第28話〜タヌキ野郎〜
N……
優志……
稲村……
ラデク……
マイルス……
ポンタ……
————
N「【僧侶リュカ】となった稲村誠司と、夢の世界で出会った
何で、この男がここにいるんだろう。
体を起こし、軽く深呼吸をして落ち着きを取り戻した
優志「いなちゃ……いや、リュカ。前に電話した時に話してた異世界の夢というのは……やはり私と同じ夢だったんですね」
稲村「ああ。何度も夢を見るうち、実はここモヤマで何度かお前を見かけていたんだ。やっと合流できたな、“勇者ミオン様”」
N「しつこいぐらいに“勇者ミオン”呼びを繰り返される。弾むような口調で。
優志「……もしや一緒に私と、魔王討伐の旅についてきてくれるのですか?」
稲村「ああもちろんだ。回復役、必要だろう?」
優志「ありがとう、いな……リュカ。なら、一緒にかつての勇者、マイルスさんのところへ行きませんか? 魔王について詳しく聞きましょう」
N「
ゴマとムーン——
♢
マイルス「魔王ゴディーヴァをはじめとする魔族たちは……世界を滅ぼそうとする神の意思の
N「マイルスの家に招き入れられた
マイルス「魔族たちは、夢の世界と現実世界を統合し、病気や戦争を引き起こすことで人間を滅ぼそうとしている。それでも生き残った人類は恐怖心で支配、奴隷化。世界を、復活した魔族の天下にしようとしておる」
優志「だから、現実世界でも新型ウイルスが……? マイルスさん! “邪竜パン=デ=ミール”はご存知ですか?」
N「少し前のめりになりながら、
マイルス「邪竜……。現実世界における存在か?」
優志「はい。地底世界に眠る、邪悪なドラゴンです。そのドラゴンが原因で新型のウイルスが発生して、それによる感染症が世界中で流行しているのです」
N「隣で
優志「夢の世界と現実の世界が統合され、境目が無くなりつつある、というお話でしたよね。もしかしたら、“邪竜パン=デ=ミール”も、魔王に操られているのでしょうか……? 世界中で流行っている新型ウイルス感染症も、魔王ゴディーヴァのせいなんでしょうか!?」
マイルス「その可能性は高い」
N「答え、ぐいっとお茶を飲み干すマイルス」
稲村「ちょっと待ってくれよ。ミオン、お前何でそんなこと知ってるんだ? 新型ウイルスの原因がドラゴン? 地底世界? 夢と現実の境目? もう訳わかんねえよ」
優志「いなちゃ……リュカ、詳しくはまた後で話しますから、今はマイルスさんの話を聞きましょう」
N「目を瞑りながら、
マイルス「勇者ミオンよ……。そなたには守護神、【
N「突如知らされた、
守護神、“
マイルス「“夢幻獅子”とは……オトヨーク島より遥か東の大陸——【チャイ大陸】に棲む伝説の生き物だ。その偉大なる力が、今の勇者ミオンのオーラから感じられる」
優志「全く、気付きませんでした。その……守護神さんは一体、どのようなことをしてくれるのでしょうか……?」
マイルス「もしもお主が窮地に陥った時、“夢幻獅子”がお主の元へと駆けつけ、力を貸してくれるであろう」
N「
優志(マイルスさんの言う通り、ピンチにならないと助けてくれないのでしょうか。……そういえば星猫戦隊コスモレンジャーの猫さんたちには、みんな守護神がいるという話でした。もしや、私も星猫戦隊コスモレンジャーに仲間入りしたから、守護神さんがついてくれたのでしょうか……?)
稲村「あの、俺にはその守護神ってのは、ついてくれてないんですか!?」
N「
マイルス「リュカ、お主はこの“夢の世界”に来たばかりだ。お主の力がこの世界の神々に示されれば……縁はあるかも知れぬ」
稲村「そうですか……。なら、気張ってかなきゃな! なあ、勇者ミオン!」
N「
マイルス「それからお主らが戦うべき魔族は……死ぬと、紫色の血が残るはずじゃ。覚えておくが良い」
優志「分かりました。色々とありがとうございます。また伺いますね」
N「マイルスの家を後にした
♢
優志「リュカって呼び慣れないですよ……」
稲村「ほら、こういうのはしっかり成り切らなきゃ。世界を救う勇者ミオン様だろ!? もっと胸張って堂々としろよ、ガハハハ」
N「公園のベンチに座り、商店で買ったポテトスナックを口にしながら話す
優志「そうですね。でも……色々と不安なんですよね……」
N「そうこぼして青い青い空を見上げた時——。また、謎の幻聴が聴こえてきたのだつた」
ポンタ『お前には無理無理。世界は魔王に支配され、破滅するポン』
N「
稲村「ん? どうした、ミオン」
優志「シッ。リュカ、静かにしててください」
N「首を傾げる
優志(それです……!)
N「幻聴の原因を突き止めた、その時——。
頭の中から何か出て来るような感覚がして、思わず目を開ける」
ポンタ「チッ、見つかったか! ポンポコリン!!」
N「何と、
優志「……タヌキさんですか!?」
ポンタ「……逃げるポン」
優志「む……逃がしません……!」
N「呆気に取られている
優志「ど、どうですか! 捕まえましたよ! 観念してください!」
ポンタ「ヘヘッ、オイラは、【ポンタ】。お前を化かして本心を見えなくして、悩むお前を見るのを楽しんでるんだポン。お前に世界を救うのは、無理と言ったら無理だポン……」
N「捕まってもなお余裕そうなそのタヌキ——“ポンタ”の表情が、小学生の頃の
ポンタ「お前はドジだから見てて面白いポン。この後、お前は犬のウ◯コ踏むポン。ポンポコリン!」
N「当時の悔しさと悲しみが思い出され、溢れ出して抑えきれない」
優志「やめてください!」
ポンタ「うがっ!?」
N「バチン、と痛々しい音が響く。
ポンタ「な、殴ったポン、暴力反対ポンー!」
N「ポンタは涙目になりながら、草叢の中へそそくさと逃げて行ってしまった。
稲村「アッハハ、何してんだ1人で! お前、やっぱ天然だなァ!」
N「
優志「いなちゃ……いや、リュカでしたね。リュカって、いつも楽しそうですよね……。どうやったらそんなに楽しそうになれるんですか……」
稲村「どんな時だって、自分から楽しむって気持ちが大事なんだぜ。人生の先輩からのありがたいアドバイスだ、なんつって! それはさておき、お前も防具がだいぶボロボロじゃんか。新しい武器と防具でも調達しにいかないか?」
優志「……そうですね。その後は、魔物を倒しながら街の周りでも探索しますか? また
稲村「そうするか!」
N「
♢
N「モヤマの武器屋、防具屋では、コハータ村とは比べ物にならないほど多くの種類の武器、防具が売られていた。
中には、身につけると特定の属性攻撃を軽減するなど特殊な効果を発揮するものもあり、
優志「これだけ種類があると迷いますね。でも今の手持ちで買える手頃なものは……【ミニゴールデンソード】と、【銀の胸当て】、【鉄兜】……ですか。リュカは何にしましたか?」
稲村「俺は【ロングスピアー】、【ウンディーネの羽衣】、【神官帽】だな。ウンディーネの羽衣は、火属性のダメージを軽くしてくれるんだぜ」
優志「なかなか似合いそうですね。私が買うつもりの“ミニゴールデンソード”は、攻撃自体が“
稲村「そうすっか!」
N「
“鉄の剣”、“レイピア”、“ミニゴールデンソード”を使い分け、盾は以前と同じ“鉄の盾”を使用。
盾は、
稲村「さて、軽くメシ食ったら、サクッと魔物を倒しに行くとすっか! 回復は俺に任せとけ、勇者ミオン!」
優志「リュカ、ほんとに楽しそうですね」
N「モヤマの商店でホットドッグを買い、小腹を満たした
♢
優志「ぐ……! 新しい装備を調達したのに、手強いです……」
稲村「勇者ミオン! 【ヒール】!」
N「モヤマを出たばかりの
優志「ありがとうございます、リュカ……。この2体の魔物、力も守りも、モヤマへの道のりの魔物たちの比じゃないです」
N「
同じく人型で力士のような体型、1つ目の魔物、【サイクロプス】
両者共に、動きは鈍く隙も大きいが、攻撃力と防御力が高く、何度攻撃を加えても倒れる気配が無い」
稲村「逃げるか? ミオン」
優志「そうですね、無理はしない方が良さげです……ん?」
N「その時だった。
優志「な、何が起こったんですか……?」
N「
ラデク「ミオン様、今だ!」
N「少年の声を聞いた
オーガとサイクロプスは緑色の体液を撒き散らしながら、地響きを上げて倒れる。そして
優志「ありがとうございます……、ラデクくん、サラーさん」
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