第30話 会心の一撃

N……

優志

ゴマ……

ソアラ……

ソール……

ムーン……

マーズ……

マーキュリー……

ヴィーナス……

ニャンバライオン……


——


ソール「【太陽神の力を受けし聖騎士、ソール】!」


ムーン「【輝ける望月もちづきの大魔導、ムーン】!」


マーズ「【たぎる熱情のソードマスター、マーズ】!」


マーキュリー「【命凍れる極寒ごっかんの上忍、マーキュリー】!」


ヴィーナス「【美しき女神の祝福を受けしヒーラー、ヴィーナス】!」


ゴマ「【神の祝福を受けし暁闇ぎょうあんの勇者、ゴマ】!」


ソアラ「【不撓不屈ふとうふくつの熱血武闘家、ソアラ!】」



N「光に包まれ転身する猫たちの周りには、それぞれの役職にかなった装備——剣や盾、鎧、杖、忍び装束、ローブ、道着などが現れ、装着されていった。

 まさしく、猫の戦隊ヒーロー——。

 優志まさしは目を丸くしながら、その様子を見ていた」



ソール「みんな行くぞ!」



N「ソールの号令と共に、星猫戦隊コスモレンジャーは、3体のモンスターに突撃する」



ニャンバライオン「グワォォォン……!」



N「ニャンバライオンは口を大きく開け、激しく燃える炎を吐き出してきた」



マーズ「マーキュリー、行け!」


マーキュリー「う……うんっ! す……水遁の術!」



N「マーズの指令に応えたマーキュリーが、印を結ぶ。すると空中から大量の水が出現。水は、吐き出された炎を掻き消すと、そのままニャンバライオンを飲み込み、押し流した。


 ニャンバラットが牙を剥き出し、ムーンに飛びかかる。

 そこにゴマが立ち塞がり、紫色の光を浴びた剣でニャンバラットの噛みつき攻撃を防御。

 ゴマは、一瞬目を瞑る」



ゴマ「コイツの属性は……“かね”だ。金には火が効く。マーズさん、頼んだぜ!」



N「何らかの能力で、敵のステータスを分析したのだろうか」



マーズ「よしきた。喰らえ! 炎燕流フレイムトルネード!」



N「マーズの剣が炎に包まれ、振りかざされた剣から紅蓮の竜巻が放たれる。避ける暇もなく、ニャンバラットは火だるまとなった」



ヴィーナス「ふん。回復してあげるから、さっさと倒してしまいなさいよね」


ソール「ありがとう、ヴィーナス!」



N「オレンジ色のローブを身につけたヴィーナスの杖から、エメラルドグリーンの光が放たれた。猫戦士たちの傷が、癒されていく。


 優志も負けるまいと、飛びかかってきたニャンバルーの腹部めがけてレイピアを突き立てた。

 ニャンバルーは血液を垂らしながら転倒する」



ゴマ「優志ィ! そいつの弱点は“土”属性だ。“土”属性の技、使えるなら使え!」


優志「ありがとうございます、ゴマくん! 土っぽい技……この魔法です! “プチクエイク”!」



N「地響きと共に、ニャンバルーの足元に大きな穴が空く。穴に落ちたニャンバルーはもがき苦しみ、身動きが取れなくなった」



ソアラ「オレが決める! どいてくれぇ!」



N「ソアラの大きな声。優志はソアラに道を開けた。

 全身に力を込めたソアラの右前脚が、水色の光に包まれていく。そして——」



ソアラ「喰らえッ! 【100万馬力・猫パーンチ】ッ!!」



N「ソアラの強烈な猫パンチが、ニャンバルーの顔面にヒット。血飛沫を散らしながらニャンバルーは吹き飛び、倒れ伏した。


 襲ってきたモンスターはひとまず、全て倒せたようである。優志はふうと息を吐いた」



ゴマ「ソアラ、凄えなお前」



N「驚いたような口調でそう言ったゴマが、ソアラに歩み寄った」



ソアラ「あたぼうよ! オレは最強の格闘家になるんだからな! オレの“100万馬力・猫パンチ”を防げた奴は、誰もいねえんだ!」


ゴマ「バカヤロ、最強はこのボクだ。前の戦いでのボクの活躍、知らねえってのか?」


ソアラ「もちろん知ってるぜゴマ相棒! 前の戦いではとして無双しまくってたらしいじゃねぇーか! だが、オレは絶対、お前より強くなってやるんだ!」


ゴマ「フン、言ってろ。誰が相棒だ。10年早いぜ」



N「じゃれ合うゴマとソアラを見て、優志はほっこり癒されていたのであった」


 ♢


N「星猫戦隊コスモレンジャーは、闇に溶ける洞窟の奥へと足を進めていた。


 ふと、何かが優志まさしの横を高速で走り抜ける」



優志「ん? 何でしょう、今のは」



N「走り抜けた何者かの方を見てみたが、既に姿は無かった」



優志(気のせい、でしょうか……)



N「足を進めようとした、その時」



優志「うわ! またです!」



N「先程走り抜けた何者かがまた戻ってきて、優志の横を走り抜け、今度は優志たちの進行方向へと去って行く」


 

ソール「あれは……【メタルゴーレム・ソルジャー】だ」



N「ソールが洞窟の奥を見据えながら、その正体をみんなに伝えた」



優志「メタルゴーレム・ソルジャー……ですか」


ソール「ああ。メタルゴーレム・ソルジャーを倒した者は、不思議な魔力により、莫大な戦闘経験を積んだのと同じ効果を与えられ、いっぺんに強くなることができる。そのため乱獲されて、今はほとんど見かけなくなってしまった」


ソアラ「でもよぉ、悪さをするモンスターには違いねえんだろ!? だったら次見つけたら潰しちまおうぜ!」



N「ソアラが前脚同士をパンと当てて鳴らしながら、ソールに尋ねたれ



ソール「だが、簡単には倒せないんだ。すぐに逃げてしまう上、攻撃を当てても通じないことが多い。ヘタをすると、返り討ちに遭う」

 


N「話しているうちに、再び“メタルゴーレム・ソルジャー”が、真っ暗な洞窟の奥から走ってきた。

 目や口などが無く、全身が鋼でコーティングされた人型のモンスターである。体の大きさは、今の優志と同程度。懐中電灯の光を全身にギラリと反射させながら、こちらに向かってくる」



ソアラ「チャンスだ! おらぁっ!」


ゴマ「ボクが潰すぜ。“ギガ・ダークブラスト”!」



N「ソアラとゴマが、メタルゴーレム・ソルジャーの行手を阻むように立ち塞がると、目にも留まらぬ動きでメタルゴーレム・ソルジャーを攻撃した。

 しかし、メタルゴーレム・ソルジャーには傷一つつかない」



ゴマ「ボクの攻撃でもダメなのかよ! ぐぬうう……」



N「ゴマは悔しげに、唸り声を上げる。

 だがメタルゴーレム・ソルジャーは、今の攻撃で瞬間的に動きを止めた。

 チャンスだ——!

 そう判断した優志は、素早く“ミニゴールデンソード”を抜き、メタルゴーレム・ソルジャーに思い切って一撃を加えた」



優志(多分効かないでしょうね……。ですがダメ元でも、やってみなきゃわかりません。私の人生の教訓です!)



N「すると何と。

 メタルゴーレム・ソルジャーは真っ二つに割れ、粉々に砕け散ってしまった」



ゴマ「な、優志!? マジかよ!」


ソアラ「うお! やるじゃねーか! 優志!」



N「ゴマとソアラの、驚きの声が重なる。

 会心の、一撃——。

 偶々たまたまだが、優志の攻撃がメタルゴーレム・ソルジャーの弱点にクリティカルヒットしたようである」

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