痛みについてあれこれと
荒川馳夫
壁はない方が良い
ある小学校の2年生教室で国語の授業が行われていた。
子どもたちは新しい漢字について学習していた。
今日は「国」という漢字について学び、先生が説明した。
「国という漢字は四角と玉で成り立っている。四角の部分は『くにがまえ』と言って、都市を囲むお城の壁が由来なんだ。そして、玉は元々『王』と書いていたらしいんだ。つまり、国は『王様の支配する場所』を表しているんだよ。ほかにも『くにがまえ』を使う漢字はたくさんあるから、少しづつ勉強していきましょうね」
それを聞いていたある女子児童が、先生にこんな質問をした。
「先生、『くにがまえ』に心が入る漢字はありますか?」
「えーと……、そんな漢字はありませんよ」
「そうなんですか」
ほっとしたような様子を女子児童は見せた。
先生は気になったので、質問の意図を尋ねた。こんな答えが返ってきた。
「心が壁で囲まれていたらお友達と仲良くできないけれど、心が壁で囲まれていなかったらお友達の言葉で傷ついたりしちゃうなあって思ったからです。でも、わたしはそんな漢字がなくて良かったです。お友達と仲良くしたいから」
まだ幼さの残る2年生の言葉に、大人である先生は感心した。
自分の頭で思考していると感じられたからだ。
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