもう死んでいるんだよ。だから、痛みは感じないんだよ。だから安心しなさい」
「そうなの?じゃあ、たべる。でも、いたくないようにやさしくたべる!」
そう言うと、息子は牛タンをゆっくりと嚙みながら食べていった。
後で聞いてみたら、息子流の牛タンが痛まない食べ方だったと分かった。
自分が痛みを経験しているからこそ、優しくすることを学ぶことができたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます